壊し費用
全壊世帯 のうちの取 り壊し割合
ケース1 世帯数
ケース2 世帯数 泥モルタル組積造 21,000 20% 94,805 31,266 20% 145,959 113,792 セメント組積造 54,000 40% 7,285 62,472 40% 10,633 6,536
RC 300,000 80% 5,291 202,660 80% 4,694 1,626
竹/木材 NA NA NA 23,009 20% 5,428 2,950
その他 NA NA NA 27,622 20% 720 572
この世帯あたり取り壊し費用及び世帯数を用いて復興必要額を算出したのが表 70 である。全 壊世帯数が大きいケース 1 では PDNA の約 118%となっているのに対して、ケース 2 ではほぼ同 等(PDNA の約 98%)の復興必要額となっている。
表 70:PDNA住宅復興必要額とHRHRS結果に基づく額の対比
(筆者作成)
費用項目
PDNA HRHRS
ケース1 ケース2 世帯当たり費
用(NPR) 世帯数 合計
(百万NPR)
世帯当たり費
用(NPR) 世帯数 合計
(百万NPR) 世帯数 合計
(百万NPR) 再建及
び修復
住宅再建 (一世帯当たり
450平方フィート) 405,000 609,938 247,025 405,000 792,987 321,160 604,943 245,002
修復 121,500 256,697 31,189 121,500 29,254 3,554 217,298 26,402
小計 278,214 324,714 271,404
解体
低強度組積造(泥モルタ
ル) 21,000 94,805 1,991 31,266 145,959 4,563 113,792 3,558
セメント組積造 54,000 7,285 393 62,472 10,633 664 6,536 408 コンクリートフレーム構造
(RC) 300,000 5,291 1,587 202,660 4,694 951 1,626 329
竹/木材 23,009 5,428 125 2,950 68
その他 27,622 720 20 572 16
小計 3,972 6,324 4,379
がれき 処分
低強度組積造(泥モルタ
ル) 8,000 474,025 3,792 8,000 729,797 5,838 568,960 4,552
セメント組積造 20,000 18,214 364 20,000 26,583 532 16,341 327 コンクリートフレーム構造
(RC) 250,000 6,613 1,653 250,000 5,868 1,467 2,032 508
竹/木材 8,000 27,141 217 14,751 118
その他 8,000 3,598 29 2,859 23
小計 5,810 8,083 5,527
解体及びがれき処分のための資材
費 160 160 160
仮設住宅費用 24,540 609,938 14,968 24,540 792,987 19,460 604,943 14,845 集団移転費用 22,254 10,525 22,254 10,525 22,254 10,525
小計 313,648 369,266 306,841
住宅再建に関する研修・ファシリテ
ーション・品質管理 2.5% 7,841 2.5% 9,232 7,671
文化遺産地区を含めた都市計画
策定 2.0% 6,273 2.0% 7,385 6,137
合計 327,762 385,883 320,648
このように PDNA と HRHRS を比較したとき、被害額の差がかなり大きい(ケース 1:171%、ケース 2:136%)のに比べ、復興必要額はそれほどの差は生じなかった。この理由としては、被害額では PDNA の被災住宅数(特に全壊)が HRHRS よりもかなり少なくなっていたのに加えて、最大多数を
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占める泥モルタル組積造住宅の平均面積も小さく設定されたことが特に影響している。他方、復 興必要額では PDNA では全壊戸数の約 1.2 倍を再建世帯数として推定していたため、結果として それほどの差が生まれなかった。なお、被災住宅数と被災世帯数の関係としては、HRHRS の結果 では実際にさほど差がなかったことがわかっている。以上により判明した検証結果をまとめる。
