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人為的理由n=16 教師・保護者・友人の援助,加害者 自身の変化などの外的影響による

解決

いじめた子が先生に怒られて止めた。友 だちが仲介してくれたから。相手の方か ら謝ってくれた。

2.被害者自身の対処

n =27(40.9%) 加害者への働きかけ,第3者への 相談など,自らの何らかの対処によ る解決

相手を無視した。相手に反撃して止めさ せた。先生と親に相談して話し合いをし た。自分のいけないところを直して,別 の友だちに相談に乗ってもらった。

3.不明 n =4(6.1%) わからない。特にない。

あった。その一方で,女子の場合は,友人や親や教師など第三者のサポートを求める対処 を中心にした間接的な対処を選択する傾向にあることが明らかとなった。

③いじめ被害者の約 15%が「学校を休む」という対処を行っており,不登校との関連が 推測された。

④「いじめ被害内容」にも性差が認められた。すなわち,「身体・物理的いじめ被害」で 有意に男子が高く,「心理的いじめ被害」では逆に女子が高いという結果であった。この ことは,「いじめ被害対処」の性差を説明するためのひとつの要因として考えられる。

⑤いじめが解決した被害者の自由記述から,半数を超える被害者が解決理由を自らの対 処ではなく,「外部の影響」として記述していた。さらに,「外部の影響」と記述した者の 半数以上(いじめを解決した生徒全体の 28.8 %)が,転校やクラス替えなどの「状況・物 理的理由」に,いじめ解決の理由を帰属していた。

これらの結果をもとに,いじめ被害者への支援と関連づけながら,以下に2つの点につ いて考察を加えたい。まず第1に,いじめ被害者の対処に性差が認められた理由について である。この理由として,中学生のもつ一般的なサポートに関する性差と関連している可 能性がある。すなわち,男子に比べ女子の方が身近な人によるサポートへの強い期待を持 っていることがあげられる(岡安・嶋田・坂野,1993)。

また,「いじめ被害内容」の性差も,対処の違いに影響を与えていると考えられる。す なわち,女子の場合は,無視やうわさなどの「心理的いじめ被害」が高い。換言すれば,

関係性攻撃を中心とする「間接的いじめ」が女子に多いことから,女子は,直接加害者に 立ち向かうよりも,友人や保護者や教師という周囲のリソースを活用する間接的な対処に よって,無視やうわさなどの修正や変更を試みていると考えることができる。

例えば,第三者を積極的に活用することで,加害者によるコミュニケーション操作に対 抗可能な,新たなコミュニケションを首尾良く形成できたのならば,いじめが解決するの みならず,逆に加害者をいじめの被害者にするなど,被害と加害の関係を逆転させること も不可能ではない。女子に多く見られる間接的な対処は,他者にサポートを求める気持ち

の強さにとどまらず,より戦略的な対処としての側面も併せもっていると言えるかもしれ ない。

一方で,男子の場合は,「身体・物理的いじめ被害」のような直接的ないじめが多いこと から,直接的な対処を選択しやすくなる。加害者による脅威が大きいときには,忍耐や沈 黙のような回避的な対処を選択し,そうでない場合には,逆に加害者に立ち向かっていく ような能動的な対処が増えると考えられる。したがって,心理的いじめのような「間接的 いじめ」が中心であるならば,女子と同様に,男子でも間接的な対処が多くなる可能性が あり,「いじめ被害内容」は,被害者の対処行動に大きな影響を与えていると推測される。

いずれにしても,いじめ被害者への支援は,いじめ自体の特徴や性による対処の特徴を 十分に考慮に入れながら進めていく必要がある。とりわけ,男子に多く見られる忍耐や沈 黙のような回避的な対処が行われた場合,そのことは,教師などの周囲の援助者によるい じめ発見をきわめて難しくするにちがいない。また,このような対処をするいじめ被害者 は,いじめ発見者から被害の指摘を受けても,被害を否定したり否認したりする可能性も 高い(本間,2008)。したがって,周囲の援助者は,いじめの発見に日頃から心がけると ともに,特にいじめを否定したり否認したりする者に対しては,被害者が安心して話せる ような関係を粘り強く作り上げていくことに留意すべきであろう。

