4-1. 背景
半導体製造工程におけるSMによるAl配線中のボイド形成は、LSIデバイスの信頼性にお いて主要な問題の1つである。これまで多くの研究によりこの問題が調査され、その現象や 原因が明確化されてきた[1、2]。その調査は、150~175℃の低い温度の保存試験でのボイド 発生メカニズムと広い温度範囲、特に> 300℃の高い温度における発生メカニズムである。
Al配線が CVD 酸化膜により被膜する時、CVD 酸化膜は300℃以上の高温で成膜され室温 に戻る。Al配線の熱膨張係数はCVD酸化膜の熱膨張係数よりも高いため、冷却過程でこの 大きな熱膨張係数のミスマッチから大きな熱応力が発生する。即ち、Al配線のボイドはCVD 酸化膜のウェハープロセス条件に依存する。しかし、SMは、TiやWなどの高融点金属膜 による多層膜化や少量の銅のAl中への添加により抑制できる[3-4]。更にCVD 酸化膜の成 膜温度の低温化や成膜時間を短くすることで残留応力を低減させることも SM 対策の 1 つ になる。
本章では、5μm以上の幅の広いAl配線での高温プロセス(> 300℃)工程で発生するSM による新たなボイド発生メカニズムを明らかにする[5]。
4-2. 実験方法
Al配線のボイドは、Al膜の成膜条件、下層バリア膜、上層 CVD酸化膜に依存すること が知られており、今回は Table 4-1 に示す評価サンプルを作成した。6 インチ Si 基板上に NSG/BPSG 膜を成膜した後、Al膜を成膜しパターンニングを行った。Al配線構造は下層 からTiN/Al-1% Si-0.5 % Cu/ARC-TiNの積層構造で、膜厚はそれぞれ40 nm/660 nm/30 nmである。Al配線の下層バリア層のTi膜は、Si基板とのコンタクト部分の低抵抗化の目 的で窒素雰囲気中でRTA処理30秒を行ったため、Ti膜はTiN化している。Al膜は、スパ ッタ方式により 150℃の低温プロセスで成膜した。上層のARC-TiN膜は反応性スパッタ法 で成膜し、その上層には、PE-TEOS法により500 nmのTEOS酸化膜を成膜した。評価サン プルは、RTA処理の有無、RTA処理温度(760℃と810℃)、PE-TEOS膜成膜温度(330℃と 390℃)などを組合せ、全部で6サンプルを作成した。Alボイドの形成と観察は顕微鏡型加 熱装置(ジャパンハイテック社製10016)を用いた。直径10mmのサンプル加熱用カップを光 学顕微鏡ステージに設置する事で追加の熱処理を行いながら最大1000倍の倍率でボイドの 形成過程を観察できる。詳細なボイド形状等については、上層膜をRIE装置(日本サイエン テフィック社製ES317)でエッチングした後SEM(日本電子社製JSM7800)観察等を行っ た。Al膜の結晶性やグレインサイズ、Siノジュールの測定には、SEM-EBSD法(TSLソリ
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ューションズ社製OIM)やFIB(SII社製SMI8002)観察を用い、下層TiN膜評価にはXRD 法(リガク社 Smart Lab)を用いた。膜応力測定には薄膜応力測定装置(KLA Tencor 社製 FLX-2320-S)を用いた。
Table 4-1. Evaluation sample condition and void observation results.
4-3. Al 膜中ボイドの特徴
一般的なSMによる細いAl配線エッジ部に発生するノッチ型ボイドをFig. 4-1に示す。
ノッチ型ボイドは、熱応力緩和のためAlの結晶粒界に沿って発生している。
Fig. 4-1. Notch type void at narrow Al metal line by low temperature mode stress migration.
一方、今回、発生メカニズムを調査したAl配線内部やエッジ部に見られたボイド例をFig.
4-2-1に示す。ボイドは、5 μm以上の幅の広いAl配線でのみ発生し、Al結晶粒界に沿った
スリット状では無く、その大きさは様々であり、大きいものでは、直径が3 μm程度に至る ものも存在した。更にSiノジュールがボイド内に存在する特徴がある。次に別のタイプの
ボイドをFig. 4-2-2に示す。このボイドはFig. 4-2-1のボイドとは異なり、大きさが更に大
きくなり 5 μm以上に達するものもある。その形状から複数のAlグレインが関係している
ことと Al 膜表面が変化していることが特徴である。SEM-EDX分析からこのボイド内にも Si ノジュールの存在が確認できた。最後にFig. 4-2-3にエッジ部に発生したボイドを示す。
1μm
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スリット状ボイドや配線内部に伸びる様なボイド等も観察されているが、エッジ部のボイ ドではSiノジュールは、観察されなかった。Fig. 4-2-4にはボイドの断面SEM写真を示す。
ボイドの大きさは約2 μmと大きく、ボイド中心付近にSiノジュールが存在している。尚、
今後、Fig. 4-2-1に示した多角形型のボイドでAl表面の変化を伴わないボイドをAタイプ ボイドと呼び、Fig. 4-2-2に示した Al表面の変化を伴うボイドをBタイプボイドと呼ぶ。
Fig. 4-2-3の配線のエッジ部に発生するボイドはCタイプボイドと呼ぶ。
Fig. 4-2-1. Polygon type void without the surface deformation (It will be referred to as the A-type void).
