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5.1 分析操作

水 中 の カ ド ミ ウ ム の フ レ ー ム 原 子 吸 光 法 で の 分 析 操 作 を 以 下 に 示 す 。 分 析 は 、JIS K

0102(1998) 55.1に従って行った。分析フローを図 5-1に示す。

①試料の測定

測定試料をメスシリンダーにて 45mL 分取し、メスフラスコにて 50mL に定容した。

液性は標準系列同様、1M 硝酸酸性とした。なお、測定試料は 5 試料用意し、それぞれ の測定結果の平均値を測定値とした。(試料の加熱・濃縮や溶媒抽出は行なわなかった。)

なお、この操作は分析者が一人であることを前提に以下の評価を行った。

②検量線作成用標準液の調製

・一次標準液(5µg/mLカドミウム溶液)

100µg/mLカドミウム標準液(関東化学製)をホールピペットにて 5mL分取し、メ スフラスコにて 100mLに定容。(1M硝酸溶液)

・検量線作成用標準液

5µg/mL カドミウム溶液をホールピペットにて0、1、2、5、10mL分取し、それぞ れメスフラスコにて 50mLに定溶。(1M硝酸溶液)

図5-1 カドミウム分析のフロー図

5.2 計算式

カドミウム濃度は、以下の式により求めた。

V v

C x ×

×

= ×

33

10 50

10

C :試料中の濃度(mg/L)

x :最小自乗法で得られた検量線 y=a+bxから得られる濃度(μg/50mL)

V :最終液量(mL)

V :試料採取量(mL)

試料分取(Cd2+を5~50μg 含む:最大45mL)

全量フラスコ50mL に移し入れる

硝酸5mL添加 定容 (50mL)

原子吸光光度計で測定

5.3 不確かさの要因と評価方法

(1)不確かさの要因の摘出

水中のカドミウムの分析の不確かさの要因を摘出し、図5-2にまとめた。

図 5-2 カドミウム分析の不確かさの要因

(2)不確かさの要因の整理

これらの要因のうち、検量線の作成は最小自乗法により検量線を求めているため、標 準液の測定におけるばらつき、検量線作成中の感度の変動等要因は、最小自乗法の検量 線から得られる測定結果の不確かさの中に含まれてくる。また、試料の測定における不 確かさの要因もその中に含まれてくる。

以上のような考察から要因を整理し、評価方法も検討した結果を表 5-1にまとめた。

C:Cd濃 度

v: 最終 液量 メ ス シ リ ン ダ ー の 目 盛

採 取 操 作

Xi: 試 料 中 の 濃 度

Cs:検量線作成用 標準液の濃度 ホールピペットの目盛

分取操作

1次標準液の濃度値

定容操作 メスフラスコの目盛

試料測定の繰返し性

メ ス フ ラ ス コ の 目 盛 定 容 操 作

V:試 料 量

ホールピペットの目盛 分取操作

定容操作 メスフラスコの目盛

検量線の作成

標準液測定の繰返し性 標準原液の濃度値

標準液測定の感度変動 試料測定の感度変動

表 5-1不確かさの要因と評価方法

要因 内容 不確かさ

の成分

評価方法

試料採取量 V 試料量の分取 u(V) A:分取のばらつき B:目盛の正確さ 最終液量v 最終液量の定容 u(v) A:定容のばらつき

B:目盛の正確さ 検量線の濃度 Cs 標準原液の濃度 u(Cs) B:メーカーの保証値

希釈操作 A,B:分取のばらつき A,B:定容のばらつき 検 量 線 か ら 読 み 取

った測定値 x

検量線作成 標準液測定 試料測定

u(x) A: 最 小 自 乗 法 に よ る 検 量 線 か ら 得 られる測定値のばらつき

各要因の不確かさの評価方法の詳細は、次のとおりである。

①試料量分取及び最終液量の定容 目盛の正確さ+繰返し精度

目盛の正確さ:メーカーの仕様(器差)(B タイプの評価)

繰返し精度:繰り返し測定(10回)の標準偏差(Aタイプの評価)

②検量線作成用標準液の濃度

濃度値の不確かさ+希釈操作の不確かさ

濃度値の不確かさ:メーカーの濃度保証値(Bタイプの評価)