●被害額推定では、PDNA は実際の住宅被害額を過少評価していたことがわかった(対ケース 1 比で約 59%、対ケース 2 比で約 74%)。被災住宅数のうち全壊戸数が PDNA ではかなり低く推定 され(同約 63%、約 82%)、単位額も大多数を占める泥モルタル及びセメント組積造とも PDNA で 用いられた数値が実際よりも低かったことが影響している。
●ただし、被災住宅数については、HRHRS を鵜呑みにした場合(ケース 1)、ほとんど半壊住宅が 存在せず(全戸調査を行った甚大被害 11 郡の約 76 万世帯中で 2.9%)、明らかに不自然な被災 分布となっている。多くの住宅(甚大被害 11 郡の約 76 万世帯中で約 16.6%)が、被害度 3 のうち 再建または大規模修復が必要(被害度 3-2)と判定されており、特に当該カテゴリーの住宅の被害 度判定結果には疑義がある。
●なお、被害度 3-2 のすべてを全壊ではなく半壊とした場合(ケース 2)、特に復興必要額につい て PDNA とほぼ同程度の算定結果となることが分かった(表 71)。
表 71:PDNA及びHRHRSに基づく被害額及び復興必要額の対比
(筆者作成)
PDNA HRHRS(ケース1) HRHRS(ケース2)
被 害 額
被災住宅数 全壊 全住宅種別合計 498,852 792,987 604,943 半壊 全住宅種別合計 256,697 29,254 217,298
単位額
(NPR/世帯)
全壊
泥モルタル組積造 420,000 625,310 セメント組積造 1,080,000 1,249,440
RC 6,000,000 4,053,200
半壊
泥モルタル組積造 42,000 59,745 セメント組積造 108,000 130,596
RC 6,000,000 346,780
総額(百万NPR) 350,540 597,568 475,504 復
興 必 要 額
住宅再建数 全壊 全住宅種別合計 609,938 792,987 604,943 半壊 全住宅種別合計 256,697 29,254 217,298 単位額
(NPR/世帯)
全壊 全住宅種別合計 405,000 405,000 405,000 半壊 全住宅種別合計 121,500 121,500 121,500 総額(百万NPR) 327,762 385,883 320,648 5. 1. 5 住宅再建支援金制度(HRP)
ここまで見てきたとおり、PDNA による被害額推定及び復興必要額算定(2015 年 6 月)が公表さ れた後、半年以上の準備期間を経て住宅再建登録調査(HRHRS)が開始され(2016 年 1 月)、そ の第一フェーズ(総数 788,889 世帯)がほぼ完了した 2016 年 5 月ごろから本格的に住宅再建支援 金制度(HRP)が開始された。ネパール地震復興おいて採用された住宅再建支援手法は、2005 年 パキスタン地震復興で世界銀行等が実施した手法にならったものとされている 76。なお、PDNA 当 初、世帯当たり支援金額は 200,000NPR とされていたが、その後 2017 年 1 月に 300,000NPR への 増額がネパール政府により決定された。
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表 72:住宅再建支援金制度(HRP)の概要
(CBS(2017a)77をもとに筆者訳)
実施機関 責任機関:復興庁(NRA)
実施機関:都市開発省(MoUD)、地方連邦開発省(MoFALD)
基本ポリシー ●社会的・技術的な支援、研修、ファシリテーションを受けつつ、ネパール建築基準(NBC)による耐 震強度に関する検査結果に応じた段階的な現金支給を得ながら、所有者主体で建設されること。
●資金源にかかわらず、各支援機関が等しく責任を共有しながら、ネパール政府の包括的なガイダ ンスに基づく統一的かつシンプルな再建及び復旧ポリシーを適用する。
●安全な住宅建設のための持続可能な技術者ストックを創出し、コミュニティが将来なるべく外部か らの技術支援に依存しなくてもよいようにする。
●利用可能で廉価で文化的にも適切な材料及び建設手法を用いた環境にやさしい耐震安全建築 基準、デザイン及び建築手法をアップデートし普及する。
●元地の損失や脆弱性により移転が必要な場合を除き、原則として同じ場所に再建する。移転が必 要な場合は、政府が土地を提供する。
