全日本鹿協会会長
全日本鹿協会会員である北泉開発株式会社(代表取締役社長曽我部喜市)が、鹿牧場と鹿肉を食材 とする有効活用事業に取組んでいる 5 年余の活動実績概要を紹介する。
牧場だより
1.養鹿事業の概要
阿寒町は道内でも有数のエゾシカ越冬地のため、
農林業の被害が増大し、毎年多くの鹿の駆除を行っ ている。これらの鹿を地域の産業として有効に利用 することが地域経済の活性化に貢献できるとの考え から、当社は平成 16 年より事業を開始した。事業 の流れとしては、生体捕獲 ― 養鹿牧場 ― 地域資源 活用センター(屠畜場)― 食肉加工センター(阿寒グ リーンファーム)という流れである。
阿寒国立公園内の、前田一歩園財団の生体捕獲場 で捕獲されたエゾシカ(日本鹿)は、北泉開発㈱養 鹿牧場において一時飼育された後、地域資源活用セ ンターで屠畜され、㈲阿寒グリーンファーム運営の 食品加工センターで商品化している。又、一時飼育 鹿は、肉質が向上、均一で高品質な肉質となり、付 加価値の高い鹿肉を提供できる。
2.養鹿場の概要
北泉開発㈱には2つの牧場があり、第一養鹿場は 平成 16 年 11 月に開場し、5 ha の面積に、高さ 2.8m の鉄製網で周囲を囲っている。鉄製網の延長は 950 m、
場内の設備として、門扉 3 箇所、牧場内管理道路 950 m、給餌舎 3 棟、屋外給餌場 2 箇所、乾草ロー ル入れ 5 箇所等を設備している。給水は湧き水が小 川となって流れている。その他に 1ha の草地を有し
ている。
第二養鹿場は平成 18 年 3 月に完成、4.8ha の面積 を有し、高さ 2.8m、延長 900m の鉄製網で囲われ ている。設備として、追込み柵、給餌舎 2 棟、屋外 給餌場 1 箇所、乾草ロール入れ 4 箇所を整備してい る。
尚、全国からの鹿牧場と養鹿事業の視察者が多く、
牧場開設からの内訳は、①官公庁 85 件 ②道内外 一般者 75 件 ③業者 68 件 ④マスコミ(報道機関)
45 件 ⑤大学、研究機関 41 件である。
3.養鹿部門
平成 17 年度からの養鹿頭数と狩猟鹿受入れ、屠 畜頭数等の概要は下記の通りである。
1)年次別頭数
2)鹿牧場、飼育鹿の鹿肉栄養成分調査概要
北泉開発㈱の鹿牧場(場長小肩誠一牧)は、「飼 育鹿の給餌方法と給餌場所」、「親鹿と鹿の生理」、
単位:頭 年 度 平 成
17年度 18年度 19年度 20年度 21年度 養牧頭数 218 459 661 230 285 屠畜頭数 211 358 582 130 122 狩猟頭数 400 500 500 260 328 処理頭数 611 858 1,082 390 450
単位:頭 年 度 平 成
17年度 18年度 19年度 20年度 21年度 養牧頭数 218 459 661 230 285 屠畜頭数 211 358 582 130 122 狩猟頭数 400 500 500 260 328 処理頭数 611 858 1,082 390 450
牧場風景とモニターによる管理
北海道阿寒町 北泉開発㈱の養鹿事業の紹介
「飼料の消化と栄養調査」等の調査研究を行い鹿産 物の生産性向上に積極的に取組んでいる。
鹿肉の成分調査では、一般成分が、11 頭の供試 したエゾシカの雄雌の推定年齢を考慮せず、捕獲し た 5 月、8 月及び 11 月の各試料の平均値成績が、水 分は 71.5%から 76.1%、タンパク質は 22.1%から 25.7 %、 脂 質 は 0.5 か ら 2.7 %、 ま た 灰 分 は 1.1 か ら 1.2%であったと記録している。
又、各個体における背最長筋の一般分析は、3 箇 所間(肩側部、中央部及び腰側部)で少し違い(5 月タンパク質では 22.1 と 25.2%、また 11 月の脂質量 では 1.2 と 2.5%)もみられたが、全体では箇所によ る顕著な差はなかった。
季節変動では、脂質量が 5 月から 8 月にかけて増 加し、11 月に減少する傾向が観察された。一方、
水分についてはそれとは逆の変動傾向がみられ、肩 側部では 5 月から 8 月にかけて低下し、腰側部にお いても有意に変動した。灰分については、明確な季 節的な変動は観察されなかった。なお、5 月に捕獲 された個体では、内臓脂肪や皮下脂肪がみられなか っ た が、8 月 に 採 取 で き た 3 頭 に は 腎 臓 重 量 の 19‑135%、また 11 月に採取できた 2 頭には腎臓重量 の 95‑375%の腎臓周囲脂肪がそれぞれ得られた。
4.製造部門
製造部門は、「有限会社 阿寒グリーンファーム」
が担当、職務分担を明確にし、解体加工現場は、衛 生設備を完備し、北海道の衛生マニュアルに基づき、
品質管理はトレサビリテイーを実施して、安全安心 をモットーとした運営に努めている。
設備内容としては、①1次処理室(26m2)は、 狩
猟と体を天井に吊り上げ剥離開腹して、全体洗浄、
鹿肉熟成保管の設備である。② 2 次処理施設室は、
コンテナ冷蔵庫(14.55m2)③ 3 次処理施設室は、
(19.5m2)処理工程の熟成個体の部位別解体〈部位 別脱骨処理と整型処理〉、部位別真空パック処理、パ ック品の冷凍保管である。④ 4 次処理室(25.25m2) からなっている。
肉加工状況は、 ロースやヒレばかりでなく部位に 応じた商品を開発している。
生肉及び加工品の製品としては、ヒレ、ロース、
バラ、モモ肉、肩肉、スネ肉、ネック肉などがある
5.販売部門
生肉及び加工品は、スライスまたはブロック肉と して大手ホテル、レストラン、焼肉店等に出荷して いる。また、個人向け商品としては、しゃぶしゃぶ、
すき焼き、竜田揚げ、から揚げ用として真空パック 後に急速冷凍(アルコール凍結)処理をして販売を 行っている。
◎生産された鹿肉の商品と主な取引先
主な供給先は、地元 26.2%、道内 49.4%、道外 24.4%となっており、ホテル関係 13.5%、レスト ラ ン 15.2 %、 食 品 会 社 15.9 %、 食 堂・ 焼 肉 店 26.5%、その他(イベント)11.9%となっている。
6.むすび
エゾシカ産業が確立されることは、地元の資源や 生産物が道内外で消費されることで地域経済に貢献 し、また雇用を増やし全体の経済効果を挙げる。
北海道が推奨している「産消協働」運動において
枝肉カット処理
消毒装置
も、地域循環を高めることにより、生産波及効果、
付加価値効果が生じ、またその効果が一次産業から 加工業、流通業、外食産業とすべての産業に及びつ つあり、今後の地域資源活用と消費拡大が期待され る。
冬 季 夏 季
鹿 牧 場 鹿肉店 鹿肉製品