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ドキュメント内 原 著 (ページ 76-102)

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保護者における児童虐待の認知の特徴と発達心理学的要因の検討 77

が指摘されている(例えば,西淫,1999)。そこで,本 稿では,虐待に関する項目では,因子分析によらず,項 目による検討を中心に進めることとした。さらに,項目 による検討を同じ被調査者群で繰り返すため,第1種の 過誤,第2種の過誤を避けるため,今後の統計解析によ る検定結果は,有意水準を1%水準とした。

専門家の職種について,児相群(児童福祉司39名,

心理判定員25名,保育士4名)において,群内の職種に よる差がみられたのは,「親の 性的満足のために子ども に性器を触らせる」(F(7,60)=4.01, <、001)の1項目 のみだった。なお,児相群と保育所に勤務する保育士群 で虐待認知の差を検討したところ,差がみられたのは,

16項目だった(Table3参照)。概ね,児相群の方が保育 士群と比較して高く虐待と認知していた。保育士群につ いては,保護者群よりもいくぶん虐待認知には敏感であ るが,分布は保護者群に近い得点分布だった。

性差について,保育士群や保護者群では女性に偏った ために,児相群のみで, 性差を検討したところ,以下の 3項目で性差が認められた。男性の方が有意に高く虐待 と認知したのが,「買い物をする間,乳幼児を車の中に 残しておいた」(/(60)=2.83, <、01)といったネグレク トに関する項目と「親が思春期の娘の胸をさわる」(/(60)

=3.5, <、01)といった性的虐待に関する2項目のみだっ た。年代について,保育士群,児相群について,一要因 分散分析を行ったところ,3項目で差がみられたにすぎ なかった。現在の職場の経験年数についても,保育士 群,児相群について,同様に検討を行ったところ,虐待 の認知に有意差がみられたのは,「子どもの高熱を座薬 によって無理に下げ,次の日は幼稚園や学校につれてい

く」(F(7,60)=2.92, <、01)の1項目のみだった。以上

の個人属性要因と虐待認知について,相関分析において も,有意な相関は示されなかった。以上の結果から,個 人属'性によって差が出た項目がわずかにあったが,この 検定結果により,何かを結論づけることは困難であると

考えられた。

(2)専門家と比較した保護者の虐待認知の特徴 専門家と比較した保護者群の虐待認知の特徴を明らか にするため,保護者群,児相群,保育士群の3群につい て一要因分散分析を行い,多重比較には,DunnettのC 検定を用いた(Table3)。なお〆保護者群と児相群の間 に差がみられたのは15項目で,保育士群と保護者群に 差がみられた項目は,1項目だった。

保護者群が,児相群に比べて有意に高く虐待とみなし た項目は,「子どもを叩いたら,あざができた」(F

(2,300)=9.25, <、001),「カラオケなどで遊んでいて,

家に帰らず,小さな子どもの世話をしない」(F(2,300)=

6.58,,<、01),「親が自分の異性体験('性交の様子なども

含む)を,あからさまに子どもに話す」(F(2,299)=

7.95, <、01),「子どもが興味を示していることに,関心 がないので,話しかけてきても,聞き流す」(F(2,296)=

7.67, <、01),といった項目であった。一方,保護者群 が,児相群に比べて有意に低く虐待とみなした項目は,

身体的虐待についてはみられず,「パチンコをしている 間,乳幼児を車の中に残す」(F(2,305)=5.82,p<,01),

「親の性的満足のために子どもに'性器を触らせる」(F (2,305)=5.47, <、001),「『殺してやる』と包丁を子ど もにつきつける」(F(2,298)=21.95, <、001)といった 項目であった。保護者群が保育士群に比べて有意に高く 虐待とみなしたのは,「子どもが興味を示していること に,関心がないので,話しかけてきても,聞き流す」(F (2,296)=5.88, <、001)の1項目だった。

以上の結果から,保護者群は,児相群と比較すると,

即座に子どもに大きなケガや有害な影響をもたらさない 行為を虐待とみなす程度が低いことが示された。その一 方で,児相群と比較して,日常的に行う子どもの世話に 関係する項目は,より高く虐待と認知しやすいことが示 唆された。

(3)保護者群の被虐待経験と虐待認知の関係

保護者群において,被虐待経験と虐待認知の関係を検 討するため,被虐待経験に関する15項目を加算して平 均値とsDを求め,平均点の±lsDを基準として,高群 27名と低群27名を対象に,Welch法を用いたt検定を 行った。その結果,高群と低群との間に差がみられた項 目がなかった。さらに,高群と低群のデータを別々に分 けて,被虐待経験と虐待認知に関する項目を虐待の4類 型に分類して相関分析を行ったが,被虐待経験と虐待認 知との間に関連はみられなかった。

(4)保護者群の育児環境と虐待認知の関係

配偶者および家族からのサポート知覚が虐待認知に及 ぼす影響,育児に関する情報源の多さが虐待認知に及ぼ す影響について検討するため,中央値折半で高群,低群 に分け,Welch法を用いたt検定を行ったところ,いず れの要因においても,差がみられた項目は全くなかっ た。よって,配偶者および家族からのサポート知覚,育 児に関する情報源の多さが虐待認知に及ぼす影響は,明

らかにできなかった。

(5)保護者群の年代と虐待認知の関係

保護者群の虐待認知に影響を及ぼす要因を明らかにす るため,年代を独立変数,虐待認知を従属変数とした分 析を行った。年代と虐待認知について,一要因分散分析 を行ったところ,有意な差が認められなかった。また,

