前章において不動産の属性に対する価格および賃料の弾力性又は変化率を議論したが、
この章では不動産ポートフォリオを不動産の属性のポートフォリオと捉えるための基礎資 料を提供するために、不動産の属性がポートフォリオに与える影響について議論すること とする。
ポートフォリオのある不動産の属性はポートフォリオ内の各不動産のその属性の集合で あり、その不動産の属性がポートフォリオに影響を与えることになる。
4-1 不動産の属性がポートフォリオに与える影響に関するモデル
建物所有面積、築年数等の数値で示され価格又は賃料等の効果を弾性値の形で示される 不動産属性と地域属性など
0
か1
のダミー変数で示される属性ではポートフォリオに与え る影響の捉え方が異なると考えられるので、別々に議論することとする。(1)価値又は賃料に対する効果が弾性値の形で示される不動産属性の効果
不動産属性がポートフォリオに与える効果の検討方法には、①不動産属性をみるとき属 性もポートフォリオと捉えてポートフォリオの
j
属性(x
jh=属性の加重平均)をJ-REIT
が保有する不動産の属性の加重平均として、ポートフォリオの
j
属性(x
jh)のポートフォリ オに与える影響を検討する方法、②単純にJ-REIT
が保有する不動産の属性がポートフォリ オに与える影響の加重平均として検討する方法がある。これらについて説明する。
1)ポートフォリオの
j
属性のポートフォリオに与える影響不動産の
j
属性はh J-REIT
のポートフォリオのj
属性(x
jh)として次のように表される。
3
1 1
k n
i
h kh h i k ji h
j
k
PO x P
x
(4.1)
なお、
k
は不動産のタイプを示し、1がオフィス、2が住宅、3が商業不動産である。n
kがk
タイプの不動産の数であり、P
ikhはh J-REIT
保有のk
タイプのi
番目の不動産の価値で、
PO
hはh J-REIT
のポートフォリオ全体価値である。そして、x
kjihはh J-REIT
保有のk
タイプの
i
番目の不動産のj
属性を示す。90
3
1 1
h n
i kh i h
k
P
PO
したがって、1
3
1 1
h
n
i h kh i
k
PO
P
(4.2)
(4.2)式から(4.1)式は h J-REIT
のポートフォリオの属性(x
jh)がh J-REIT
保有の不動産の属性(
x
hji)の加重平均になっていることが分かる。前章のモデルが対数線形モデルであるので、
h
タイプのi
番目の不動産の価値(P
ih)は 次のように表される。k j m
j kh ji k j k k
kh ji n
j Dm r h Dm
k
i
e x
P
1
1 0 0
(4.3)
なお、
Dm
kはk
タイプ不動産ダミー、Dm
kjihは地域属性など属性がダミー変数の形で示さ れるものであり、h J-REIT
保有のk
タイプのi
番目の不動産のj
ダミーである。そして、m
は ダミーの数である。x
kjihは建物所有面積、築年次、PML
値など数値で表される属性であり、h J-REIT
保有のk
タイプのi
番目の不動産のj
属性を示す。そして、nは属性の数である。
0、
0k、 r
jk、
kjは第3
章で分析したk
タイプの不動産の価格又は賃料モデルの偏回帰 係数を示すものであり、
0は基準としたオフィスモデルの定数項で、
0kはk
タイプ不動産ダミーの基準となるオフィスモデルの定数項との差、したがって、
0
0kがkタイプの不
動産モデルの定数項となる。 r
jk はk
タイプの不動産モデルのj
ダミーの偏回帰係数、
kj はk
タイプの不動産モデルのj
属性の偏回帰係数である。ポートフォリオの属性(
x
1 )の変化をみるために(4.1)式を全微分すると次のようになる。
3
1 1
h n
i
h kh h i k ji k
j
k
PO dx P x
d
(4.4)
1
3
1 1
h n
i h kh i k
PO
P
であるので、dx
1j1h dx
1j2h dx
2j1h dx
2j2h dx
3j1h dx
3j2h
で あるとすれば、次の関係が成立する。1
,
hj kh h ji
j kh
ji
x d x dx d dx i
k
(4.5)
次に、
h J-REIT
のポートフォリオのj
属性(xjh)のポートフォリオ全価値(PO
h)に与91
える影響は、
PO
hをx
jhによって偏微分することによって明らかになる。
31 1
h n
i
h j kh ji kh ji kh k i h j
j
h k
x x x P x
PO
(4.6)
(4.6)式を弾力性の形に変換するために、(4.6)式の両辺に
