5. 交流回路の複素計算法
L i(t)
v(t) C R
e(t)
図5.1 RLC回路
E=Eeejφ (5.19)
とする。このとき、電流i(t)のフェーザ表示をIとすると、図5-1の回路の回 路方程式
Ldi
dt+Ri+ 1 C
Z
idt=e (5.20)
から、
(jωLI+R+ 1
jωC)I=E (5.21)
が成立するのがわかる。
Z=jωLI+R+ 1
jωC =R+j(ωL− 1
ωC) (5.22)
と置けば、
I= E
Z (5.23)
を得る。これから
|I|= |E|
|Z|, argI= argE−argZ (5.24) を得る。時間波形では
i(t) =√
2Iesin (ωt+φ−θ) (5.25)
とすると Ie= Ee
|Z|, θ= argZ (5.26)
5. 交流回路の複素計算法
となる。ここに、
|Z|= r
R2+ (ωL− 1 ωC)2 argZ= arctan
ωL− 1 ωC R
(5.27)
である。
5 . 2 インピーダンスとアドミタンス
インピーダンス (5.22)のZは
Z =E
I (5.28)
で定義されている。このように、フェーザ電圧Eとフェーザ電流Iの比E/I として定義されるZは抵抗の拡張のようにみることができる。これをインピー ダンス(impedance)という。
E=ZI (5.29)
が成り立つ。この式は
I=Y V (5.30)
とも書ける。ただし、Y = 1/Zである。Y をアドミタンス(admittance)と いう。
注 Zは複素数でフェーザであるが正弦波関数が対応はしていない。
5 . 2 . 1 歴史的背景
(1)(参考書から) 交流回路にフェーザを用いるのは1877以降、レイリー とヘビサイドによって始められた。しかし、実際に電気の分野で普及させたの はケネリーとシュタンインンメッツで1893年以降である。
(2)(リンク) John William Strutt Lord Rayleigh(Born: 12 Nov 1842
in Langford Grove (near Maldon), Essex, England, Died: 30 June 1919 in Terling Place, Witham, Essex, England)
(3) (リンク) Oliver Heaviside (Born: 18 May 1850 in Camden Town, London, England Died: 3 Feb 1925 in Torquay, Devon, England)
(a)ベクトル解析を作り上げ、Maxwellの方程式を現在の形に定式化した。
(b) 1880から1887の間に演算子法(pdf)を開発した。
(c) 1887に大洋間通信にinduction coilsを加えるべきとの提言をした。
(d) 1902 Kennelly-Heaviside Layerが存在することを予想した。
(e) Heaviside step functionでも有名。
(4) ( リ ン ク ) Arthur Edwin Kennelly (「 ケ ネ リ ー は1893 年 に the American Institute of Electrical Engineers (AIEE)の 発 行 す る 雑 誌
に、”Impedance”に関する論文を書いた。これにより複素解析の手法を用
いてdc解析と同様な解析がac解析で行えるようになった。」との記述が ある。)
(5) Charles Proteus Steinmetz (1865-1923) 1865年4月9日に Bres-lau, Prussiaに生まれる。1889にアメリカに移り、General Electric in Sch-enectadyに勤める。1902年からNew York city’s Union Collegeの教授とな る。(1) マグネチックヒステリシス (2) 交流電流(Wechselstrom) を計算す るためにの複素数を用いた簡便な方法の発展などに貢献があった。著書に
C.P.Steinmetz, Theory and Calculation of Alternating Current Phenom-ena, McGraw-Hill Book Co., Inc., New York, 1916
5 . 3 リアクタンスとサセプタンス
インピーダンスは複素数であるから
Z=R+jX (5.31)
と書ける。ただし、RとXは実数とする。Rを抵抗部、Xをリアクタンス部 という。同様に、Y = 1/Zも
5. 交流回路の複素計算法
Y =G+jB (5.32)
と書ける。ただし、GとBは実数とする。Gをコンダクタンス、Bをサセプ タンスという。
5 . 4 イミタンスとフェーザ図(ベクトル図)
(1)インピーダンスとアドミタンスを総称してイミタンスという。
(2)フェーザ図(ベクトル図ともいう)
単一角周波数の独立電源を含む回路のあるフェーザ電圧とフェーザ電流を同 一複素平面に図示した図(diagram)をフェーザ図という。2つの複素数の振幅 の違いと位相差がみたいので、基準となるほうのフェーザの位相を0として他 方のフェーザの位相が丁度位相差になるように表示すると見やすい。
5 . 4 . 1 例 題
(1) RC直列回路
図5.2のRC直列回路を考える。図5-2 RC直列回路 i(t)
C= 100µF R= 5Ω
e(t) = 10V60Hz
図5.2 RC直列回路
E= 10[V]でω= 2πf = 120πである。Z=R+ 1/(jωC) = 10−j/(120∗ 10−4) = 10−26.5258j[Ω]となる。
|Z|とargZをMATLABで計算すると次のようになる:
>> k=1/(120*pi*0.0001) k =
26.5258
>> az=sqrt(5^2+k^2) az =
26.9929
>> s=-atan(1/(120*pi*0.0001*5)) s =