相関分析においても,有意な相関は示されなかった。

考 察

(1)専門家と比較した保護者の虐待認知の特徴

専門家群と比較した保護者の虐待認知の特徴は,即座

78 発 達 心 理 学 研 究 第 1 6 巻 第 1 号

に子どもに大きなケガや有害な影響をもたらさない行為 は,虐待とみなす程度が低いこと,特に軽度の項目にな ると,保護者群や保育士群の虐待認知は,双峰型の分布 に近いものがあり,虐待とみなしやすい人とそうではな い人に分かれ,ばらつきがみられることが示された。逆 に日常的に行う子どもの世話に関係する項目は,専門家 よりも高く虐待と認知されやすかった。福田ほか(1999)

で示されたように,本稿でも虐待は身体的虐待に関する イメージが強く,外傷のない身体的虐待や「思春期の異 性の子どもと一緒に入浴する」といった一部の性的虐待 は,虐待の範晴として認知されにくいという結果が得ら れた。以上の点の考察を試みる。児相群と保護者群・保 育士群の虐待認知の様相が異なったことについて考察す る。まず,各群の虐待認知の観点が異なることが考えら れる。児相群は,虐待事例に関わる立場で虐待を評価 し,措置を検討するため,リスクアセスメントの観点か ら虐待認知を行うと考えられる。一方,保護者や保育士 は,子どもの心身の健全な発達を目指し,子どもの心に 傷を残さないようにする関わりや子どもと自分の関係維 持に破綻をきたさないようにするといった観点から虐待 認知を行うと考えられる。このような観点の違いが,3 群間の違いに反映したと考えられる。また,保護者群に ついては,幼い子ども抱えた保護者が多く,その育児意 識が虐待認知に影響を及ぼしている可能性があり,今後 年齢の高い保護者との比較を行い,子どもの発達に応じ た虐待認知の変化を明らかにする必要がある。

さらに,保護者群が日常的な子どもの世話に関係する 項目について,児相群よりも高く虐待と認知したのは,

望ましいことである。虐待防止の観点からは,児相群が 保護者群より高く認知しているような,即座に子どもに ケガや有害な影響をもたらさない軽微な虐待行為でも,

虐待となり得ることを啓発する必要があると言える。広 岡(1995)によれば,育児の中で起こりやすい軽微な虐 待は,しつけとして正当化されやすく,虐待と認知され にくいと述べられているが,本稿でもこのことが関与し ている可能性があると思われる。

この他にも,児相群では法律上の定義によって判断す るよう研修で訓練されるため,軽微な行為でも高く虐待 と認知する面が強かったが,保護者群にはそのような訓 練がなされていないために,虐待に関する知識の多さや 研修による効果が大きく関与している可能性が示唆され た。早期発見や通告といった認識を高めると同時に,子 どもへの虐待についての認知を高めていくことも必要で ある(益田・浅田,2003)ことが,本稿でも示唆された。

児相群の虐待認知の特徴としては,児童虐待防止等に 関する法律の定義に準拠した認知だった。しかし,欧米 で 性的虐待とされる,思春期の異性の子との入浴といっ た項目は,虐待とみなされにくかった。また,高橋ほか

(1996)と比較すると,現在は虐待の定義が拡大してい るため,本稿の結果では,「パチンコをしている間,乳 幼児を車の中に残す」といった大人の目の届かない状態 での放置を,児相群のほとんどが虐待とみなしていた。

保育士群は,児相群ほど高く虐待とは認知しないが,

概ね保護者群よりは高く虐待と認知していた。保育所は 目下虐待の予防・早期発見の場として期待されている機 関だが,児相群に近いほど敏感に虐待とみなすわけでは ないことが示された。本稿でも,益田・浅田(2003)の 結果同様,保育士群の虐待の認識は必ずしも十分と言え るものではないため,虐待に関する知識からの認知とい うより,項目に挙げられた現象そのものに対する認知が なされたと思われる。保育士群は,いうまでもなく保護 者の代わりに子どもの保育をする,保護者同様,子ども と接する立場である。しかし,保護者群と似た分布の様 相を示す傾向はあるものの,全く同じような分布になら なかったことについて考察を試みると,保育士は育児に 関する専門家であること,子どもに対しては代理人意識 があらわれやすい(大日向,2000)といった特徴が関与 しているものと考えられる。したがって,今後,保育士 に対する予防・啓発教育はさらに必要であり,浸透され る必要があると言える。

なお,本調査では,保護者群の児童虐待の認知を明ら かにすることが主眼であったため,専門家には属性につ いての質問は簡略にとどめた。しかし,専門家も生活者 であり,被虐待経験を持っている可能性があるだけでな く,家族からのサポートの有無といった要因が,仕事に も影響する可能性も考えられるため,今後こういった要 因を加えた検討する必要があるかと考えられる。調査を 行った結果,児相群の男女比は半々だったが,保育士群 や保護者群は女性に偏ったことから,男女比に関して は,専門家と保護者群では比較することはできなかっ た。本稿のように,質の異なる被調査者における群間比 較をする際には, 性差は重要な基礎データでもあるの で,今後,調査する際には,男女比にも配慮する必要が あると言える。

(2)保護者群の虐待認知に及ぼす要因の検討

従来,臨床群における虐待研究で挙げられてきた,保 護者側の虐待認知に及ぼす個人要因(被虐待経験,配偶 者および家族からのサポート知覚,育児の情報源の多 さ,年代群)を検討した。しかし,こういった臨床群で 確認された要因のいずれにおいても差がみられなかっ た。この点について考察を試みると,以下のことが考え られる。まず,被虐待経験であるが,本稿の保護者群 は,臨床群ではなく,有志で調査に回答している一般の 保護者であり,被虐待経験率が低いという点で,先行研 究とは対象者の質が異なる。言うまでないことではある が,この違いが大きく反映したと思われる。それ故に,

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