h h j
PO
x
を乗じると(4.7)式のように なる。
3
1 1 h
n
i h
j kh ji kh ji h j h kh k i h j
h j h j
h k
x x x x PO
P PO
x x
PO
(4.7)
(4.5)式の 1
h j kh ji
x
x
を(4.7)式に代入すると(4.7)式は4-8
式のようになる。
3
1 1 h
n
i kh
ji h j h kh i k h j
h j h j
h k
x x PO
P PO
x x
PO
(4.8)
(4.8)式の意味は、 h J-REIT
保有の各不動産のj
属性(x
kjih)の第3
章のモデルの偏回帰係数の単純な加重平均ではなく、価値で加重した数値に平均との比( h
k ji h j
x
x )を乗じたもので加
重した平均となっている。すなわち、
h J-REIT
のポートフォリオのj
属性(h
x
j )に対する ポートフォリオ全価値(PO
h)の弾力性は平均より小さいものほど弾力性の効果が大きく なる。これは、築年数で説明すると築年数が小さい不動産の1
年経過することによる築年 数の変化率は築年数が大きな不動産より大きくなるので、価値の変化が大きくなり、ポー トフォリオに与える影響が大きいことになる。すなわち、築年数が小さな不動産(新しい 不動産)が保有不動産の多くの割合を占めるJ-REIT
はそれ以外のJ-REIT
に比べ築年数がポ ートフォリオに与える影響が大きいことを意味する。また、駅までの距離又は都心までの 距離で説明すると、最寄り駅に近い又は都心に近い不動産が保有不動産の多くの割合を占 めるJ-REITはそれ以外のJ-REIT
に比べ駅距離又は都心までの距離がポートフォリオに与え る影響が大きいことを意味する。2)J-REITが保有する不動産の属性がポートフォリオに与える影響の加重平均
不動産属性のポートフォリオに与える影響を
J-REIT
が保有する不動産の属性がポートフ92
ォリオに与える影響の加重平均と捉える場合を検討する。
h J-REIT
保有のk
タイプのi
不動産のj
属性のポートフォリオの価値に与える影響は(4.9)式で示される。
kh ji kh k i h j k ji
h
x P x
PO
h kh k i h j kh ji kh ji h
PO P PO
x x
PO
(4.9)
(4.9)式の h J-REIT
保有のk
タイプのi
不動産のj
属性のポートフォリオの価値に与える影響を集計したものが不動産の
j
属性のポートフォリオの価値に与える影響は(4.10)式のよう に示される。
3 1 1 3
1 1 h
n
i h
kh k i k j
n
i h
kh ji kh ji
h k
k
PO P PO
x x
PO
(4.10)
(4.10)式は不動産の j
属性のポートフォリオの価値に与える影響はJ-REIT
保有のk
タイプの
i
不動産のj
属性に対する価格又は賃料の弾性値の不動産の価値に着目した加重平均とし て示されることを意味している。(2)地域属性などダミー変数で示される属性のポートフォリオに与える影響 次にダミー変数で示される属性(例えば地域属性)を考えてみよう。
地域属性などダミー変数で示される属性の場合、ダミー変数が
0
か1
であるので微分可 能ではなく数値で示される属性と同じように議論することはできない。ポートフォリオの 属性値としてダミー変数の平均値をとると、ダミー変数とは異なる連続変数( 0 , 1
)となること、
(4.8)式と同様な式を導出すると h J-REIT
保有のある不動産の値が0
となるとき、ゼロ割になり効果を算出できないことから前項の①の方法を採用することはできない。した がって、前項の②の方法のみを採用することとする。
ダミー変数で示される
h J-REIT
保有の不動産のj
属性(Dm
kjih)において0
から1
に変化 したときの効果は微分の形で表現しておくと次のようになる。kh i k h j k ji h
P r Dm
PO
h kh h i k ji k h j kh ji kh ji h
PO Dm P PO
Dm Dm
PO
(4.11)
(4.11)式の h J-REIT
保有のk
タイプのi
不動産のj
属性のポートフォリオの価値に与える影響を集計して、不動産の
j
属性のポートフォリオの価値に与える影響は(4.12)式のように示 される。
3 1 1 3
1 1 h
n
i h
kh h i k ji k j k
n
i h
kh ji kh ji
h k
k
PO Dm P PO
Dm Dm
PO
(4.12)
