8. 居住地域から救急医療機関までの距離およびその差分が軽症度合に与える影響の分析
9.2 今後の課題
質問票により得たデータは年間の各自治体における全小児患者数である。年齢層によって は、モラルハザードの起こりやすさも異なるものと思われる。年齢層別に分析できれば、各 年齢層で自己負担金額の水準を変えるなど、効果的な軽症者抑制策を考察できるだろう。
二次救急医療体制は各自治体が地域の救急医療機関に対して補助金を交付あるいは委託 することで維持している。質問票で収集したデータはその事業実績報告として医療機関が 各自治体に提出した報告の中に含まれている件数である。従って、患者数は公開を目的とし ておらず、患者数の集計方法も各病院の裁量となる。実施体制も様々で、都道府県が主で行 っている自治体もあれば、幾つかの市区町村のまとまった広域体制で行っている自治体も あり、質問票の作成やデータセットの作成はかなりの時間を費やした。最終的に分析で使用 したデータは、都道府県より回答のあった医療機関別あるいは医療圏別の患者数をその対 象地域の小児人口で按分したデータだった。今後、データの集計方法等ルールが全国的に画 一化されれば、救急医療分野で統計的研究が発展するだろう。
35 謝辞
本稿の執筆にあたっては、小川博雅助教授(主査)、鶴田大輔教授(副査)、前川燿男教授 (副査)、三井康壽教授(副査)から丁寧なご指導をいただいたほか、福井秀夫教授(まちづ くりプログラムディレクター)をはじめとする教員の皆様から大変貴重なご意見をいただ きました。ここに記して感謝の意を表します。
また、ご多忙な業務の中、救急医療に関する質問票にご回答いただいた関東、近畿地方の 都道府県、市区町村のご担当者様にも、深く感謝申し上げます。
加えて、一年間をともに過ごし、支えてくださった2016年度まちづくりプログラム並び に知財プログラムの同期の皆様には、心より感謝申し上げます。
最後に、貴重な研究の機会を与えてくださった派遣元に感謝申し上げるとともに、研究生 活を全面的に支えてくれた妻と子どもたち、家族に改めて感謝します。
なお、本稿は筆者の個人的な見解を示すものであり、所属機関の見解を示すものではあり ません。また、本稿における内容・見解に関する誤りは、すべて筆者の責任であることを申 し添えます。
参考文献
・井伊雅子、大日康史(2002)『医療サービス需要の経済分析』日本経済新聞社
・岩本千春(2010)『自治体の医療費助成事業にみる助成金による財政の垂直的外部性』公 共選択の研究 第54号
・小林成隆・西川義明(2008)『地方単独事業としての医療助成の終焉と新たな動き』名古 屋文理大学紀要第8号
・多田道之(2005)『乳幼児医療費助成制度の小児救急医療への影響に関する研究』政策研 究大学院大学
・酒井順哉・酒井俊彰・増田阿耶(2010)『小児救急電話相談事業導入による軽傷小児患者 減少効果に関する研究』医機学 Vol.80,No.5
・高久玲音(2015)『乳幼児医療費助成の健康効果-小学生以上への拡充は健康指標に影響 なし-』Monthly IHEP 10月号 No.246
・田中祐介(2013)『乳幼児医療費助成制度の拡大が小児医療に与える影響分析』政策研究 大学院大学
・西川雅史(2010)『乳幼児医療費助成制度の一考察(上)―都道府県における所得制限と 自己負担―』青山経済論集 第62巻第3号
・別所俊一郎(2012)『子どもの医療費助成・通院・健康』季刊・社会保障研究 Vol.47 No.4
・松本悠貴・星子美智子・森松嘉孝・森美穂子・久篠奈苗・石竹達也(2015)『バーンアウ トおよびワーク・エンゲイジメントの観点から分析したコンビニ受診と医師の疲労との関 連性』日本公衛誌第62巻第9号
36
・丸茂裕和(2000)『わが国 救急医療体制発展の歩み』日救急医会誌2000;11;311-22
・ロジャー・ミラー、ダニエル・ベンジャミン、ダグラス・ノース(1995)『経済学で現代社会 を読む』日本経済新聞社
補論
「2.4 救急時の電話相談の意義についての一考察」について捕捉する。
本研究ではコンビニ受診の電話相談による抑制効果について分析したが、分析結果では電 話相談の導入や充実によって軽症者の抑制が確認できたものの、電話相談利用が患者保護 者を適切な行動に促し、最終的に安心できるに至ったかという患者にとっての効果は分析 することができなかった。しかし、スクリーニングが真に機能するためには、看護師や医師 等の相談員の対応だけでなく、相談する患者の視点や行動に基づき分析しなければ効果は 見えてこない。現行の電話相談の連絡経路は③の軽症・育児相談者に対しては大きな効果が あるものの、②の悪化したケースや①の重症者の場合の損失は大きい可能性があり、改善す る余地があることを考察した。そこで、問題を軽減する一案として図21の仕組みを考えて みた。
図21 患者にとって望ましい電話相談の一案
図 21 の③軽症・育児相談者にとっては、従前のとおりであるが、②不確実性で症状が悪 化した場合及び①重症者の場合は、原則、1回の電話連絡、1回の症状説明で案内すべきで ある。その実現のためには、図21のとおりシステム化し、相談状況をコンピュータに入力
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後、診察可能な救急医療機関にその情報と、患者との連絡を繋ぐ機能が必要である。電話相 談の看護師が相談に応じ、少しでも②の悪化ケースや①のケースを察知したときは、このシ ステムにより迅速に看護師が救急医療機関の医師にアクセス後、相談内容を転送すること で、医師は症状を把握し追加の情報を把握すれば良いだけで、迅速な助言、指示が可能とな る。なお、このシステム導入に向けては、費用対効果を分析し、試験運用後定量分析などの 効果の検証が必要であり、これらは今後の課題であると考えられる。
