B. 2 線分の交点 〜 係数比較
6. 三角形の五心と位置ベクトル
A. 重心
p.26で学んだように,△ABCの重心Gは⃗g= ⃗a+⃗b+⃗c
3 であった.
B. 内心
内心の位置ベクトルを求めるには,まず「角の二等分線の公式」(数学A)を用いて比を求める.
【暗 記 60:内心】
△ABCの内心をIとする.AB=5, BC=8, CA=7のとき,−→ AIを−−→
AB,−−→
ACで表せ.
【解答】 直線AIと辺BCの交点をDとする.
角の二等分線の公式よりBD : DC=AB : AC=5 : 7· · · ⃝1
さらに,角の二等分線の公式よりAI : ID=AB : BD=5 : BD· · · ⃝2
⃝1よりBD = 5
5+7BC = 5
12 ·8 = 10
3 であるから,⃝2に代入して AI : ID=5 : 10
3 =3 : 2 · · · ⃝3 .以上から
−→ AI = 3
3+2
−−→AD
= 3 5 · 7−−→
AB+5−−→
AC
5+7 = 7−−→
AB+5−−→
AC 20
C. 外心
三角形の外心は3辺の垂直二等分線の交点であり,外接円の中心であるから,以下の条件が成り立つ.
三角形の外心とベクトル
△ABCの外心をRとしたとき,以下が成立する.
(1) Rは3辺の垂直二等分線の交点であるから,辺AB,BC,CAの中点L,M,Nについて RL⊥ABであるから−−→
RL·−−→
AB=0,RM ⊥BCであるから−−→
RM·−−→
BC=0,RN⊥CAであるから
−−→RN·−−→
CA=0(2つが成立すれば,3つ目も成り立つ). (2) Rは外接円の中心になるから,−−→
RA = −−→
RB = −−→
RC
【練習61:外心】
AB=5, AC=6, ∠A=60◦である△ABCの外心をRとする.−−→
AB=⃗b, −−→
AC=⃗c, −−→
AR=⃗rとするとき,⃗r を⃗b, ⃗cで表せ.
—13th-note— 1A.6 ベクトルの図形への応用· · ·
39
【解答】 ⃗r=s⃗b+t⃗cとおく(s, tは実数).辺AB,ACの中点をM,Nと するとRは外心であるから,
RM⊥AB ⇔−−→
RM·−−→
AB=0 · · · ·⃝1 RN⊥AC ⇔−−→
RN·−−→
AC=0 · · · ·⃝2 が成り立つ.ここで⃝1について
−−→RM·−−→
AB =(−−→
AM−⃗r)·⃗b
= (1
2⃗b−s⃗b−t⃗c )
·⃗b ◀M はAB の 中 点 な の で −−→
AM = 1
2
−−→AB= 1
2⃗b.また,⃗r=s⃗b+t⃗c
= も代入.
(1 2 −s
) ⃗b 2−t⃗b·⃗c
ここで,⃗b·⃗c=5·6·cos 60◦=15, ⃗b =5より
⃝1 ⇔ 25 (1
2 −s )
−15t=0 ⇔ 5
2 =5s+3t · · · ⃝3 一方,⃝2について⃗b·⃗c=15, ⃗c =6より
−−→RN·−−→
AC =(−−→
AN−⃗r)·⃗c
= (1
2⃗c−s⃗b−t⃗c )
·⃗c ◀N は AC の 中 点 な の で −−→
AN = 1
2⃗c.
= (1
2 −t
) ⃗c2−s⃗b·⃗c
= (1
2 −t )
·36−15s=18−36t−15s
よって,⃝2 ⇔18−36t−15s=0⇔5s+12t=6である.
これと⃝3を連立して(s, t)= ( 4
15, 7 18
)
であるから,⃗h= 4 15
⃗b+ 7 18
⃗c.
D. 垂心
p.37で示したように,三角形の3本の垂線は1点で交わる.
垂心の位置ベクトルを求めるには,内積を利用する.
【練習62:垂心】
AB=5, AC=6, ∠A=60◦である△ABCの垂心をHとする.−−→
AB=⃗b, −−→
AC=⃗c, −−→
AH=⃗hとするとき,⃗h を⃗b, ⃗cで表せ.
【解答】 ⃗h=s⃗b+t⃗cとおく(s, tは実数).Hは垂心であるから BH⊥AC ⇔−−→
BH·−−→
AC=0 · · · ·⃝1 CH⊥AB ⇔−−→
CH·−−→
AB=0 · · · ·⃝2 である.まず,⃝1について
−−→BH·−−→
AC =(⃗h−⃗b)·⃗c
=(s⃗b+t⃗c−⃗b)·⃗c ◀⃗h=s⃗b+t⃗cを代入した
=(s−1)⃗b·⃗c+t ⃗c2
40
ここで,⃗b·⃗c=5·6·cos 60◦ =15, ⃗c =6より
⃝1 ⇔ (s−1)·15+t·62=0 ⇔ 5s+12t=5 · · · ·⃝3 一方,⃝2について⃗b·⃗c=15, ⃗b =5より
−−→CH·−−→
AB =(⃗h−⃗c)·⃗b
=(s⃗b+t⃗c−⃗c)·⃗b
=s⃗b 2+(t−1)⃗b·⃗c
=s·25+(t−1)·15 ◀⃗b·⃗c=15, ⃗b =5を代入した
よって⃝2 ⇔25s+15(t−1)=0⇔5s+3t=3である.
これと⃝3を連立して(s, t)= ( 7
15, 2 9 )
であるから,⃗h= 7 15
⃗b+ 2 9
⃗c.
E. 傍心
傍心の位置ベクトルを求めるには,まず「角の二等分線の公式」(数学A)の外角の場合を利用すること になり,内心の場合(p.39)と同様である.
【練習63:傍心】
△ABCの傍心のうち,∠Aの二等分線上にあるものをIとする.AB=5,BC=7,CA=8のとき,−→ AIを
−−→AB,−−→
ACで表せ.
【解答】 ∠Aの二等分線と辺BCの交点をDとおく.角の二等分線の公式 より,BD : DC=AB : AC=5 : 8であるから,BD= 5
5+8BC= 35 13. また,△BADについて,BIは∠Bの外角の二等分線であるから,外角の 二等分線の公式よりAI : ID=BA : BD=5 : 35
13 =13 : 7である.
これより,AI : AD=13 : 6である.よって
−→ AI = 13
6
−−→AD
= 13 6 · 8−−→
AB+5−−→
AC
5+8 = 8⃗b+5⃗c 6
—13th-note— 1A.6 ベクトルの図形への応用· · ·
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1A.7 ベクトル方程式
ベクトルを用い,直線や円を表した式をベクトル方程式 (vector equation)と言う.