第2の考察は,いじめ解決者の解決理由の記述に関してである。いじめ解決者全体のな かで,「外部の影響」を解決理由にあげた者が半数を超えており,さらにクラス替えや転 校のような「状況・物理的理由」と答えた者が「外部の影響」の内の半数を超えていた。

言い換えれば,いじめを解決した被害者の半数以上が解決の理由を自らの能力や努力に帰 属しておらず,さらに3割近くの解決者が第三者による支援の結果とも感じていないこと を示している。すなわち,男子で多い直接的な対処,また女子でよく見られる間接的な対 処,被害者によるこれらの対処は,現実の場面では,それほど成功していないと考えられ る。このことから,いじめとは,被害者自身の能力や努力のみでは解決のきわめて困難な 問題と言わざるをえないのである。

これらのことは,中学生が予測したいじめ対処法に対する教師と生徒の有効性の比較を 行い,「危機介入依頼志向」に関して教師が生徒より,「無抵抗・服従志向」に関して生徒 が教師よりも有効と考えていることを明らかにした上地(1999)の研究結果と関連してい る。すなわち,中学生段階のいじめ被害者は「無抵抗・服従志向」のような回避的・受動 的な対処を強いられやすい。さらに言えば,そのような対処を通して結果的に,状況・物 理的ないじめ解決を期待する立場に追い込まれやすいことを意味しているのである。

別の見方をするならば,自らの力や周囲の力を借りることで逆に問題がこじれてしまう よりも,時間が経てばいずれクラス替えなどで自然に解決するのではとの期待が,被害者 のなかにはあると言えるのかもしれない。いずれにしても,このような結果は,周囲の援 助者による被害者への支援を困難にしている大きな理由のひとつと考えられる。したがっ て,周囲の援助者は,このような子どもたちの対処や認知の傾向について,熟知する必要 があるだろう。そのうえで,いじめは解決可能な問題であって,そのために周囲の援助者 が全力を尽くすことを常に子どもたちに呼びかけるなど,学校をあげての啓発的な活動が いじめ被害者の支援にとってきわめて重要な意味を持つのである。

注 5:研究2は,本間(2006a)の研究を,本博士論文のために加筆修正したものである。

第6章 研究3:いじめ被害者のいじめ解決と適応に関する研究(注6) 1.目的

研究3では,研究2を受けていじめ被害者から見たいじめの解決を取り上げ,解決をめ ぐる重要な問いに答えるとともに,教師を中心とする学校関係者が,いじめ解決者を含む 被害者に対して,どのように向き合っていけばよいかについて考察することを主要な目的

としたい。以下に,研究3の目的を具体的に述べておく。

第1に,学校で起こるいじめは実際にどの程度解決し,解決の程度はいじめの内容によ って差があるのか否かを示す。第2に,いじめを解決した被害者がいじめ解決理由を何に 帰属しているかを定量的に示すとともに,その認知の傾向がいじめの内容によって異なっ ているのかを明らかにする。第3に,いじめ解決による被害者の適応の回復について検討 する。もし解決によって適応が回復するとすれば,それは学校生活への社会的適応のみな らず,より内的な心理的適応を含むのか。最後に,以上の検討をふまえて,解決者を含む いじめ被害者への支援のあり方について言及する。

2.方法

(1)調査対象

大都市部及びその周辺部に位置する公立中学校3校に在籍する中学生(1年生 458 名,

2年生416名,3年生414名)の計1288名(男子659名,女子629名)を対象に調査を行い,

そのなかからいじめ被害経験があると答えた生徒 291 名(男子 168 名,女子123 名)のなか で,回答に不備のあった 17 名を除いた 274 名(男子 155 名,女子 119 名)を本研究の直接 の対象とした。

(2)調査内容

次に示す尺度を作成した。①「いじめ被害経験の有無(1項目)」:調査対象全員に対し て,この1年間でのいじめ被害経験を“なし”と“あり”の2件法で尋ねた。

「いじめ被害経験の有無」で“あり”と答えた「いじめ被害者」を対象とした以下のよ うな尺度を作成した。②「いじめ被害内容(8項目)」:本間(2006a)の「いじめ被害内容」

を使用し,“なし(1点)”から“よくあり(4点)”の4件法で評定を求めた。

③「いじめ被害解決(1 項目)」・「いじめ被害解決理由(18 項目)」:いじめ被害者のいじ

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