希釈操作の不確かさ:ピペットの目盛の公差(Bタイプの評価)

ピペットの繰返し測定の標準偏差(Aタイプの評価)

全量フラスコの目盛の公差(Bタイプの評価)

全量フラスコの繰返し測定の標準偏差(Aタイプの評価)

③試料の測定値の不確かさ

最小自乗法による検量線から推定される測定値の不確かさ

5.4 不確かさの評価結果

(1)試料採取量 (V)

試料採取量の不確かさu(V)は、以下のように求めた。

①メスシリンダーの目盛の不確かさu1(V)

不確かさは50mLメスシリンダーの許容誤差から求めた。評価方法は、許容誤差を矩 形分布とした。結果を表5-2に示す。

表 5-2 メスシリンダーの目盛の不確かさ

容量(mL) 50

許容差(mL) ±0.5

評価方法 矩形分布として 0.5/√3 標準不確かさu1(V) (mL) 0.2887

②メスシリンダーによる採取の不確かさu2(V)

不確かさの測定は純水45mLをメスシリンダーで測りとり、別容器にあけて純水の重 量を 10 回の繰り返し測定した。不確かさは、重量を体積に換算して求めた。その結果 を表5-3に示す。

表 5-3 メスシリンダーによる採取の不確かさ

繰り返し性

測定回数 重量 重量-空重量 水温 密度 水量

(mg) (mg) (℃) (g/cm3) (mL)

空重量 0.0000

1 44.6361 44.6361 21.1 0.99797 44.7269

2 44.5820 44.5820 21.1 0.99797 44.6727

3 44.4925 44.4925 21.1 0.99797 44.5830

4 44.6111 44.6111 21.2 0.99795 44.7027

5 44.5877 44.5877 21.2 0.99795 44.6793

6 44.5856 44.5856 21.2 0.99795 44.6772

7 44.6255 44.6255 21.2 0.99795 44.7172

8 44.6105 44.6105 21.2 0.99795 44.7021

9 44.5225 44.5225 21.2 0.99795 44.6140

10 44.6180 44.6180 21.3 0.99792 44.7110

平均値 44.6786

標準偏差 0.04638

③試料採取量の不確かさu(V)

試料採取量の不確かさu(V)は、①と②を合成して求めた。

) ( ) ( )

(

V u12 V u22 V

u = +

(0.2887)

2

+ ( 0 . 0464 )

2 =0.2924

006497

. 45 0 2924 . 0 )

( = =

V V u

(g) (g)

(2)最終液量 (v)

最終液量の不確かさu(v)は、以下のように求めた。

①メスフラスコの不確かさu1(v)

不確かさは50mLメスフラスコの許容誤差から求めた。評価方法は、許容誤差を矩形 分布とした。結果を表5-4に示す。

表 5-4 メスフラスコの不確かさ

容量(mL) 50

許容差 (mL) ±0.06

評価方法 矩形分布として 0.06/√3 標準不確かさu1(v) (mL) 0.03464

②メスフラスコによる定容の不確かさu2(v)

不確かさの測定は純水をメスフラスコの標線まで入れて重量を測定し、空のメスフラ スコの重量との差を求めた。10 回繰り返し測定した。不確かさは、重量を体積に換算 して求めた。結果を表5-5に示す。

表5-5 メスフラスコによる定容の不確かさ

繰り返し性

測定回数 重量 重量-空重量 水温 密度 水量

(mg) (℃) (g/cm3) (mL)

空重量 40.4476

1 90.3332 49.8856 19.6 0.99828 49.9716 2 90.3645 49.9169 19.6 0.99828 50.0029 3 90.3334 49.8858 19.6 0.99828 49.9718 4 90.3491 49.9015 19.6 0.99828 49.9875 5 90.4066 49.9590 19.6 0.99828 50.0451 6 90.3074 49.8598 19.6 0.99828 49.9457 7 90.3466 49.8990 19.6 0.99828 49.9850 8 90.3681 49.9205 19.6 0.99828 50.0065 9 90.3708 49.9232 19.6 0.99828 50.0092 10 90.3563 49.9087 19.6 0.99828 49.9947 平均値 49.9920 標準偏差 0.02686