93
(4.12)式の意味は 0
か1
であるj
ダミー(Dm
kjh)を乗じてダミー変数の偏回帰係数を加重平均することによって、ダミー変数の形で示される属性によるポートフォリオ全体の変化 率を示している。
4-2 不動産の属性がポートフォリオに与える影響の推計
(4.8)式、 (4.10)式及び(4.12)に基づき、第 3
章のオフィスモデル、住宅モデル、商業モデルの結果を使って、不動産の属性の各
J-REIT
のポートフォリオに与える影響を検討してみよ う。なお、ここでは(4.8)式及び(4.12)の結果を主として説明する。(4.10)式に基づいて検討し た結果は付録A
の表に示す。まず、価格モデルの分析結果の偏回帰係数を用いて(4.8)式及び(4.12)式の計算方法で不動 産の属性の
J-REIT
のポートフォリオ6に与える影響を検討する。不動産の属性は弾力性でみ る「建物所有面積」「築年数」「駅距離」「実効容積率」「PML」の5
つ属性と変化率でみる ダミー変数の「都心5
区」「用途」の2
つ属性で合計7
つの属性を用いて検討する。都心5
区の係数は前章の加重平均によって求めた係数を用いる。用途の検討方法は用途を全てプ ーリングしたことを想定して、オフィスを基準として、住宅サンプルと商業サンプルの定 数項の差(オフィスの定数項との差)を加重平均したものを算定しポートフォリオに対す る影響をみるといった方法を用いる。その結果は表4-1
に示す。6 J-REITのポートフォリオのデータは2015年12月31日までの各J-REIT保有の総標本2863サンプルから オフィスの767サンプル、住宅1343のサンプル、商業の342サンプル、合計2452サンプルを抽出して対 象とする。本論文はオフィス、住宅、商業についてそれぞれ回帰分析を行ったが、物流、ホテル、ヘルス ケア、その他の不動産については分析行わなかったのでそれらの回帰係数を用いて属性のポートフォリオ に与える影響を検討することができないため、物流、ホテル等411サンプルを除外する。対象銘柄は52銘 柄のうち40銘柄である。
94
表 4-1 価格モデルの係数を用いた 4.8 式及び 4.12 式の検討結果
表
4-1
の不動産の属性の弾力性と変化率を一緒に比較できないため、表4-1
の各属性の係 数は平均“0”、標準偏差“1”にすることにより標準化する。標準化したものは表4-2
に示 す。標準化した表4-2
に基づいてレーダーグラフを書いて各J-REIT
の属性のポートフォリ オの価値に与える影響をみる。なお、グラフで効果の大きさを示す場合、「築年数」「駅距証券
コード 投資法人名 建物所
有面積 築年数 駅距離 実効容
積率 PML 都心5区 用途 8951 日本ビルファンド投資法人 1.0566 -0.0939 -0.1348 0.1063 -0.2165 0.1580 0.0000 8952 ジャパンリアルエステイト投資法人 1.0927 -0.1125 -0.1068 0.0926 -0.2008 0.2051 0.0000 8953 日本リテールファンド投資法人 2.8686 -0.0352 0.0058 0.2254 0.0352 0.1162 2.6739 8954 オリックス不動産投資法人 1.2416 -0.0706 -0.1444 0.1697 -0.0901 0.1582 0.6687 8955 日本プライムリアルティ投資法人 1.0320 -0.0656 -0.0965 0.1131 -0.1249 0.1917 0.6204 8956 プレミア投資法人 1.4761 -0.0557 -0.0771 0.0599 -0.0911 0.1644 0.1536 8957 東急リアル・エステート投資法人 1.0028 -0.0693 -0.0658 0.1296 -0.0717 0.4304 1.1604 8958 グローバル・ワン不動産投資法人 1.1652 -0.0788 -0.1162 0.1116 -0.1161 0.1845 0.0000 8960 ユナイテッド・アーバン投資法人 1.0995 -0.0438 -0.0606 0.1932 -0.0979 0.0675 1.3872 8961 森トラスト総合リート投資法人 1.2486 -0.0724 -0.2469 0.1382 -0.1181 0.2763 0.6639 8963 インヴィンシブル投資法人 1.1574 -0.0521 -0.0402 0.1060 -0.0362 0.0543 0.5167 8964 フロンティア不動産投資法人 1.7878 -0.0398 0.0056 0.2205 0.0338 