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下部及び中部更新統

ドキュメント内 地域地質研究報告 (ページ 36-50)

(下司信夫・竹内圭史)

5. 1 研究史及び概要

 本図幅地域の下部及び中部更新統は,本図幅南西部か ら「軽井沢」図幅内にかけて分布する下部更新統の小根 山層,図幅西縁部から「軽井沢」図幅内にかけて分布す る下部更新統の菅峰火山岩類と,本図幅中心部に広く分 布する中部更新統の古期榛名火山噴出物からなる.菅峰 火山岩類と古期榛名火山噴出物の鞍部には,湖成層を主 体とする中部更新統の萩生層が分布する.

 本地域西部に分布する下部更新統の火山岩類の地質 は,太田(1957)や荒牧(1968)によってまとめられた.

その後,野村・海老原(1988),金子ほか(1989),久保 ほか(1993)による年代測定や古地磁気測定などにより その年代や層序関係が明らかにされた.中村(2005)は 菅峰火山岩類の火山構造を明らかにした.

 榛名火山の地質は岩崎(1896),大島(1986),早田

(2000),中村(2005)などによってまとめられている.

大島(1986)は榛名火山の形成史を 5 期に区分し,多数 の火山体のユニット名を提唱した.また中村(2005)は 古期榛名火山の成層火山体の内部構造について議論し,

榛名カルデラ付近を中心とする環状の割れ目群とそれに 沿って貫入・噴出した貫入岩体・溶岩の存在を提唱した.

 榛名山西麓に分布する湖成層は矢口(1989),矢口ほ か(1992)によって区分され,挟在するテフラからそ の層序及び年代が明らかにされた.群馬県自然環境課

(2008)はこの湖成層を一括して萩生層とし,その分布 や層序を記載した.

5. 2 小根山層(Ky)

地層名 群馬県地質図作成委員会(1999)は,安中市松 井田町小根山付近に分布する,安山岩質の溶岩及び同質 の火山角礫岩からなる火山噴出物を小根山層とした.

模式地 「軽井沢」図幅内の安中市松井田町小根山付近.

層序関係 安中層群板鼻層や霧積層を不整合で覆う.

分布 小根山層は,「軽井沢」図幅内の安中市坂本東方 の小根山森林公園周辺から,「富岡」図幅内の安中市松 井田町土塩付近にかけての稜線上に分布する.本図幅内 では図幅南西部の稜線沿いにわずかに分布する.

岩相及び構造 本図幅範囲内の小根山層はその大部分が 扇状地性の礫層からなる.安中市松井田町五料の標高 600 m 付近では,南東に緩く傾斜した,最大直径 30 cm

の安山岩亜円礫を主体とする円礫‑亜円礫層が露出する.

礫は含かんらん石斜方輝石単斜輝石安山岩からなり(第 5. 1 図),一部のやや赤色酸化した礫も含まれる.基質 はやや固結した火山砂〜シルトからなる.

地質年代 群馬県地質図作成委員会(1999)は,小根山 層は鼻曲火山を構成する鼻曲層と同時異相であるとし,

その年代を前期‑中期更新世とした.野村・海老原(1988)

は「軽井沢」図幅内の鼻曲層に相当する剣の峰層の溶岩 から,1.04 〜 0.90 Ma の K-Ar 年代を報告している.こ れらから,本層の形成年代は前期‑中期更新世と考えら れる.

5. 3 菅峰火山岩類(Kp)

地層名 太田(1957)は,吾妻川南岸の長野原町と東吾 妻町の境界周辺の山地に分布する火山岩類を菅峰溶岩と 呼んだ.中村(2005)は菅峰‑温川上流部付近を中心と する侵食された成層火山体を復元し,これを菅峰火山と 定義した.本報告では中村(2005)による菅峰火山を構 成する火山岩類を,菅峰火山岩類と呼ぶ.

模式地 「軽井沢」図幅内の菅峰付近.

層序関係 菅峰火山岩類は,本図幅北側に隣接する「中 之条」図幅内で,鮮新統の火山岩類を覆う.本図幅地域 の菅峰火山岩類は東に緩やかに傾斜し,古期榛名火山噴 出物に覆われる.