③最終液量の不確かさu(v)

最終液量の不確かさu(v)は、①と②を合成して求めた。

) ( ) ( )

(

v u12 v u22 v

u = +

(0.03464)

2

+ ( 0 . 02686 )

2 =0.04383

0008766

. 50 0

04383 . 0 )

( = =

v v u

(g) (g)

(3)検量線作成用標準液の濃度(Cs)

検量線作成用標準液は、表5-6 に示すように市販の100mg/Lの標準液を 5mL分取

して 100mL に定容し、この一次希釈液を 0~10mL 分取して 50mL に定容したもので

ある。

表 5-6検量線の作成

これを式で表すと以下のようになる。

一次希釈操作では、

1 0 0

1

×V

= S

S

C C

二次希釈操作では、

2 1 1

1

×

=C C

2 1

1 0 0

v v

V V

×

×

= CS ×

2 2 1

2

×V

=C C

2 1

2 0 0

v v

V V

×

×

=CS ×

2 5 1

5

×V

= C C

2 1

5 0 0

v v

V V

×

×

= CS ×

検量線作成用標準液の濃度の不確かさは、濃度値の不確かさ+希釈操作の不確かさで あり、メーカーの濃度保証値と希釈操作に用いた容器の正確さ及び操作のばらつきから 求めた。

ただし、検量線作成用標準液の濃度の不確かさは、今回は検量線の 5番目の濃度の不 確かさを代表として評価した。すなわち、

2 5 1

5

×V

= C C

2 1

5 0 0

v v

V V

×

×

=CS ×

より、検量線作成用標準液の濃度の相対標準不確かさ u(Cs)/Csは、

希釈操作 分取液濃度

mg/L μg/50ml mg/L ml ml

Cs0 100 - -   -   - - - -

Cs1 5 - 一次希釈 Cs0 V0 5 v1 100

C1 0 0 二次希釈 Cs1 V1 0 v2 50

C2 0.1 5 二次希釈 Cs1 V2 1 v2 50 C3 0.2 10 二次希釈 Cs1 V3 2 v2 50 C4 0.5 25 二次希釈 Cs1 V4 5 v2 50 C5 1 50 二次希釈 Cs1 V5 10 v2 50

目標濃度 分取量 定容量

2

2 2 2

5 5 2

1 1 2

0 0 2

0

0

) ( ) ( ) ( ) ( )

( )

(



 +



 +



 +



 +





= 

v v u V

V u v

v u V

V u C

C u Cs

Cs u

S S

となる。

①100mg/Lカドミウム標準液の相対標準不確かさu(CS0)/CS0

100mg/L カドミウム標準液の許容誤差は1%であった。これを矩形分布と仮定して標

準偏差 u(CS0)/CS0を求めると、表5-7のとおりとなった。

表 5-7 100mg/Lカドミウム標準液の相対標準不確かさ

濃度(mg/L) 100

許容差 0.01

評価方法 矩形分布として 0.01/√3 相対標準不確かさ u(CS0)/CS0 0.005774

②希釈操作の不確かさ

ホールピペット及びメスフラスコの不確かさは、それぞれの蒸留水を用いて実験を行 い、その結果から統計解析により評価した。

ホールピペットの容量の不確かさは、蒸留水を標線まで吸引し、これを別容器に吐出 し重量を測定し、同時に測定した水温により容積に換算した。これを 10 回繰り返し、

得られたデータを統計解析して求めた。

メスフラスコについては、標線まで蒸留水を入れた時の重量を測定し、同時に測定し た水温より容積に換算して行った。測定は 10回行い、その結果を統計解析して求めた。

使用したホールピペット及びメスフラスコの繰返し測定の結果を表 5-8に示した。V0、 v1、V5、v2の不確かさの例として、V0の場合を以下に示す。以下、同様の解析を行い、

それらの結果を表 5-8に併せて示した。

5mLホールピペットで採取した標準液は、今回の実験の測定結果の平均値4.9938mL として調製濃度の計算に用いるのではなく、5.0mLとして用いるので、5.0mLからの差 を誤差と考えて、次の式から不確かさ u(V0)を算出した。

個々の測定値をxi(mL)、計算に使用する容量(=5.0mL)をとすれば、測定結果 の全変動 Sは、次のとおりとなる。

{ ( 5 . 0105 5 ) ( 4 . 9843 5 ) } 0 . 00114148

) ˆ

(

2 2

1

2

= − + + − =

= ∑ ∑

=

L

n

i

i

x

x S

不偏分散 Vは、

000126831 .

