今後の課題として,拘束条件の取り入れ方や,近似に依らぬ定式化の検討は重要であ る。本論文では,拘束条件は射影を用いて取り入れたが,これは模型に修正を加えること になり,他の方法での解析も必要である。第5 章の終わりでも述べたとおり,物理的状態 を射影によって∆ ˜H から取り出すというやり方は一通りには定まらず,その結果も一般 には物理的状態の取り出し方に依存している。高次の計算をするにあたっては,より合理 的な物理的状態の取り出し方を見つけることが重要である。これらは今後の興味ある課題 である。また本研究を通じて我々は,α0 が zero slope 極限(α0 → 0)に従うような小さ い量であると仮定した摂動計算に基づいて,散乱振幅を計算した。しかし第6 章で示し たように,Tba(1) はTba(0) のある種の微分で求まる為,すべての補正を足し上げた非摂動効 果が求まることも期待され,今後の検証すべき興味ある方向を与えている。しかし一方 で,散乱振幅への補正がα0 に比例する形で現れることは,あるいは infinite slope 極限 (α0 → ∞)をとることが散乱振幅の増大につながる可能性も示唆される。ただし,この 様な極限で散乱振幅を求める場合においては,本研究で行ったのとは異なる近似の下で 計算を再度行う必要がある。この極限(α0 → ∞)はまた,図 9 の様に bi-local 場のスピ ンの異なる状態が同一質量に縮退する高階スピン重力の構造を想起させ,この下での解 析によるこの方向の展開はブレーン理論の立場からも興味深い。この他にも,ここでは
bi-local 場模型による計算を行ったが,これを拡張しバリオンを想定する tri-local 場模
型等で行った場合には,散乱振幅にどのような違いが現れるのかについて調べることも,
今後の重要な課題であると言える。
' E2
α
J
2
' m
0α
highest spin states
V
E2
J
2
m
0N m E − =
′( 2 20) α
図9 Infinite slope 極限(α0 → ∞)の模式図
謝辞
本論文をまとめるにあたり,大変熱心な御指導と数多くの御助言を頂きました仲滋文先 生に,心から感謝を致します。仲先生には博士後期課程3年より2年間に渡って,研究面 に留まらず,本当に多くの面で御指導,励ましを頂きました。他研究室から移ってきまし た私がこのような研究ができましたのは,本当に仲先生の御指導のおかげです。ありがと うございました。
また本研究に関する様々な御助言,御指摘を下さいました,素粒子論研究室の藤川和男 先生,出口真一先生,二瓶武史先生,三輪光嗣先生,学位審査におきまして,多研究室で あるにもかかわらず主査を引き受けて下さいました,藤井柴麻見先生に深く感謝致しま す。研究室の先輩であります豊田陽己先生,高梨宇宙先生にも多くの御助言,励ましを頂 きました。ここに御礼申し上げます。
また,大学院での研究生活において様々な御助言を下さいました先輩方,梅津光一郎 氏,鈴木隆史氏,野手順一氏にも大変お世話になりました。ありがとうございます。
大学院,研究室での生活を始めとし,本当に多くの面で相談に乗り,励まし,支えて下 さいました,首藤健太氏,江成隆之氏,岡野諭氏,研究室の後輩である勝木陽久氏,佐竹 良平氏をはじめとした多くの同期の友人,後輩に深く感謝致します。
最後に,学部1年生の時より10年間の長きにわたって私を支えて下さいました,両親,
家族に心から感謝致します。
付録 A 記法
本論文中においては特に断らない限りc=~= 1とした。また自然単位系を用いている が重力定数Gに関しては,明示的に記している。
Minkowski 時空の計量は
(ηµν) =
−1 0 0 0
0 1 0 0
0 0 1 0
0 0 0 1
(付録A.1)
と採っている。
光的座標x+, x−, x⊥ は x+ = 1
√2(x0+x3), x− = 1
√2(x0−x3), (付録A.2)
x⊥ = (x1, x2), (付録A.3)
と定義している。
