本章では,三次元流動シミュレーションを用いて,津波前後での流動の違い,気仙沼 湾における海水交換について考察する.津波前後で地形データを変え,流入条件,初期 条件を全く同じにした状態で計算を行う.
4-1 精度検証
4-1-1 地形図作成
海上保安庁の発行の震災前の海図(W1099,気仙沼湾,平成22年1月21日発刊)と,
震災後の海図(W1099,気仙沼湾,平成24年11月22日発刊)をそれぞれ用いて,等値 線や水深データをデジタイザーで読み取り,地形データを作成した.この地形データか ら等高線・3D地表マップ作成ツールSurfer10を使用して,補間計算を行い,計算格子を 作成した.補間方法はKriging法である.
気仙沼湾の狭窄部は幅が約250 m,湾口部は460 mであり,舞根湾の湾口部の幅は140 mである.安定した数値計算をする上で,格子数は10個程度あることが望ましいため,
気仙沼湾,舞根湾の領域の水平格子サイズを20 m格子とした.また,開境界部分は10880
m,18240 mであり,計算の負担を減らすために水平格子サイズを320 m格子とした.
これらの設定を考慮して,計算領域のDomain分割を行った(図 4-1-1).補間後の地形 グリッド図を図 4-1-2に示す.補間計算による海底水深の誤差は,毎月行っている水質 調査の際の水深データをもとに修正した.
51
図 4-1-1 計算領域の Domain 分割
141.60 141.64 141.68
38.82 38.84 38.86 38.88 38.90 38.92
D 6 [20m]
D 1 [80m]
D 4 [20m]
D 5 [20m]
D 3 [40m]
D 2 [40m]
D 0 [320m]
開境界
開境界
52
図 4-1-2 震災前(上),震災後(下)の地形グリッド図
64000 65000 66000 67000
-1.24 -1.23 -1.22 -1.21 [´10]
64000 65000 66000 67000
-1.24 -1.23 -1.22 -1.21 [´105]
16.0 15.0 14.0 13.0 12.0 11.0 10.0 9.0 8.0 7.0 6.0 5.0 4.0 3.0 2.0 1.0
53 4-1-2 初期条件
① 潮位
計算領域の開境界から与える潮位は,ナウファス(国土交通省港湾局 全国港湾 海洋波浪情報網)の宮城北部沖の潮位と同じものとした(図 4-1-3).しかし,国土 交通省のデータは,計算期間における潮位データが存在しなかったため,潮位の波 形が酷似している気象庁の宮城県石巻市鮎川浜のデータ採用した(図 4-1-4).鮎川 浜は,宮城北部沖から約55km離れた場所に位置する.
② 気象
入力する気象データとして,風速,風向,気温,雨量,大気圧,湿度,短波放射 が必要である.大気圧は本研究で舞根湾に設置している大気圧計のデータを採用し,
他のデータは気象庁アメダスのデータを採用した.風速,風向,気温,雨量は気仙 沼市のデータを用いた.湿度は大船渡市特別地域気象観測所のデータを用いた.短 波放射は各県の県庁所在地のデータしか存在しないので,仙台管区気象台のデータ を用いた.これらのデータを60分ピッチで与えた.
③ 河川流入
表層のエスチュアリー循環を再現させるため,大川,鹿折川からの淡水を10分ピ ッチで流入させた(表 4-1-1).大川の流量は,上流に設置してある水位データから,
水位流量曲線より推定した.計算期間の平均流量は,2014年7月は1.81~1.87であ った.また,鹿折川の流量は,水位計のデータが存在しないので,大川との流域面 積比により算出した.大川と鹿折川の面積比は21:5であるので,大川の平均流量
の約23.8%とした.
④ 計算期間
計算を行う計算期間は2014年7月25日~30日(7月大潮),7月31日~8月4 日(7月小潮)である.入力データを図 4-1-5,4-1-6に示す.
