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亜熱帯ジェット<弱>、寒帯前線ジェット<弱>

6.2 南半球

6.2.4 亜熱帯ジェット<弱>、寒帯前線ジェット<弱>

E-Pフラックスの立ち上がる中心が南緯45度から55度付近であることから、南緯45 度から55度付近で顕熱の南向き輸送がさかんに起こっている。また向きから、200 hPa

面から300 hPa面にかけて、南緯50度付近を境に南側では西風運動量の北向き輸送が、

北側では西風運動量の南向き輸送が起こっていることから、Charneyモードの影響が強い と考えられる。E-Pフラックスの収束・発散場を見ると、亜熱帯ジェットの北側ではE-P フラックスが収束、つまり減速し、南側では発散、つまり加速するような波のエネルギー の伝播が起こっている。しかし、それとともに、南緯65度付近でも発散、つまり平均流 を加速するような波のエネルギーの伝播が起こっている。これは、E-Pフラックスの鉛直 成分の発散の寄与が大きいためと考えられる。その理由としては、やはりプラネタリー波 の鉛直伝播の影響であると考えられる。

 以上より、亜熱帯ジェット<弱>、寒帯前線ジェット<弱>のときには、亜熱帯ジェッ トの傾圧性に伴う傾圧不安定波であるCharneyモードと寒帯前線ジェットの傾圧性に伴う 傾圧不安定波であるPolarモードによって、ダブルジェットの状態になるような波のエネ ルギーの伝播が起こっていると考えられる。実際にも亜熱帯ジェット域と南緯60度付近 で風速が強まっていた。

7 結論

7.1 北半球

寒帯前線ジェットが強く、亜熱帯ジェットが弱いときにはPolarモードの影響が強く、寒 帯前線ジェット域が加速されるため、ダブルジェットの状態となるような波のエネルギー の伝播が起こっていることがわかった。しかし、亜熱帯ジェットもともに強いときには、亜 熱帯ジェットの風速が50 m/s程度、寒帯前線ジェットの風速が25 m/s程度と亜熱帯ジェッ トの方がはるかに強いために、Charneyモードの影響の方が強く、亜熱帯ジェットの低緯 度側、寒帯前線ジェット域で減速、北緯45度付近で加速が起こり、シングルジェットの状 態となるような波のエネルギーの伝播が起こっていることがわかった。同様に、亜熱帯 ジェットも寒帯前線ジェットも弱いときには、亜熱帯ジェットの風速が30 m/s程度、寒帯 前線ジェットの風速が15 m/s程度と亜熱帯ジェットの方が強いために、Charneyモードの 影響が強く、亜熱帯ジェットの低緯度側、寒帯前線ジェット域で減速、北緯45度付近で加 速が起こり、シングルジェットの状態となるような波のエネルギーの伝播が起こっている ことがわかった。最後に、亜熱帯ジェットが強く、寒帯前線ジェットが弱いときにはE-P フラックスが北緯45度付近を中心に鉛直上向きに立ち上がり、300 hPa面付近から低緯 度側と高緯度側にほぼ水平に向かっていることからCharneyモードの影響が強く、北緯 45度付近で加速が起こるような波のエネルギーの伝播が起こっていることがわかる。し かし、寒帯前線ジェット付近でも加速が起こっており、先行研究の結果とは違う結果が得 られた。これは、先行研究では東西波数6のCharneyモードを理論的に抽出しているの に対して、本研究の解析においては亜熱帯ジェットが強いとき、Charneyモードの影響が 強いだろうと考え、ジェットが強い事例を便宜的に選び出した。そのため、理論的な東西

波数6のCharneyモードのほかにプラネタリー波も含まれており、そのプラネタリー波

が鉛直伝播したためと考えられる。

7.2 南半球

北半球と同様に、寒帯前線ジェットが強く、亜熱帯ジェットが弱いときにはPolarモー ドの影響が強く、寒帯前線ジェット域が加速されるため、ダブルジェットの状態となるよ うな波のエネルギーの伝播が起こっていることがわかった。そして、亜熱帯ジェットもと もに強いときには、北半球の結果とは異なり、Charneyモードの影響に加えてPolarモー

ドの影響も強く、寒帯前線ジェット域が加速されるため、ダブルジェットの状態となるよ うな波のエネルギーの伝播が起こっていることがわかった。次に、亜熱帯ジェットも寒帯 前線ジェットも弱いときには、E-Pフラックスが南緯50度付近を中心に鉛直上向きに立 ち上がり、300 hPa面付近から低緯度側と高緯度側にほぼ水平に向かっていることから、

Charneyモードの影響が強く、南緯45度付近で加速が起こるような波のエネルギーの伝

播が起こっていることがわかった。しかし、寒帯前線ジェット付近でも加速が起こってお り、先行研究の結果とは違う結果が得られた。同様に、亜熱帯ジェットが強く、寒帯前線 ジェットが弱いときにはE-Pフラックスが南緯50度付近を中心に鉛直上向きに立ち上が り、300 hPa面付近から低緯度側と高緯度側にほぼ水平に向かっていることからCharney モードの影響が強く、南緯45度付近で加速が起こるような波のエネルギーの伝播が起こっ ているが、南緯45度付近での加速はあまり顕著でないことがわかった。

 各場合ごとに対象事例日から5日後の場について見たところ、E-Pフラックスの収束・

発散のパターンから考えられるジェットの加速・減速とは違う結果が得られる場合のほう が多かった。このことから、E-Pフラックスの収束・発散の効果に加えてコリオリトルク や摩擦の効果もジェットの加速・減速に対して大いに影響しているということがわかった。

 本研究では、E-PフラックスとE-Pフラックスの収束・発散場について対流圏内のみを 議論の対象としたが、成層圏への波のエネルギーの伝播形態についても今後の課題となり うるだろう。

