ラクティスの対応」を使ってその事例で活用しているプラクティスを参照されたい。
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4.1. 事例(0): A 社
事例プロフィール
A社事例(1)と同様に広告配信システムの開 発であるが、広告の集め方が異なる点と、
高速かつスケーラブルなサーバクラスタ、
無停止で安全な保守を実現すべく、関与人 数が多くなっている。
自分達に必要なことを行っているだけで、
「アジャイル型開発を実施している」とい う認識はなく、プラクティスとして必要な ものを掻い摘まんで実施している状況であ った。
プロジェクトではなく自社サービスとして 開発を行っているため、「自分達のサービ ス」という意識が強い。
Webサービス開発ではあるが、早期リリー スよりも安定したシステムの提供を重視し ており、保守性を重んじている。
事例タイプ 自社サービス開発 会社タイプ サービス事業者 システムタイプ 広告配信システム
プロジェクト工 数
20人月(初期リリー スまで)
以降も継続中
プロジェクト期 間
6ヶ月(初期リリー スまで)
以降も継続中(2年 経過)
プロジェクト 関与者人数
開発チームは8名
(開発以外を含め ると20名)
開発言語 Java, PHP, Perl
開発拠点 同一拠点
開発手法 Scrum+XP
成功度 4:まだ開発途中だ
が、うまくいきそう な見込みはある 表4 A社事例(0) プロパティ
使用プラクティス群
技術プラクティスを中心に、手法にとらわ れず、その時に必要なものを採用している。
特徴的なプラクティス
日次ミーティング
タスクをチケットとして登録し、それを 見ながら実施。夕方開催している。
組織に合わせたアジャイルスタイル
マネージャ(予算責任)とディレクター
(要件責任)と開発の三者の役割分担、必 要なプラクティスのみ実施
コマンド化されたデプロイ手順を準備。
Jenkinsなどのツールに依存させない
うまくいかなかったプラクティス
リリース計画ミーティング
3ヶ月の大きな目標は共有しているが、
その先は変わっていくので厳密にはして いない。
ペアプログラミング
開発者によりエディタ、キーボードの好 みが違いペアプログラミングしづらかっ た。
受入テスト
検収環境で確認しOKを貰う程度。受入 テストを自動化しようと試みたがツール が不安定でうまくいかなかった。
集団によるオーナーシップ
システム規模が大きくエンジニアも多 いためなんとなく担当が決まっていため、
集団によるオーナーシップを実現するに 至らなかった。
契約形態との関係
自社サービスのため契約は発生せず チーム編成・チームメンバ研修との関係
メンバーはすべて社内で調達した。特に研 修は実施しておらず、自主的な学習に任せ ている。
Copyright © 2013 独立行政法人情報処理推進機構, All Rights Reserved 131 組織的に、技術研修の会場提供を積極的に
実施しており、誘致した研修に社員が参加 することで新しい技術の習得などを促進し ている。
また、社内でのフォーマル/インフォーマル な技術勉強会が活発に行われている。参加 率はフォーマルな勉強会は6割くらい、イ ンフォーマルな勉強会は2割くらいの人が 参加している。
組織の人事考課の評価項目に、技術スキル への取組が含まれている。仕事で作ったも のを評価面談時にデモをしてエンジニアか ら評価される。
技術力を高める仕組みを組織的に整えてい る。
使用ツール
構成管 理
git
IDE / エディ タ
Eclipse、商用IDE、 Emacs
ビルド Make, Maven
CI Jenkins
チケッ ト管理
商用統合開発管理シス テム
その他 -
表5 A社事例(0)の使用ツール
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4.2. 事例(1): A 社
事例プロフィール
広告配信のためのプラットフォーム開発プ ロジェクトの事例である。開発メンバーは 1名でセールス担当と事業マネージャの3 名で進めている。事業の発案や予算コント ロールはマネージャが行い、セールスは広 告代理店との折衝やお金の調整を行ってい る。サービスのビジョンを3人で話し合い ながら進めていった。開発者も広告代理店 に同行し、できるだけ一緒に動いている。
「計画通り作る」のではなく「どうビジネ スを始めていけるか」というビジネスゴー ルを最重視して開発を進めている。
組織的にエンジニアの技術スキルを重視し ており、技術スキルの取組がエンジニアの 人事考課に評価項目に入っていたり、エン ジニア同士のインフォーマルな勉強会の頻 繁な開催が実施されるなど、組織的に技術 力の向上を支援している。
事例タイプ 自社サービス開発 会社タイプ サービス事業者 システムタイプ 広告配信システム プロジェクト工
数 -
プロジェクト期
間 -
プロジェクト 関与者人数
開発1名、セールス 1名、事業マネージ ャ1名
開発言語 Web部分はRuby、 広告部分はFlash (ActionScript)
開発拠点 同一拠点
開発手法 Scrum+XP
成功度 -
表6 A社事例(1) プロパティ
使用プラクティス群
スクラムやXPをベースにしているものの、
手法に囚われずに必要なプラクティスを選 択している。特に技術的なプラクティスを 重要視して実践していた。
プロセスに関するプラクティスも実施はし ているが、技術的プラクティスだけで実施 が手一杯であり、実施の優先度も下がって いるため、プロセスに関して深く実践した り改善したりはできていなかった。
特徴的なプラクティス
イテレーション計画ミーティング
タスクレベルの詳細な計画は作らずユ ーザーストーリーレベルの見積による計 画をしていた。
プランニングポーカー
ストーリーサイズは倍か半分かぐらい のざっくりとした規模で見積した。
スプリントバックログ