分布 本図幅西端部から「軽井沢」図幅内の群馬県・長 野県境の山地に分布し,菅峰,浅間隠山(1,757 m),笹 塒山(1,452 m)などを形成する.

岩相及び構造 本図幅範囲内の菅峰火山岩類はその大部 分が扇状地性の火山礫層からなる.本図幅西縁部の高 崎市倉渕町川浦坊峰の標高 800 m 付近では,最大直径 30 cm の輝石安山岩の亜円礫を主体とする礫層が露出す る.菅峰火山の噴出中心は「軽井沢」図幅内の吾妻町須 賀尾付近と考えられ(中村,2005),この地域では,菅 峰火山岩類に貫入する多数の安山岩岩脈や貫入岩体が分 布する.噴出中心に近い菅峰周辺や笹塒山付近(いずれ も軽井沢図幅内)では,厚さ最大 150 m の輝石安山岩溶 岩が多数発達する.また,溶岩塊を多量に含む火砕流堆 積物が広く分布する(第 5. 2 図).一方,火山体周辺部 分では,円磨された火山礫層が主体となる.

地質年代 金子ほか(1989)は,「軽井沢」図幅内の笹 塒山南方の川浦付近の溶岩から 0.97 ± 0.05 Ma の K-Ar 年代を報告している.久保ほか(1993)は,「軽井沢」

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第 5. 1 図 小根山層に含まれる安山岩礫の顕微鏡写真

安中市五料付近.ol:かんらん石,cpx:単斜輝石,pl:斜長石.写真の横幅 2.7 mm.GSJ R94156.

第 5. 2 図 菅峰火山岩類の火砕流堆積物

固結した火砕流堆積物.発泡の悪い安山岩角礫を多量に含む.「軽井沢」図幅内の,笹塒山北方約 1.5 km の林道沿い.左側のスケールは長さ 1 m.

図幅内の温川上流の溶岩流が逆帯磁していることを報告 し,また同地点の溶岩流から 1.1 ± 0.4 Ma,0.9 ± 0.2 Ma の K-Ar 年代を報告している.これらから,菅峰火山の 活動は前期更新世であると考えられる.

5. 4 古期榛名火山

 榛名火山は底面の直径約 25 km,最高点(掃部ヶ岳)

標高 1,449 m の大型の成層火山で,その基底は北側を吾 妻川,東側を利根川,南側を烏川によって区切られる.

榛名火山は侵食の進んだ成層火山体と,その山頂部に噴 出した溶岩ドーム群からなる.成層火山体の山頂部には 東西約 3 km,南北 2 km の小型のカルデラ地形(榛名カ ルデラ)が認められる.

 榛名火山はその構造から,侵食の進んだ成層火山であ る古期榛名火山と,山頂部の榛名カルデラの形成期以降 の新期榛名火山に大別できる.古期榛名火山は約 50 万 年前頃から活動を開始し,約 24 万年前頃まで活動した と考えられる.その後,約 20 万年間の活動の休止期を はさみ,約 5 万年前から新期榛名火山の活動が開始した と考えられる.

 古期及び新期榛名火山の地質は岩崎(1896),森山

(1971),大島(1986),早田(2000),中村(2005)など によってまとめられている.

5. 4. 1 古期榛名火山噴出物(Ohv, Ohl)

地層名 本報告では,榛名火山を構成する成層火山体の うち,榛名カルデラの形成以前に噴出した溶岩流及び火 砕物からなる噴出物を,古期榛名火山噴出物と呼ぶ.本 層は,大島(1986)の第Ⅰ期〜第Ⅲ期の活動で形成され た火山体に,また中村(2005)の古榛名火山の火山体の うち溶岩流及び火砕岩を主体とする部分に相当する.

模式地 榛名山山頂部の榛名神社付近及び掃部ヶ岳山頂 付近.

層序関係 本図幅東半部では本層の基底はほとんど露出 していないため,その基盤岩の詳細は明らかではない.