謝辞

本研究を進めるにあたり筑波大学地球科学系の田中博教授には研究動機となる論文の 紹介、研究手法、数多くの図の作成、考察などについて適切な御指導を賜り、心から感謝 しております。

 また、同大学準研究員 渡来 靖氏、生命環境科学研究科 松枝 未遠氏、横山 直美氏には研 究手法、数多くの図の作成などに関して多数の御助言を頂き誠に有難うございました。

最後になりましたが、ともに卒業研究を進めた筑波大学地球科学主専攻気候学・気象学分 野の4年生の皆様にも大変お世話になり深く感謝しております。

 なお、本研究で用いた主な図は、Grid Analysis and Display System (GrADS; Doty and Kinter 1992)にて作図しました。

参考文献

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Atmos. Sci., 33, 2031–2048.

[2] Dickinson, R. E., 1969: Theory of planetary wave-zonal flow interaction. J. Atmos.

Sci.,26, 73–81.

[3] Doty, B. and J.L. Kinter III, 1992: The Grid Analysis and Display System (GrADS):

A practical tool for earch science visualization. Eighth International Conference on Interactive Information and Procession Systems, Atlanta, Georgia, 5–10.

[4] Duchon, C. E., 1979: Lanczos filtering in one and two dimensions.J. Applied Meteor., 18, 1016–1022.

[5] Edmon H. J., Jr., B. J. Hoskins, and M. E. McIntyre, 1980: Eliassen-Palm cross sections for the troposphere. J. Atmos. Sci.,37, 2600–2616.

[6] Eliassen, A. and E. Palm, 1961: On the transfer of energy in stationary mountain waves. Geofys. Publ., 22, No. 3, 1–23.

[7] 気象庁, 2005: 気候系監視報告. 気象庁, No. 05-03, 25pp.

[8] 気象庁, 2006: 気候系監視報告. 気象庁, No. 06-03, 25pp.

[9] 藤原禅, 2002: 北極振動(AO)に伴う渦動エネルギー輸送の研究, 平成13年度 卒業 論文, 筑波大学第一学群自然学類

[10] Lee, S. and H.- K. Kim, 2003: The dynamical relationship between subtropical and eddy-driven Jets.J. Atmos. Sci., 60, 1490–1503.

[11] Onogi, K. and Coauthors, 2005: JRA-25: Japanese 25-year re-analysis project-progress and status.Quart. J. Roy. Meteor. Soc., 131, 3259–3268.

[12] 斉藤陽介, 2004: 北極振動のライフサイクルの解析的研究, 平成15年度 卒業論文, 筑 波大学第一学群自然学類

[13] Tanaka, H. L. and H. Tokinaga, 2002: Baroclinic instability in high latitudes induced by polar vortex: a connection to the Arctic Oscillation. J. Atmos. Sci., 59, 69–82.

[14] 田中博, 2004: 順圧大気大循環モデルによる北極振動の数値実験およびその力学的考 察. 気象研究ノート, 206号, 71–107.

表 1: 解析で用いた記号、添え字、定数など

u, v, w 風の東西、南北、鉛直成分

T 気温

f コリオリパラメータ F, G 摩擦項、非断熱項

H スケールハイト

N ブラント・ヴァイサラ振動数

m 波数

¯

ω 角速度

¯

x 帯状平均成分

x0 渦動成分

F E-Pフラックス

表 2: 解析で用いた物理定数 ρ00 空気密度 (= 1.2 g/cm2)

a 地球の半径 (= 6371220 m) Cp  定圧比熱 (= 1004 J/kg·K)

図 1: 子午面循環と亜熱帯ジェット、寒帯前線ジェットの模式図 (a)軸対象循環 (b)中 緯度域で傾圧性の成長率が最も大きい場合 (c)亜熱帯ジェット域で傾圧性の成長率が最 も大きい場合(Kim and Lee, 2003より)

図2: 月平均帯状平均東西風速の鉛直断面図(南半球においてダブルジェットの場合)2005 年3月 (気象庁, 2005より)

図 3: 月平均帯状平均東西風速の鉛直断面図(南半球においてシングルジェットの場合)

2006年3月 (気象庁, 2006より)

図 4: 傾圧不安定固有解(Charneyモード)の高度場の構造(上:ジオポテンシャル高度の 順圧成分、下:ジオポテンシャルの振幅(実線)と位相(点線))(田中博, 2004より)

図 5: 傾圧不安定固有解(Polarモード)の高度場の構造(上:ジオポテンシャル高度の順 圧成分、下:ジオポテンシャルの振幅(実線)と位相(点線))(田中博, 2004より)

図 6: モデル実験による亜熱帯ジェットの強さに伴う亜熱帯ジェットと寒帯前線ジェットの 位置の緯度変化 ※横軸は亜熱帯ジェットの強さを表す指標Qmax(○:亜熱帯ジェット、

●:寒帯前線ジェット、□:今回は省略) (Kim and Lee, 2003より)

図 7: 北半球250hPa面における風速の分布図 1983/02/01〜06 12UTC

図 8: 北半球250hPa面における風速の分布図 1983/02/07〜12 12UTC

図 9: 北半球250hPa面における風速の分布図 1983/02/13〜18 12UTC

図 10: 北半球250hPa面における風速の分布図 1983/02/19〜24 12UTC

図 11: 北半球250hPa面における風速の分布図 1983/02/25〜28 12UTC

図 12: 北半球 帯状平均風速の鉛直断面図 1979/03/12 12UTC(ダブルジェットのとき)

図13: 北半球 帯状平均風速の鉛直断面図1979/03/12 12UTC(シングルジェットのとき)

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