54
図 4-1-3 宮城北部沖,鮎川浜の位置
図 4-1-4 宮城北部沖,鮎川浜の潮位
表 4-1-1 河川流入量
計算期間 河川流量(m3/s) 大川 鹿折川
2014/7/25~30 大潮 1.869 0.445
2014/7/31~8/4 小潮 1.810 0.431 -1
0 1
7/30 7/31 8/1 8/2 8/3
宮城北部沖 鮎川浜
水位(T.P.m)
鮎川浜 気仙沼気象台
仙台管区気象台
大船渡気象観測所
ナウファス
宮城県 岩手県
55 風速
図 4-1-5 7 月大潮の流入データ
2.0m/s 10
20 30
0
5
10
降水量(mm)
気温(℃)
1 1.01 [´105] 1.02
大気圧(Pa)
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1
7/25 7/26 7/27 7/28 7/29 7/30 7/31
湿度(%)
0 200 400 600 800 1000
短波放射(W/m)
-2 -1
潮位(T.P.m)
56
図 4-1-6 7 月小潮の流入データ
風速 2.0m/s
10 20 30
0
5
10
降水量(mm)
気温(℃)
1 1.01 [´105] 1.02
大気圧(Pa)
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1
湿度(%)
0 200 400 600 800 1000
短波放射(W/m)
-2 -1
7/31 8/1 8/2 8/3 8/4 8/5
潮位(T.P.m)
57 4-1-3 水位・流速の再現性
st.8(大島瀬戸)に設置した ADCP の流速データ,水位データを用いて再現性のチェ
ックを行った.検証を行った水深は,5m,10m,15m,20mの4水深である.
大潮の東方流速(図 4-1-7)と,北方流速(図 4-1-8),また小潮の東方流速(図 4-1-9)
と,北方流速(図 4-1-10)について,水深5mと10mの流速の再現性はあまり良くなか った.15mと20mは周期性は概ね合っているが,例えば7/27などは2倍程度のずれが 生じていた.つまり全体的に再現性はあまり良くないと言える.
ここで,流速を潮流成分と残差流成分(恒流)に分けた.残差流は生データを12.5時 間移動平均した値であり,以下の式で求めた.
ݒ = ݒ′ + ݒ̅
ݒは流速,ݒ′は潮流成分,ݒ̅は残差流成分である.
まず,残差流の再現性について述べる.大潮・東方流速(図 4-1-7)で再現性が低か った7/27は,実測の残差流は水深5 mで50 mm/sを超えているが,計算値は0~-10 mm/s である.また,7/29は実測が最大で-50 mm/sであるが,計算は0~-10 mm/sとなってい る.この傾向は,他の水深や小潮でも同様であった.つまり,残差流成分は実測値で大 きく,計算値では常に小さいことが分かった.
次に,潮流の再現性について述べる.大潮・東方流速(図 4-1-15)においては,7/27 のレンジの再現性が低い部分があったが,他の期間においては再現性が良く,北方流速
(図 4-1-16)においても再現性が良かった.小潮・東方流速では,比較的どの層におい ても再現性が良く(図 4-1-17),北方流速では,5m,10m でときおり誤差があるが,
概ね再現することが出来た(図 4-1-18).
そこで,潮流成分の誤差を評価するために,一潮汐(12.5時間)の平均流速を求め,
再現性を確かめた.大潮・東方流速では(図 4-1-19),7/28以降からどの層も概ね再現 することが出来た.また,10m以外の各層の平均誤差は約30%であった(表 4-1-2).
なお,水深10m付近はときおり誤差が大きかったが,これは表層と底層で流れの傾向が 変化しており,その変化点に位置しているために,再現性が低くなりやすいと考えられ た.北方流速では(図 4-1-20),どの層においても再現性が良かった.
以上より,本モデルでは残差流成分の再現性は低かったが,潮流成分は概ね再現する ことが出来ていると考えられる.残差流成分の再現性については,残差流は沖合を流れ る黒潮・親潮の影響を受けるが,本モデルでは沖合の恒流の影響を考慮していない.ま た,気圧配置の影響により水面勾配ができ,流れの長周期成分が形成されると考えられ るが,このような効果も本モデルでは導入していない.本モデルは沖合の潮位変動と河
58 る.
しかし,本研究では,震災前後で初期条件,流入条件を統一し,地形変化が海水交換 に及ぼす影響を考察することが目的である.このとき,少なくとも潮汐流の再現性が高 ければ,検討は可能であると言える.したがって,気象条件を揃える仮想計算として,
本モデルは十分な精度を有していると判断した.