Fig. 4-2-2. Void accompanied with deforming the surface of Al (It will be referred to as the B-type void).
1μm
1μm
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Fig. 4-2-3. The Void formed at the edge of Al line (It will be referred to as the C-type void).
Fig. 4-2-4. Cross-sectional SEM observation result of the void
4-4. Al 膜中ボイドの観察
450℃ 15 分の追加熱処理後のボイド観察結果を Fig. 4-3 に示す。ボイドは昇温時には発 生せず、450℃に達した直後にボイド形成が始まり、降温時にもボイドの増加や減少は見ら れなかった。Fig. 4-3に示す様にボイドはサンプル2、4,6のみ発生した。Aタイプボイド、
B タイプボイド、C タイプボイドの全てのボイドが、上層 TEOS 酸化膜成膜温度 330℃の サンプル6で最も多く発生し、次に上層TEOS成膜温度が390℃で下層バリアTi膜のRTA 処理温度が760℃のサンプル2で多く、RTA処理温度が810℃のサンプル4ではボイドの発 生は少なくなった。この様に、Aタイプボイド、Bタイプボイド、Cタイプボイド形成には 上層のTEOS酸化膜と下層バリアTi膜のRTA温度が影響していた。
5μm
0.5μm
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Fig. 4-3. The number of the voids of each sample condition after the additional heat treatment at 450 ℃ for 15 min.
次にボイドの形成が450℃保持状態でのみ観察されたため、サンプル2、4、6の追加熱処 理温度とその保持時間とボイド数の変化を調査した結果をFigs. 4-4、4-5に示す。Fig. 4-4に 示す様に、追加熱処理時間1分の場合、360℃ではボイドが発生せず420℃以上でボイドが 発生しボイド数は熱処理温度に依存し増加したが、サンプル1ではA タイプボイド、Bタ イプボイドともに発生しなかった。熱処理時間が1 分であっても上層 TEOS 酸化膜成膜温 度330℃のサンプル6でボイドの発生が顕著であった。次にFig. 4-5に示す様に、追加熱処 理時間を30分に延ばすとボイドの発生温度は 360℃まで低下し、低温でも長時間ストレス が掛かり続けるとボイドが発生し始めることからこのボイドの形成がクリープ現象の可能 性があることが分かったが、ボイド数が時間に依存して増加する傾向に無く、逆に上層 TEOS酸化膜成膜温度が330℃のサンプル6ではボイド数が減少する傾向が見られた。更に サンプル1では、追加熱処理時間を長くしてもAタイプボイド、Bタイプボイドともに発 生しなかった。この様に各ボイドは追加熱処理温度が安定した直後に発生し始め、時間経過 とともにボイドの形状は変化するが、新たなボイドの発生は見られないことから、ボイド発 生箇所は追加熱処理状態中に形成るのでは無く、追加熱処理以前にボイドの起点はすでに 決定されており、下層バリアTi膜の特性と関係しながら他のボイド形成要件が揃った箇所 から順次発生するものと考えられる。Fig. 4-5に示したサンプル6の熱処理温度が480℃で 各ボイド数が減少したのは、Al の熱膨張により一部の箇所でボイドの形成が抑制されたも のと考えられ、サンプル 6 はボイドが成長するための起点となる要因が他のサンプルに比 べ揃い易いと考えられる。
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Fig. 4-4. The relationship between the additional heat treatment and the number of voids with samples 1, 2, 4, and 6 (additional heat treatment time of 1 min).
Fig. 4-5. The relationship between additional heat and number of voids with samples 1, 2, 4, and 6 (additional heat treatment time of 30 min).
4-5. Al 膜の特性
4-5-1. Al 膜中の Si ノジュールと Al 膜のグレイン
A タイプボイド、Bタイプボイドが Siノジュールを核として形成されており、ボイドの 起点が追加熱処理以前に決定されている可能性を考えると、追加熱処理でのAl膜中の核と なる Si ノジュールの変化が影響していると考えられる。Si ノジュールはAl 膜に対して過 飽和なSiが膜界面や粒界に析出するもので、Alに対してSiの固溶度は常温で0.25 wt%以 下であるため、Al-1 % Si-0.5 % CuのAl膜では常温では過飽和な状態になっている。Siノジ ュール数は、TEOS酸化膜とARC-TiN膜をRIE法で除去した後、Al表面に露出しているSi ノジュール数をFIBのSIM像から計測した。SIM像は導体と不導体のコントラストが大き いため、導体のAl膜中のSiが明確に観察できる。一方、グレインサイズの測定には、FIB のチャネリング法を用いた。Fig. 4-6、Table 4-2に示す様に下層バリヤTi膜のRTA処理をし ていないサンプル1、5では表面Siノジュールは全く観察されず、これらのサンプルでは、
ボイドも発生していない。一方、ボイドが発生したサンプル2、4、6では、ボイドの核と成 り得るSiノジュールが追加熱処理前後で存在している。サンプル2、4とサンプル6を比較 すると上層TEOS酸化膜成膜温度がSiノジュールの減少率に影響していることが分かる。
After heat treatment After heat treatment After heat treatment