光的座標においては Minkowski 時空の計量は
(ηµν) =
0 −1 0 0
−1 0 0 0
0 0 1 0
0 0 0 1
(付録A.4)
となる。また光的座標においては,衝撃波型重力場の計量は
(gµν) =
0 −1 0 0
−1 f(x⊥)δ(x−) 0 0
0 0 1 0
0 0 0 1
, (付録A.5)
である。この逆行列は
(gµν) =
−f(x⊥)δ(x−) −1 0 0
−1 0 0 0
0 0 1 0
0 0 0 1
, (付録A.6)
である。
付録 B 衝撃波型背景時空 B.1 計量 1
以下のような線素を考える。
d2s=−2dx+dx−+F(x+, x−, x⊥)(dx−)2+ (dx⊥)2 (付録B.1) ここから計量の各成分は
g−+ =−1, g+− =−1, g−− =F(x+, x−, xi), g11 = 1, g22 = 1, (付録B.2a) であり,これ以外は 0 である。この逆行列は
g−+ =−1, g+− =−1, g++ =−F(x+, x−, xi), g11 = 1, g22 = 1, (付録B.2b) であり,これ以外は 0 である。また行列式は
det(g) =−1 (付録B.3)
である。
ここからは簡単の為,A,b =∂bA = ∂x∂bAまたA,b=∂bA = ∂x∂
bAの意味で表す。
Christoffel 記号
Γµνσ =gµλΓλνσ (付録B.4)
Γµνσ = 1
2(gµν,σ+gνµ,σ−gνσ,µ) (付録B.5) Γµνσ = Γµσν
Γµνσ+ Γνµσ =gµν,σ
Γαµα= 1
2(logg),µ etc.
(付録B.6)
は,この計量から具体的に計算すると
Γ+−− =−1
2(F,−−F F,+) (付録B.7a) Γ+−+=−1
2F,+ = Γ++− (付録B.7b)
Γ−−− = +1
2F,+ (付録B.7c)
Γ+−i =−1
2F,i = Γ+i− (付録B.7d)
Γi−− =−1
2F,i (付録B.7e)
のみが残る。ただしi= 1,2である。これ以外は全て0になる。
次にRicci tensor
Rµν =Rαµαν
= Γαµν,α−Γαµα,ν + ΓαµνΓβαβ −ΓαµβΓβαν Rµν =Rνµ etc.
(付録B.8)
について考える。今考えている計量ではdet(g) =−1であったので,Γαµα は Γαµα = 1
2(logg),µ = 0 (付録B.9)
となるため,今の場合Ricci tensorは
Rµν = Γαµν,α−ΓαµβΓβνα (付録B.10) と簡単になる。これを具体的に計算すると,残るのは
R−− = 1
2(F F,++−F, ii ) (付録B.11a) R+− =−1
2F,++ =R−+ (付録B.11b)
R−i =−1
2F,i+ =Ri− (付録B.11c)
のみである。これ以外は全て0になる。
Riici scalarは
R=gµνRµν
=F,++ (付録B.12)
となる。
これらから,Einstein の重力場方程式 Rµν− 1
2Rgµν = 8πG
c4 Tµν (付録B.13)
の各成分を計算する(κ = 8πGc4 とする。またここではcを明示的に表した)。結果は表 2 のようになる。
µ ν Rµν− 12Rgµν =κTµν
+ + κT++ = 0
− − F, ii =−2κT−−
1 1 F,++ =−2κT11
2 2 F,++ =−2κT22
− + κT−+ = 0
1 + κT1+ = 0
2 + κT2+ = 0
1 − F,1+ =−2κT1−
2 − F,2+ =−2κT2−
2 1 κT21 = 0
表 2 Einstein の重力場方程式の各成分 これをまとめると
κTµ+ = 0 (付録B.14a)
F, ii =−2κT−− (付録B.14b)
F,++δij =−2κTij (付録B.14c)
F,i+ =−2κTi− (付録B.14d)
である。ただしi, j = 1,2である。