9 0 00114148 .

0

1 = =

= − n V S

となり、不確かさ u(V0)は、次式のとおりとなる。

0113 . 0 000126831 .

0 )

(

V0 = V = =

u

となる。V0=5であるから、相対標準不確かさ u(V0)/V0は次のようになる。

00226 . 0113 0 . ) 0 (

0

= V =

u

表 5-8 希釈操作の不確かさ 使用器具

5mL ホールピペット

100mL メスフラスコ

10mL ホールピペット

50mL メスフラスコ

V0 v1 V5 v2

測定値 (mL)

5.0105 4.9922 4.9922 5.0084 4.9883 4.9840 4.9881 4.9930 4.9970 4.9843

99.8800 99.9384 99.9015 99.8880 99.9047 99.9032 99.8902 99.8394 99.8138 99.9280

9.9890 9.9847 9.9923 9.9838 9.9844 9.9867 9.9865 9.9803 9.9781 9.9724

49.9716 50.0029 49.9718 49.9875 50.0451 49.9457 49.9850 50.0065 50.0092 49.9947 平均値(mL) 4.9938 99.8887 9.9838 49.9920 不確かさ u 0.0113 0.1232 0.0180 0.0281 相対標準不確かさ 0.00226 0.001232 0.00180 0.000562

③検量線作成用標準液の濃度の不確かさ

以上の結果から、検量線作成用標準液の濃度の相対標準不確かさ u(Cs)/Csは、次のと おりとなった。

2 2

2 2

2

0 . 00226 0 . 001232 0 . 00180 0 . 000562 00577

. ) 0

( = + + + +

Cs Cs u

= 0.00659

(4)検量線から読み取った測定値(x)

①検量線の作成

検量線の測定データを表5-9に、最小自乗法による検量線の計算を表5-10~表5-12に、

検量線を図 5-3に示した。

検量線は、0 から 50μg/50mL まで 5濃度の標準液を各1回測定を行い、濃度を x、

吸光値をyとし、最小自乗法によりy=a+bxの式に回帰した。

表 5-9 検量線の測定データ

表5-10 最小自乗法の計算1

表5-11 最小自乗法の計算 2

表5-12 最小自乗法の計算3

項目

b a S s2 sb2 sa2 sy/x2 sy/x

Sxy/Sx

yb x

残 差 平 方 和 S/(m-2)

2 2

mSx s

m s Sx

x

2 2

1

2

 

 

 +

s2 s

生 デ ー タ か ら (m=5)

0.006173 -0.002218 2.149E-05 7.164E-06 4.395E-09 2.857E-06 7.164E-06 0.002677

試料

STD1 STD2 STD3 STD4 STD5

合計 平均 調製濃度

0 5 10 25 50 90 18

吸光値

0.00016 0.02874 0.05572 0.15328 0.30661 0.5445 0.1089

Sx2 Sy2 Sxy

平均 平均 分散 分散 共分散

生データから

(m=5) 18 0.1089 326 0.0124277 2.0124716 0.999827045 項目

Rxy=Sxy/( ) 相関係数

x y Sx2 Sy2

試料 STD1 STD2 STD3 STD4 STD5 合計 平均

調製濃度xi 0 5 10 25 50 90 18

吸光値 0.00016 0.02874 0.05572 0.15328 0.30661 0.5445 0.1089

(xi- )2 324 169 64 49 1024 1630 326

(yi- )2 0.01182 0.00643 0.00283 0.00197 0.03909 0.06214 0.01243 (xi- )(yi- ) 1.95733 1.04214 0.42549 0.31067 6.32673 10.06236 2.01247

yi- 0.0023791 8.893E-05 -0.003798 0.0011704 0.0001688 - - (yi- )2 5.66E-06 7.909E-09 1.443E-05 1.37E-06 2.849E-08 2.149E-05 =S

x y

y yi yi x

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