附録:『市区町村へEメール等で依頼した質問票内容』
小児救急医療患者数等質問調査票
※ 本質問調査は貴自治体で実施している小児科の二次救急医療機関における患者数等の調査です。
※ 小児救急という位置づけで行っていない場合は、内科(外科等が含まれる場合は含めて構いません) で年度末年齢15歳以下の救急患者数のご記入をお願いします。
※ 二次救急医療という位置づけが無い場合は、入院を必要とする重症患者に対応する救急医療機関 における小児(年度末15歳以下)の患者数でご記入お願いします。
また、初期(一次)救急医療という位置づけで重症、入院患者まで同医療機関で扱う場合は初期 救急医療機関の小児患者数のご記入をお願いします。
※ 本質問調査は問1から順にお答えください。
※ ”はい、いいえ”などの選択肢は、該当の項目に【はい】と”【】”で囲ってください。
問1 小児二次救急医療事業(入院を必要とする重症患者に対応する救急医療)を複数の自治体で広域 で行っておりますか。
”はい”と回答された場合は広域で行っている自治体名をご記入お願いします。
また、幹事(取りまとめ)をされている自治体様がありましたら”【】”を付けてください。
問2 小児二次救急(入院を必要とする重症患者に対応する救急医療)医療機関別の年度ごとの患者数等 についてご記入お願いします。(※広域で行っている幹事自治体様以外の自治体様で患者数を把握 されていない場合はご記入いただかなくて結構です。)
外来 患者数
入院 患者数
合計 患者数
外来 患者数
入院 患者数
合計 患者数
外来 患者数
入院 患者数
合計 患者数
問3 小児二次救急(入院を必要とする重症患者に対応する救急医療)医療において貴自治体在住住民の 患者数の集計を行っている場合はご記入をお願いします。
外来 患者数
入院 患者数
合計 患者数
外来 患者数
入院 患者数
合計 患者数
外来 患者数
入院 患者数
合計 患者数
※ 外来・入院の内訳が不明な場合は合計にご記入お願いします。
広域で行っている自治体名
救急医療機関名
平成23年度 平成25年度 平成27年度
当番日数 当番日数 当番日数
貴自治体名 都道府県名( ) 市区町村名( )
はい いいえ
市区町村名 平成23年度 平成25年度 平成27年度
※ 軽症・重症別で患者数を管理している場合は”軽症→外来”へ、”重症→入院”へご記入お願いします。
※ 救急医療機関数が上の欄の数を超えるようなことがあれば、お手数ですが行を追加してください。
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附録:『市区町村へEメール等で依頼した質問票内容』
問4 都道府県実施の電話相談事業(#8000)以外での自治体独自の救急電話相談事業について
※”行っている”を選択した場合は下記にもご記入お願いします。
※ 実施時間帯(休日)の実施がなければ欄に直接”×”とご記入ください
※ 指示内容別件数については、内訳件数が不明な場合は合計件数のみご記入お願いします。
問5 救急医療啓発事業等の実施実績について
(※ 実施した場合は、該当部分に”○”印をお願いします。)
問6 小児二次救急(入院を必要とする重症患者に対応する救急医療)医療機関に軽症患者が受診する いわゆる”コンビニ受診”を抑制するために、問4の「電話相談」や問5「救急医療啓発」
事業以外で自治体様独自に取り組まれていることはございますか。
※ ”はい”とお答えの場合は以下の取り組み内容を具体的 にまた、実施年度に”○”ご記入お願いいたします。
※ 積極的にご記入いただけると大変参考になります。
問7 小児・子ども医療費助成制度(”外来”の条件で入力お願いします。)
(医療費助成についての担当部署が異なりましたら、お手数ですがお伺いしていただけると大変助かります。)
※1:所得制限を行っている場合は”○”、行っていない場合は”×”のご記入お願いします。
※2:条件・金額欄は「3歳~小学3年生 初診500円」「小・中学校 1回200円まで」のようにご記入 お願いします。
※3:償還払いとは貴自治体内医療機関での適用についてお伺いしております。
行っている 行っていない
電話相談機関と二次救急医療機関を同一の機関で実施している はい いいえ 実施開始年度
平成23年度 平成25年度 平成27年度
↓指示内容 (件数)
①すぐ119番か医療機関へ 実施時間帯(平日夜間)
実施時間帯(休日)
④その他(育児相談等) 計 ②翌日昼間、病院へ ③心配なし
年度実績
平成23年度 平成25年度 平成27年度 対
象 者 を 限 定 し た も の
(
子 育 て 中 の 保 護 者 等)
講演・
講座・
啓発事 業
既存事業活用(赤ちゃん学級、両 親教室、保育所入所説明会等) 単独開催(医師等による講話、
救急法の実習等)
個別対応(乳幼児健診の待ち 時間等)
その他独自の取り組みがあれば下記にご記入 願います。(
)
特に無し 啓発 グッ ズ、広 報
メルマガ、救急ハンドブック 等情報冊子の配布
啓発グッズの配布(講座、健 診時等に配布)
( ) ~ ( ) ( ) ~ ( ) ( ) ~ ( ) はい いいえ
取組み内容( ) 実施年度 平成23年度 平成25年度 平成27年度
条件・金額(
)
負担方法※3 現物支給 ・ 償還払い 現物支給 ・ 償還払い 現物支給 ・ 償還払い 所得制限※1
一部自己負 担金※2
有 ・ 無 有 ・ 無 有 ・ 無
条件・金額(
)
条件・金額(
)
平成23年度 平成25年度 平成27年度
年齢制限
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