(1)目的
中学生に園芸療法的な教育的効果をもたらす学習プログラムを開発するためには、
多様な中学生の実態を知る必要がある。ここでは、周辺環境の異なる3中学校の生徒 の植物意識に違いがあるかどうかを検討することを目的とした。
(2)対象および調査時期
A中学校は、神戸市の山間部に開けた新興住宅地を中心とする地域であり、親が教 育熱心であり、勉強に対する関心が高い。B中学校は、神戸市の西に位置し、古くか ら開けた田園の広がる農耕地域で、地域に密着した行事等も多く、部活動もさかん な学校である。C中学校は、海岸に臨む高台を中心にした住宅地で、古くからの居住 者と最近の新築マンション増加に伴う外部からの転居者が混在する地域である。
調査対象はすべて平成21年度中学1年生で、A中学校262名(男子141名、女子 121名)、B中学校168名(男子88名、女子80名)、C中学校132名(男子66名、
女子66名)を用いた。を中心とした調査を平成21年度6月に実施した。
(3)調査内容
資料3に示すアンケート用紙を用いて調査を行った。
(4)結果
居住形態と家族構成および植物に対する意識の一部について、回答した各選択肢の 割合を示したのが、図Ⅲ-1、図Ⅲ-2、図Ⅲ-3である。それぞれ、A中学校、B中学校、
25 C中学校のものを示す。
図Ⅲ-1 A中学校における調査結果
26
A中学校1年生では、居住環境としては半分強が一戸建てで、また、家族構成は 80%以上が核家族である。
教室に花があることでの癒しについては、50%弱が「すごく癒し」「ときどき癒し」
と答えており、癒しを感じている。やや女子の方が癒しと感じる割合が多い。学校の 花を見て、癒しを感じるかどうかについては、全体としては60%以上が「すごく癒し」
「ときどき癒し」と答えており、この項目も女子の方が癒しと感じる割合が多い。
植物を栽培している生徒の約60%が「よくする」または「ときどきする」と答えて おり、世話は比較的していることがわかる。これも女子の方が癒しと感じる割合が高 い。家の花を見た癒しについては、約60%以上の生徒が「すごく癒し」または、「とき どき癒し」と答えており、家の花を癒しと感じていることがうかがえる。これも同様 に女子の方が癒しの割合が高い。
公園の花を見た癒しについては、約50%が「すごく癒し」または、「ときどき癒し」
と感じており、家の花を見ての割合よりは低いが、公園の花を見て癒しと感じている。
これも女子の方が癒しの割合が高い。
花束をもらっての癒しについては、今まで以上に癒しと感じる生徒の割合が高く、
約80%を占め、特に女子の癒しと感じる割合が男子に比べて顕著に高い。
次に、悲しいとき、さびしいときに花を見ての癒しについては、全体の50%弱が「す ごく癒し」または、「ときどき癒し」と答えており、この項目も女子の方が癒しの傾向 が高い。花の色に関しては、男女差が見られ、特に赤、青は男子が好み、ピンクは、女 子が好む傾向が見られた。
B中学校の居住環境は、A中学校とは異なり、80%以上が一戸建てであり、また、
核家族が70%とその割合がA中学校より少ない(図Ⅲ-2)。
教室に花があることの癒しについては、「すごく癒し」「ときどき癒し」を含めると
約40%で女子の方が癒しを感じる生徒が多いのは、A中学校の傾向と似ている。また、
学校の花を見ての癒しについては、「すごく癒し」「ときどき癒し」を含めて50%をや や下回った。女子の方が多い傾向は同様である。
植物の世話については、「よくする」「ときどきする」が40%を下回った。また、公 園の花を見ての癒しについては、30%を少し上回る程度であった。この項目について は男女差が見られない。
花束をもらっての癒しについては、「すごく癒し」「ときどき癒し」を合わせると約
27
65%で多く、女子の方が明らかに癒しと感じる生徒が多い。また、悲しいとき、さび しいときに花を見ての癒しについては、「すごく癒し」「ときどき癒し」を合わせて約 30%を上回る程度であった。
図Ⅲ-2 B中学校における調査結果
C 中学校の居住環境は、A 中学と同様、一戸建てと集合住宅が半々である。家族構 成は、80%以上が核家族である(図Ⅲ-3)。
教室に花があることでの癒しは、「すごく癒し」「ときどき癒し」を含めて40%を切
28
っていてA中学校に比べると少ない。しかも、女子より男子の方が多く、A中学校と はちがう傾向になっている。また、学校の花を見ての癒しについては、40%を下回り、
これも男子の方が多い傾向が見られた。
図Ⅲ-3 C中学校における調査結果
家の植物の世話については、約35%で女子の方が「よくする」「ときどきする」をふ くめて男子よりやや多い。公園の花を見ての癒しについては、これも約35%でA中学 校を下回り、女子より男子の方が癒しを感じている傾向は他の項目と似ている。
29
花束をもらっての癒しについては、「すごく癒し」「ときどき癒し」をあわせて 55%で半分を上回り、女子の方が男子よりも癒しを感じている。また、悲しいとき、
さびしいときに花を見ての癒しについては、約 35%でこれも女子の方が多い傾向で、
この2つの項目は、A中学校と同様の傾向といえる。
次に、植物に対する意識の学校間差を調べるため、6、7、9、10、11、12の項目に ついては、もっともポジティブである(4点)から、もっともポジティブでない(1点)
に変換し分析を行った。
中学校(3)を1要因とした分散分析を行ったところ、学校間に有意な差は見られな
かった(F(2,15)=2.68, p=.101)が有意傾向に近い値が得られた。