7-1 技術的・環境的課題の解決が必要な応用案
当面は、技術的な課題等により、実現が困難と考えられるが、将来な実現を期待するもの(応 用案)を以下に整理する。
(1)小型・安価なICタグを大量に散布するタイプ
小型・安価なICタグの製造、読み取り技術の開発、環境への影響の排除が課題となる。
【該当するICタグ応用案】
{ No.1-1 3) ICタグ測量杭
{ No.1-3 3) 河川土砂動態調査
{ No.1-4 2) 流量観測
{ No.4-1 2) 地下埋設物の維持管理
(2)小型・安価なICタグを土構造・コンクリート・アスファルトに混入するタイプ 小型・安価かつ混入に耐えるICタグの製造、読み取り技術の開発が課題となる。
【該当するICタグ応用案】
{ No.3-6 土構造・コンクリート構造物ライフサイクル管理
{ No.3-11 1), 2) 構造物の検査・維持管理支援
{ No.4-6 ダム堤体観測
{ No.4-9 のり面・堤防の異常検出
(3)ICタグの相互通信機能・連携機能を活用するタイプ又はICタグの位置検出技術を活用するタ イプ
相互通信機能・連携機能、ICタグの位置検出技術の開発が課題となる。
【該当するICタグ応用案】
{ No.3-2 2) 安全管理確認システム
{ No.4-6 ダム堤体観測
{ No.4-11 樹木管理
{ No.5-3 被災構造物の自動検出
7-2 その他の有望な活用例
FSの対象にはならなかったが、有望な活用例について列記する。
(1)交通案内・交通安全での活用
1)《活用シナリオ1》交通案内
センターライン又は路側に、道路の接続の情報や周辺の案内情報(店舗、観光情報など)を 記載した ICタグを設置し、車載のリーダで、これらの情報を読み取ることにより、カーナビ に比べより精度の高い、きめの細かい案内が可能になる。また、IC タグの情報をネットワー クに依存しない形で情報を保有するようにすれば、災害時等にネットワークに障害が生じた場 合でも、車両に情報を伝えることが可能になる。
2)《活用シナリオ2》交通標識情報の伝達
道路標識に標識の規制・案内情報を記載したICタグを設置し、上記と同様に車載のリーダ により、車内で標識の情報を得ることができる。標識の情報の見落としを防止できるとともに、
悪天候時にも情報の入手が容易になる。また、これらのIC タグの利用により、フィージビリ ティスタディ3の道路標識の維持管理への活用も可能である。
3)《活用シナリオ3》交通安全
シナリオ1に加え、車両や歩行者にもICタグを付け、車同士、車と歩行者の間で、ICタグ の情報を交信し、交通事故防止に活用する。特に、歩行者の飛び出し事故、車同士の出会い頭 の衝突事故の防止に大きく寄与すると考えられる。
4)《活用シナリオ5》交通流の把握
車載のICタグを路側のリーダで読み取ることにより、交通流の把握(旅行速度、交通量等)
が可能になる。この事例は、既に、車の旅行速度を検知するために、米国フロリダ州等で実験 中である(既存事例・建設分野3−7参照)。
現在、普及が進んでいるETCの装置の活用の可能性がある。
(2)防災面での活用
1)《活用シナリオ1》法面・盛土の変状検出
のり面ICタグを設置し、ICタグの存否や位置の変化を、道路を走行するパトロール車やヘ リコプターから読み取りのり面の変状を検出する。遠隔的に情報を読み取る ICタグの機能を 活用するため、調査時の危険性が少なく、迅速な情報の収集が可能になる。
盛土についても上記と同様に表面の変状を検知すると共に、盛土中にICタグを配置し土中 の位置の変化や含水率の変化等を検出する。
2)《活用シナリオ2》構造物の変状検出
構造物(建築物、土木構造物等)の表面やコンクリート構造物等の内部にICタグを設置し、
被災時 ICタグの位置の変化や振動データを読み取り、構造物等の被災状況の把握や予警報を 発信する。シナリオ1と同様、遠隔的かつ迅速に情報の収集が可能である。
被災時のみではなく、通常の構造物の保守・点検技術としても活用可能である。
(3)市民への情報提供での活用
1)《活用シナリオ1》近代土木遺産の案内
(論文「近代土木遺産保全・活用に向けた電子タグ利用に関する一考察」、嶋田ほか
:23回土木史研究発表会、2003年6月 参照)
近代土木遺産に ICタグを取り付け、近代土木遺産等文化財の案内に利用する。構造物と資 料の照合が容易に行え、教育面でも活用が可能になる。訪れる市民に、リーダを貸与し、市民 はリーダで ICタグの情報を読み取ることにより、案内板等の静的な情報より更に詳しい情報 を入手することができる。
2)《活用シナリオ2》市民の声の収集