-1.3845
>> s*180/pi ans = -79.3253
よって、Zのフェーザ形式は
Z = 26.993∠−79.3253 (5.33)
となる。また、フェーザ電流Iは
I=E/Z (5.34)
で与えられるから I= 10∠0
26.993∠−79.3253 = 370.5mA∠79.3253 (5.35) を得る。
θ E I
図5.3 RC直列回路のフェーザ図
時間関数は e(t) =√
210 sin 120πt (5.36)
に対して
5. 交流回路の複素計算法 i(t) =√
2∗0.3705 sin (120πt+ 1.3845) = 0.5240 sin (120πt+ 1.3845)(5.37) となる。
Spiceでの解析
図5-2をネットリストとして表すと ac r-c circuit
v1 1 0 AC 10V r1 1 2 5 c1 2 0 100u
.AC lin 1 60Hz 60Hz .END
となる。このファイルがc:\SpiceOpus\ex\ac10.cirであるとして、Spice で解析した結果を以下に示す。
SpiceOpus (c) 1 -> c:\SpiceOpus\ex\ac10.cir Circuit: ac r-c circuit
SpiceOpus (c) 2 -> run
Warning: v1: has no value, DC 0 assumed SpiceOpus (c) 3 -> print i(v1)
i(v1) = -6.86229e-002,-3.64056e-001 SpiceOpus (c) 4 -> print mag(i(v1)) mag(i(v1)) = 3.704671e-001
SpiceOpus (c) 5-> print atan(imag(i(v1))/real(i(v1)))*180/pi atan(imag(i(v1))/real(i(v1)))*180/pi = 7.932525e+001
これは先の解析と一致することがわかる。
(2) RC並列回路
図5.4のRC並列回路を考える。
ネットリストは
ac r-c parallel circuit v1 1 0 AC 10V
i(t)
C= 100µF R= 5Ω
e(t) = 10V60Hz
図5.4 RC並列回路
r1 1 0 5 c1 1 0 100u
.AC lin 1 60Hz 60Hz .END
このファイルがc:\SpiceOpus\ex\ac11.cirであるとして、Spiceで解析し た結果を以下に示す。
SpiceOpus (c) 10 -> c:\SpiceOpus\ex\ac11.cir Circuit: ac r-c parallel circuit
SpiceOpus (c) 11 -> run
Warning: v1: has no value, DC 0 assumed SpiceOpus (c) 12 -> print i(v1)
i(v1) = -2.00000e+000,-3.76991e-001 SpiceOpus (c) 13 -> print mag(i(v1)) mag(i(v1)) = 2.035220e+000
SpiceOpus (c) 14 -> print atan(imag(i(v1))/real(i(v1)))*180/pi atan(imag(i(v1))/real(i(v1)))*180/pi = 1.067475e+001
これからフェーザ電流Iは
I= 2.035∠10.67 deg (5.38)
で与えられる。
問 手計算で以上の結果を確認せよ。
5. 交流回路の複素計算法
略解 Y = 1/R+jωC= 0.2 + 0.0377jより
I=Y E= (0.2 + 0.0377j)10 = 2 + 0.377j (5.39) (3) RL直列回路
i(t) R= 5Ω
e(t) = 10V60Hz L= 10mH
図5.5 RL直列回路
図5.5の回路において、Z =R+jωL= 5 + 120π0.01 = 5 +j3.7699 [Ω] MATLABにより
>> abs(z) ans = 6.2620
>> a=angle(z) a =
0.6460
>> a*180/pi ans = 37.0156
と計算できるので、
Z = 6.262e0.646j (5.40)
よって、
I=E/Z= 10/Z= 1.5969e−0.646j (5.41)
Spiceによる解析 ネットリストは ac r-l circuit v1 1 0 ac 10 r1 1 2 5 l1 2 0 10m .ac lin 1 60 60 .end
となる。この内容のファイルがc:\SpiceOpus\ex\ac12.cirであるとして
Spiceで解析を行うと次のようになる。
SpiceOpus (c) 15 -> c:\SpiceOpus\ex\ac12.cir Circuit: ac r-l circuit
SpiceOpus (c) 16 -> run
Warning: v1: has no value, DC 0 assumed SpiceOpus (c) 17 -> print i(v1)
i(v1) = -1.27511e+000,9.614121e-001 SpiceOpus (c) 18 -> print mag(i(v1)) mag(i(v1)) = 1.596942e+000
SpiceOpus (c) 19 -> print atan(imag(i(v1))/real(i(v1)))*180/pi atan(imag(i(v1))/real(i(v1)))*180/pi = -3.70156e+001
(4) RL並列回路
図5.6の回路を考える。
Y = 1 R+ 1
jωL = 0.2−0.2653j (5.42)
より
I=Y E= 2−2.653j (5.43)
Spiceによる解析 ac r-l circuit