0.0515 2.6739 8966 平和不動産リート投資法人 1.0843 -0.0572 -0.0638 0.0511 -0.0971 0.1153 0.2194 8968 福岡リート投資法人 1.3441 -0.0361 -0.1835 0.2802 -0.0455 0.0000 1.7557 8972 ケネディクス・オフィス投資法人 1.0942 -0.0885 -0.1076 0.1009 -0.1527 0.1954 0.1567 8973 積水ハウス・SI レジデンシャル投資法人 1.2827 -0.0530 -0.0221 0.0746 -0.0237 0.0461 0.5845 8975 いちごオフィスリート投資法人 1.0530 -0.0826 -0.1419 0.1252 -0.1391 0.1756 0.2715 8976 大和証券オフィス投資法人 0.8930 -0.0882 -0.0999 0.0932 -0.1869 0.2653 0.0000 8977 阪急リート投資法人 0.7516 -0.0380 -0.0338 0.2817 -0.0301 0.0816 1.9991 8979 スターツプロシード投資法人 1.0913 -0.0732 -0.0237 0.0023 -0.0229 0.0154 0.4031 8982 トップリート投資法人 1.1817 -0.0589 -0.1273 0.1239 -0.1221 0.2219 0.4779 8984 大和ハウスリート投資法人 1.2471 -0.0545 -0.0296 0.0023 -0.0356 0.0680 0.4031 8986 日本賃貸住宅投資法人 1.0557 -0.0709 -0.0186 0.0021 -0.0194 0.0348 0.4031 8987 ジャパンエクセレント投資法人 1.1065 -0.0888 -0.1085 0.0917 -0.1299 0.1239 0.0264 3226 日本アコモデーションファンド投資法人 1.0619 -0.0442 -0.0193 0.0024 -0.0450 0.0729 0.4031 3227 MCUBS MidCity投資法人 1.2647 -0.0644 -0.0842 0.1299 -0.1175 0.0294 0.3369 3234 森ヒルズリート投資法人 0.7731 -0.0822 -0.1023 0.0818 -0.5187 0.3168 0.2182 3269 アドバンス・レジデンス投資法人 1.1419 -0.0514 -0.0212 0.0021 -0.0200 0.0647 0.4031 3278 ケネディクス・レジデンシャル投資法人 1.0516 -0.0478 -0.0271 0.0022 -0.0220 0.0626 0.4031 3279 アクティビア・プロパティーズ投資法人 0.9818 -0.1099 -0.0221 0.1283 -0.0497 0.4580 1.4603 3263 大和ハウスリート投資法人 0.6404 -0.0223 0.0067 0.1679 0.0404 0.0000 2.6739 3282 コンフォリア・レジデンシャル投資法人 1.0130 -0.0518 -0.0180 0.0021 -0.0175 0.0829 0.4031 3290 SIA不動産投資法人 0.9511 -0.0704 -0.0753 0.1018 -0.1416 0.0400 0.1684 3292 イオンリート投資法人 0.6381 -0.0329 0.0065 0.1967 0.1439 0.0000 2.6739 3295 ヒューリックリート投資法人 0.9075 -0.1312 -0.0798 0.1030 -0.1819 0.2506 0.5732 3296 日本リート投資法人 1.0780 -0.0770 -0.1009 0.0940 -0.1236 0.1751 0.1096 3298 インベスコ・オフィス・ジェイリート投資法人 1.1336 -0.0766 -0.1194 0.1134 -0.1379 0.1191 0.0000 3451 トーセイ・リート投資法人 1.1309 -0.0620 -0.0556 0.0558 -0.0680 0.0681 0.5453 3309 積水ハウス・リート投資法人 0.9510 -0.0632 -0.0903 0.1614 -0.2247 0.0000 0.0000 3453 ケネディクス商業リート投資法人 0.8662 -0.0273 0.0116 0.2706 0.0245 0.0513 2.6739