わずかに,榛名白川源流部には中新世のガラメキ層が分 布しており,古期榛名火山噴出物はその上位を不整合で 覆っているのが確認できる.本層は榛名山の山頂部に分 布し,山麓部に向かって後述する古期榛名火山扇状地堆 積物に漸移する.本層はその上位を新期榛名火山噴出物

(白川火砕流堆積物,榛名富士・相馬山・水沢山・二ッ 岳溶岩ドーム群)に覆われ,一部では貫入されている.

分布 榛名山のおおむね標高 700 m よりも山頂側の地域 に,榛名カルデラを取り囲むように分布する.榛名山西 部では掃部ヶ岳,杏が岳などの榛名カルデラの外輪山を 構成する.東部では,榛名湖北岸から伊香保温泉・船尾 滝付近に分布する.山麓部の古期榛名火山扇状地堆積物 とは同時異相であり,両者の関係は指交関係にある.本

報告では,榛名山中腹以上の地域で,安山岩溶岩を伴う 部分を古期榛名火山噴出物とし,それより山麓部に分布 する,主に火砕流堆積物及び土石流堆積物からなり,全 体として扇状地地形を形成する部分を古期榛名火山扇状 地堆積物とした.

岩相及び構造 古期榛名火山の噴出中心は,後述する放 射状岩脈群の分布から現在の榛名湖南部に存在したと 考えられる.古期榛名火山噴出物は,少量の薄い(厚 さ 2 〜 3 m)溶岩流を挟む火山角礫岩を主体とする部分

(Ohv)と,厚い安山岩溶岩を主体とする部分(Ohl)に 区分できる.前者は火山体中心部に当たる榛名湖を中心 とした地域に分布するのに対し,後者は主に古期榛名火 山の山体上部に分布する.

 本層を構成する火山角礫岩(Ohv)は掃部ヶ岳山頂部 や榛名神社参道に模式的に露出する.古期榛名火山を構 成する火山角礫岩は,無層理・塊状で,最大直径 20 cm 大の安山岩角礫と同質の基質からなる(第 5. 3 図).本 層の火山角礫岩はしばしば弱く溶結し,赤色酸化を被っ ている.榛名カルデラ南東部の磨墨峠付近には,黒色の 安山岩スコリアを主体とする,強く溶結したアグルチ ネートが分布する.黒色スコリア質の火山弾同士が強溶 結し,部分的には溶結レンズ構造が発達する.スコリア 質火山弾の内部はしばしば暗赤色に酸化している.石質 岩片はほとんど含まれない.本層を構成する火山角礫岩 層中には,しばしば厚さ数 m の塊状の安山岩溶岩が挟 まれる.これらの安山岩溶岩は上下の火山角礫岩とほぼ 同質の輝石安山岩からなり,しばしば強溶結火砕岩に漸 移する.このような特徴から,本層を構成する火山角礫 岩や溶岩は,火口近傍に堆積した火砕丘を構成する堆積 物であると考えられる.

 古期榛名火山の山体上部には,火砕物と互層する厚い 安山岩溶岩流が発達する(Ohl).溶岩流の厚さはさま ざまであるが,30 m 以上の層厚を持つ溶岩も見られる.

南山腹の李が岳,天狗山,榛名湖北方の烏帽子ヶ岳など には,侵食に強いこれらの安山岩溶岩が突出する.

 榛名カルデラ南縁を構成する天目山は,輝石安山岩の 溶岩ドームである.また,天目山を構成する溶岩の全岩 化学組成は,そのほかの古期榛名火山噴出物の組成に比 べてやや SiO2が高く,古期榛名火山噴出物と新期榛名 火山噴出物の中間的組成をもつ(第 5. 5 図).このこと から,天目山を構成する溶岩は古期榛名火山の活動の末 期に噴出したと考えられる.大島(1986)は天神峠‑天 目山南麓‑榛名峠付近に南縁が存在する 氷室カルデラ を想定し,天目山はその中に形成された後カルデラ期の 火山体とした.ここでは,大島(1986)による 氷室カ ルデラ 縁は地形的に不明瞭であること,またその カ ルデラ縁 が噴火活動によって形成されたとする積極的 な証拠がないことから,特に 氷室カルデラ の名称を 使用しない.

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ドキュメント内 地域地質研究報告 (ページ 36-50)

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