最初は付箋で実施していたが、マネージ ャの出張が多いためチケットシステムを 使うようにしたが一度頓挫した。現在は 再度チケット管理システムを利用しはじ めている。
ユニットテストの自動化
サーバ側の自動化と、ローカル側の実行 の両方を実施している。
ユニットテストが常に成功であること を維持するので精一杯だった。
リファクタリング
非常に重視しており、日常的に、手を抜 かずに実施していた。
集団によるオーナーシップ
プロジェクト内外にソースコードを閲 覧可能にしており、プロジェクト外部の 人からレビューや修正パッチが送られて くることもある。
コーディング規約
「Rubyらしいコードを書くように」と だけしている。
うまくいかなかったプラクティス
リリース計画ミーティング
計画通りに行うことではなく、ビジネス として始めていけるかをゴールに設定し ていた。そのためリリース計画を重視し ていない。
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タイムボックス
厳密に実施していない。そのためイテレ ーション中に割り込みがあっても作業を 受け付けるようにしている。
ふりかえり
実施結果をふりかえるだけで、問題や改 善の深堀はしていない。
ファシリテータ
結果的には実施していない。ただ意見と して挙がったのは、最初はファシリテー タの存在、その価値を理解していなかっ たが、実際に開発を進めていく上で、後 になってミーティングの進行などでファ シリテータの有り難さに気づいた。
バーンダウンチャート
利用していたが、更新を怠ってから段々 風化して利用をやめた。
スプリントレビュー
事業マネージャやセールス担当には、機 能ができた時点で随時レビューしてもら っているため、定期的なイベントとして の「レビュー」タイミングは不要であっ た。
インセプションデッキ
書いてはみたが、そこで終わってしまっ た。
共通の部屋
各自の席は近くだが、チーム毎に集まっ て座っているわけではない。
持続可能なペース
持続可能なペースを尊重しながらも必 要な場合は休日出勤も厭わない。
受入テスト
受け入れ項目は「広告がでているか」と いうレベルで手動確認に留まる。
契約形態との関係
自社サービスのため開発についての契約は 存在しない
チーム編成・チームメンバ研修との関係
開発者は1人のため、特に研修は行われて はいない。組織としてインフォーマルに技 術者同士の交流を持ち、技術的スキルを向 上させる機会が多かった。
使用ツール
構成管 理
git
IDE / エディ タ
NetBeans
ビルド Make, Maven
CI Jenkins、Guard14
チケッ ト管理
付箋
商用統合開発管理シス テム
その他 インテグレーション環 境をクラウドサービス 上に仮想環境を構築し その上で実現
表7 A社事例(1)の使用ツール
14 https://github.com/guard/guard
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4.3. 事例(2): B 社
自社サービスをアジャイルで開発する事例 である。案件に応じて開発手法を選択する のではなく、アジャイル型開発ができる案 件を選んでいる。
事業部としてアジャイル型開発に取り組ん でいる。アジャイル型開発は、成果物を見 ながらフィードバックしていくため、経営 層にも注目を浴びている。アジャイル型開 発を社内で目立たせるために、受託開発で はなく自主開発を選んでいる。
当事例は、スマートフォン向けのメールク ライアントを提供する。チームでサービス を検討しながら実施している。
事例タイプ 自社サービス開発 会社タイプ サービス事業者 システムタイプ スマートフォン用
クライアント プロジェクト工
数 24人月
プロジェクト期
間 6ヶ月
プロジェクト
関与者人数 4人
開発言語 Java
開発拠点 同一拠点で同一フ ロア
開発手法 Scrum+XP
成功度 4: かなりの部分で うまくいった 表8 B社事例(2) プロパティ
使用プラクティス群
アジャイル型開発にフォーカスし、スクラ
ム + XPで実施している。
教科書通りのプラクティスの実施というよ りも、自分達の現場の状況に合うように、
独自の工夫をしているものが多かった。
またチームはプロダクトオーナーはいるも のの、開発者がかなりの部分でプロダクト オーナー的な責務を支援しており、一般的 なスクラムよりも、プロダクトオーナーと 開発者の境界はゆるくなっている。
特徴的なプラクティス
イテレーション計画ミーティング
プロダクトオーナーが多忙なため、チー ムメンバーが交代でプロダクトオーナー の責務をサポートしながら実施している。
ユーザーストーリーやペルソナ/シナリ オ法、インセプションデッキなどを試し ている。優先順位付けもチーム内で行っ ている。
イテレーション
最初は二週間であったが、ビジネス的に スピード感が足りず一週間に変更した。
その結果サービス企画へのフィードバッ クも迅速にできた。
イテレーション計画ミーティング
タスクを洗い出す際には、全員でタスク を出すのではなく、ストーリーごとに人 が分かれ、分担してタスクを洗い出し、
最後に集まって過不足タスクをチェック すことで時間短縮した。
プロダクトバックログ(優先順位付け)
プロダクトオーナーが多忙なため、チー ムメンバーが交代でプロダクトオーナー の責務をサポートしながら実施している。
優先順位付けも開発者が行っている。
アジャイルコーチ
社内のアジャイルコーチを中心として、
各チームのスクラムマスターが集まって
「スクラムマスター道場」と呼ばれる勉 強会を開催している。
日次ミーティング
朝だけでなく、夕方も実施している。朝 はプロダクトオーナーも含めてチーム全 員で実施し、夕方は開発者のみ集まり問 技術的問題点を解決するために実施して いる。
ふりかえり
KPTを中心に実施している。活気を維 持するために、笑いが起こるような話題 を意図的に含めていた。
バーンダウンチャート
メンバーがもちまわりで記録して日次 ミーティング(朝)で確認している。