●あらゆる過程において、効果的なコミュニケーション及び調整を行って、現場での現実に適応・対 応するためのメカニズム及びプロセスを実現するためのフィードバックを行う。
●透明性、公平性及び受益者満足度に関する第三者モニタリング及び評価を行う。
技術基準 ●社会的及び環境的な基準に適合しつつ、ネパール建築基準及び安全な建築方法に関するミニマム・
リクワイヤメントに基づく。
表 73:HRPによる支援金配布の仕組み
(CBS(2017a)77をもとに筆者作成)
対象者(HRHRSでの評価結果) 金額 支給条件
再 建 支 援 金
①被害度5
②被害度4
③被害度3かつ技術的対策として
“再建”または“大規模補修”が必要とさ れた世帯(被害度3-2)
第一トランシェ: 50,000NPR 世帯主が安全な住宅を建設することにつ いて政府と合意(契約)を交わした後に支 給される。
第二トランシェ: 80,000NPR
のちに150,000NPRに増額
プリンス(床)まで完成し技術検査に合格 した後に支給される。
第三トランシェ: 70,000NPR のちに100,000NPRに増額
屋根下の水平補強バンドまで壁が完成し 技術検査に合格した後で支給される。
補 修 支 援 金
①被害度3かつ“小規模補修”が必 要とされた世帯(被害度3-1)
②被害度2かつ“大規模補修”が必 要とされた世帯(被害度2-2)
第一トランシェ: 50,000NPR 世帯主が住宅修復または補強について 政府と合意(契約)を交わした後に支給さ れる。
第二トランシェ: 50,000NPR 修復または補強を完了し技術検査に合 格した後で支給される。
5. 1. 6 HRPの実施状況
このような制度設計のもと開始された HRP であるが、実施状況は決して順調とはいえない。これ までの支給世帯数の推移は図 41 及び表 74 のとおりである。まず、受益資格者数の推移であるが、
2016 年 9 月ごろまで HRHRS フェーズ 1 対象世帯のみ(主として甚大被災 11 郡)が対象とされ、
表 57 で見たとおり全壊数 586,500 世帯に対して、約 533,000 世帯とされた。この差については、
HRHRS では全壊とされた世帯でも、①元の所在地の郡外に移転する世帯、②公共の土地、政府 の土地または森林に建設されていた住宅の所有世帯、③所有者が海外在住または地震以前に 死亡している世帯などで親戚や相続人による承継手続きが未了な世帯、④すでに住宅再建した 世帯で安全基準に適合しないものなどは、対象外とされたことが理由と考えられる。なお、土地所 有率については、調査対象世帯中では約 96%(甚大被災14郡)とされている77。
次に契約者数であるが、これはエンロールメントという合意文書の取り交わし手続きを完了した 世帯数である。各地方自治体(市または村落開発委員会)の主として中心地にあらかじめ日時を
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告知した上で有資格者と各地方自治体の責任者が契約を取り交わすなどして(エンロールメント・
キャンプ)契約が締結された。この契約が取り交わされれば、契約者の指定口座に第一トランシェ(
50,000NPR)が振り込まれる。このため、契約者数と第一トランシェ受給者数はほぼ同数となってい る(2017年9月時点で支給率99%以上)。他方、第二トランシェ及び第三トランシェの支給率は極め て低い数字にとどまっている。すでに見た通り、支給額30万NPRは、PDNAでの想定世帯当たり復 興必要額40.5万NPRに満たず、さらにトランシェ支給方式により被災世帯による金銭的な持ち出し が基本的に必要になっている。金銭的及び労務的な負担能力が乏しい被災世帯は再建に取り掛 かることができない状況になっていることがこの一因と考えられる。
この受給済世帯数をもとに住宅再建支援金の支給済額を推定したものが表 75 である。実際に は、支援金支給のための間接経費(住民啓発、石工トレーニング、検査エンジニア・トレーニング、
エンジニア庸人費など)が 10%~20%必要とされている82。つまり、総額約 480 百万ドル程度の支 出がなされていることになる。しかし、すでに第四章で見たとおり、表 76 のような復興支出(コミット メント済額)が計上されており、まだその半分程度しか支出できていないことがわかる。
図 41:住宅再建支援金の支給世帯数の推移
(MOF(2017)69公開データをもとに筆者作成)