つぎに,彼らが抱える精神的負担の大きさと,両親のそれとがどう関係して いるかを見ていく。母親および父親が
IES-R
でハイリスク者であるケースとそ うでないケースとにわけて,それぞれのケースが子どもの精神的状態にどう関 係しているかを見ていくのである。まず母親についていうと,母親がハイリスクである子どもの総数17,その うち7−18歳の子どもがハイリスクであるのは11であり,母親がハイリスク でない子どもの総数6,うち子どもがハイリスクであるケースは0である(図
⑰‑1)。0という数字があるので,前者の後者に対するオッズ比は無限大∞
図⑯‑2 身体的な将来不安とハイリスク者数(7−18歳)
11 17
6
0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 母親がハイリスク
母親が非ハイリスク
子どもがハイリスク 子どもが非ハイリスク 人
5 15
16
0 2 4 6 8 10 12 14 16 母親がハイリスク
母親が非ハイリスク
子どもがハイリスク 子どもが非ハイリスク
人
(95%CI[1.617,∞],p値1.373%)となり,p値も目安となる5%以下なの で,両者のあいだに有意で非常に強い相関があることがわかる。母親の精神的 状態と子どもの精神的状態とのあいだには,きわめて緊密な相関性があること が確認されたのである。
おなじことを事故当時7歳未満であった子どもについても見ていく。母親が ハイリスクであるケースは15あり,そのうち子どもがハイリスクであるのは 5である。母親がハイリスクでないケースは16あり,そのうち子どもがハイ リスクであるのは0である(図⑰‑2)。前者の後者に対するオッズ比は無限大
(95%CI[1.392,∞],p値1.767%)であり,p値も1%以下なので,7歳未 満の子供についても有意で非常に強い相関が確認されている。
図⑰‑1 母親と7−18歳の子どものハイリスクとの関係
図⑰‑2 母親と7歳未満の子どものハイリスクとの関係
3
3
6
6
0 2 4 6
父親がハイリスク
父親が非ハイリスク
子どもがハイリスク 子どもが非ハイリスク
人
3
2
15
11
0 2 4 6 8 10 12 14 16 父親がハイリスク
父親が非ハイリスク
子どもがハイリスク 子どもが非ハイリスク
人
父親と子どもの関係についても同様に見ていく。7−18歳の子をもつ父親の うち,ハイリスク者6であり,うち子どもがハイリスクになっているケース は3,父親が非ハイリスク者であるケースは6で,そのうち子どもがハイリ スク者であるケースは3である(図⑰‑3)。前者の後者に対するオッズ比は1
(95%CI[0.092,10.881),p値100%)であり,父親が
PTSD
のハイリスク 者であるか否かは子どものそれにほとんど関係していないことがわかる。7歳未満の場合についても見ていくと,父親がハイリスク者であるケースは 15,うち子どもがハイリスク者であるのは3であり,父親がハイリスク者でな いケースは11,うち子どもがハイリスク者であるのは2である(図⑰‑4)。前
図⑰‑3 父親と7−18歳の子どものハイリスクとの関係
図⑰‑4 父親と7歳未満の子どものハイリスクとの関係
25.0% 29.2%
0% 20% 40% 60% 80% 100%
全くない ほとんどない たまにある つねにそう思っている 20.8% 25.0%
者の後者に対するオッズ比は1.120(95%CI[0.14410.732],p値100%)とな るので,父親の精神状態は子どものそれとほとんど関係がないことがわかる。
日常つねに接している母親と子のあいだの精神的な影響関係の強さに比して,
父親と子のあいだの精神面での影響関係はそれほど強くないことがこの分析か ら判明したのである。