管理者が遠くにいるような公共施設に、IC タグを設置し、携帯電話等一般に普及したリー ダ/ライタを用いて、この施設の利用者に意見・苦情等を ICタグに記入してもらい、管理者 がICタグを巡回することにより、市民の声を収集する。
(4)維持管理での活用
1)《活用シナリオ1》道路標識柱・照明柱の維持管理
道路標識柱・照明柱等にICタグを付け、維持管理に活用する。管理区域に複数ある道路標 識柱等に ICタグ及び振動を感知できるセンサーを取り付け、個々の道路標識柱等の管理を効 率化する。ICタグには、個々を識別するIDや道路標識柱等の基本諸元を登録する。なお、点 検時実施には、IC タグの長所である非接触による情報の読み取り機能を利用し、道路パトロ ールカーで走行することで、効率的に作業を実施できる。
8 IC タグ適用による建設分野の発展に向けて
8-1 建設分野において活用されるべき IC タグの特徴
ICタグは、様々なものに埋め込・はり付けることが可能であり、もの(実現社会)とシステム・
ネットワーク(仮想社会)を直接的につなぎ合わせることができる。ICタグは、バーコードと異 なり、耐久性・耐環境性に優れ、遠隔から(非接触で)、複数のデータの読み書き、書き換えが 可能であり、更に、移動中の読み取りや被覆も可能である。
建設分野の場合、土木構造物の供用寿命が長い上、風雨、直射日光にさらされる屋外環境であ ることから、数十年程度の耐久性・耐環境性が求められる。また、構造物が大型であるため、遠 距離から交信できることも求められる。
8-2 今後に向けて
建設分野での事業の効率化のためのICタグの活用について、本研究会でICタグの技術及び活 用の現状の調査と新しい分野での活用方法について検討を行ってきた。その結果としてICタグは 今後の建設分野の発展に大きな可能性を秘めていることが明らかになった。活用に関しては、IC タグ単独の使用においても十分な効果があるケースもあるが、ICタグの特性である「ものと情報 の連携」の機能を活かし、構造物等とそのプロダクトモデル等を結合させることによってより大 きな効果が得られると考えられる。また、災害時などにおいて情報インフラが途絶した場合を考 慮すると、ICタグによって現地に情報を保持することの効果も大きいと考えられる。
(1)建設分野への適用を図るために注目すべきICタグの特性
ICタグは、非接触で情報の交換が可能であることなどから、ユビキタス社会を実現するため のキーとなる技術といわれている。一般的にいわれている特徴は、以下のとおりである。
z 非接触、遠隔的な情報の読み取り/書き込みが可能 z 情報の保持、読み書きが可能
z 耐久性、耐環境性が高い
z 同時に複数のタグの読み取りが可能 z 通信速度が速い
z 小型化・軽量化が可能、形状が自由 z センサー付きのものが可能
一般的な分野では、これらの特性を活かしバーコードを高度化したものとして商品のサプラ イチェーンなどでの利用が活発にはじまっている。
建設分野においては、
z データの保持、読み書きが可能(実物と情報の直接的な連携)
z 耐久性、対環境性に優れている(屋外での使用、長期の使用)
z 非接触・遠隔的な情報の読み取り/書き込みが可能(構造物の大きさに応じた活用)
が重要な特徴と考えられ、実物と情報を連携させた活用や現地に情報を有していることによ り大きな効果を発揮すると考えられる。
しかし、今後、建設分野での更なる活用を図るためには、次の課題が残されていることが明 らかになった。
価格の更なる低廉化
建設分野では、対象とする構造物等の重要性からみて活用による効果が大きいケースが 多いため価格の低廉化はすべての利用局面で求められるわけではないが、大量に使用す る場合などには更なる低廉化が必要となる。
長寿命化
ICタグはバーコードなどに比べ寿命が長いが、建設分野の構造物の寿命が数十年である ことを考えると、ライフサイクルを管理する場合にはより長寿命化が求められる。
金属、水分による影響の除去
これらの影響を除去するICタグの技術開発は進んではいるが、建設分野では、鉄鋼やコ ンクリートが多い環境や屋外での使用が多いことを考慮すると、更にこれらの影響を受 けないICタグ技術や影響を除去する使用方法の開発が望まれる。
センサー付きタグの高度化
既存のものとして、温度や振動などのセンサー付きのICタグは開発されつつあり、建設 分野においてもこれらの活用は考慮するべきであるが、更なる活用のためには、ひずみ や応力などのセンサー付きICの開発が望まれる。
ICタグの技術進歩は著しく、上記の課題も解消されつつある現状でありこれらの開発を待っ て建設分野に適用していくことも考えられるが、建設分野からの具体的な機能要件の提示も重 要と考えられる。