59
図 4-1-7 東方流速の再現性(7 月大潮)
-2 -1
7/25 7/26 7/27 7/28 7/29 7/30 7/31
実測値計算値
潮位(T.P.m)
-100 0 100
流速(mm/s)
5m
実測値 計算値
-100 0 100
流速(mm/s)
10m
-100 0 100
7/25 7/26 7/27 7/28 7/29 7/30 7/31
流速(mm/s)
15m
-100 0 100
流速(mm/s)
20m
60
図 4-1-8 北方流速の再現性(7 月大潮)
-2 -1
7/25 7/26 7/27 7/28 7/29 7/30 7/31
実測値計算値
潮位(T.P.m
-100 0 100
流速(mm/s)
5m
実測値 計算値
-100 0 100
流速(mm/s)
10m
-100 0 100
7/25 7/26 7/27 7/28 7/29 7/30 7/31
流速(mm/s)
15m
-100 0 100
流速(mm/s)
20m
61
図 4-1-9 東方流速の再現性(7 月小潮)
-2 -1
7/31 8/1 8/2 8/3 8/4 8/5
実測値 計算値
潮位(T.P.m)
-100 0 100
流速(mm/s)
5m
実測値 計算値
-100 0 100
流速(mm/s)
10m
-100 0 100
7/31 8/1 8/2 8/3 8/4 8/5
流速(mm/s)
15m
-100 0 100
流速(mm/s)
20m
62
図 4-1-10 北方流速の再現性(7 月小潮)
-2 -1
7/31 8/1 8/2 8/3 8/4 8/5
実測値 計算値
潮位(T.P.m
-100 0 100
流速(mm/s)
5m
実測値 計算値
-100 0 100
流速(mm/s)
10m
-100 0 100
7/31 8/1 8/2 8/3 8/4 8/5
流速(mm/s)
15m
-100 0 100
流速(mm/s)
20m
63
図 4-1-11 東方残差流の再現性(7 月大潮)
-2 -1
7/25 7/26 7/27 7/28 7/29 7/30 7/31
潮位(T.P.m)
-100 0 100
流速(mm/s)
5m
実測値 計算値
-100 0 100
流速(mm/s)
10m
-100 0 100
7/25 7/26 7/27 7/28 7/29 7/30 7/31
流速(mm/s)
15m
-100 0 100
流速(mm/s)
20m
64
図 4-1-12 北方残差流の再現性(7 月大潮)
-2 -1
7/25 7/26 7/27 7/28 7/29 7/30 7/31
潮位(T.P.m
-100 0 100
流速(mm/s)
5m
実測値計算値
-100 0 100
流速(mm/s)
10m
-100 0 100
7/25 7/26 7/27 7/28 7/29 7/30 7/31
流速(mm/s)
15m
-100 0 100
流速(mm/s)
20m
65
図 4-1-13 東方残差流の再現性(7 月小潮)
-2 -1
7/31 8/1 8/2 8/3 8/4 8/5
潮位(T.P.m)
-100 0 100
流速(mm/s)
5m
実測値 計算値
-100 0 100
流速(mm/s)
10m
-100 0 100
7/31 8/1 8/2 8/3 8/4 8/5
流速(mm/s)
15m
-100 0 100
流速(mm/s)
20m
66
図 4-1-14 北方残差流の再現性(7 月小潮)
-2 -1
7/31 8/1 8/2 8/3 8/4 8/5
潮位(T.P.m
-100 0 100
流速(mm/s)
5m
実測値 計算値
-100 0 100
流速(mm/s)
10m
-100 0 100
7/31 8/1 8/2 8/3 8/4 8/5
流速(mm/s)
15m
-100 0 100
流速(mm/s)
20m
67
図 4-1-15 東方潮流の再現性(7 月大潮)
-2 -1
7/25 7/26 7/27 7/28 7/29 7/30 7/31
潮位(T.P.m)
-100 0 100
流速(mm/s)
5m
実測値計算値
-100 0 100
流速(mm/s)
10m
-100 0 100
7/25 7/26 7/27 7/28 7/29 7/30 7/31
流速(mm/s)
15m
-100 0 100
流速(mm/s)
20m
68
図 4-1-16 北方潮流の再現性(7 月大潮)
-2 -1
7/25 7/26 7/27 7/28 7/29 7/30 7/31
潮位(T.P.m
-100 0 100
流速(mm/s)
5m
実測値 計算値
-100 0 100
流速(mm/s)
10m
-100 0 100
7/25 7/26 7/27 7/28 7/29 7/30 7/31
流速(mm/s)
15m
-100 0 100
流速(mm/s)
20m
69
図 4-1-17 東方潮流の再現性(7 月小潮)
-2 -1
7/31 8/1 8/2 8/3 8/4 8/5
潮位(T.P.m)
-100 0 100
流速(mm/s)
5m
実測値 計算値
-100 0 100
流速(mm/s)
10m
-100 0 100
7/31 8/1 8/2 8/3 8/4 8/5
流速(mm/s)
15m
-100 0 100
流速(mm/s)
20m
70
図 4-1-18 北方潮流の再現性(7 月小潮)
-2 -1
7/31 8/1 8/2 8/3 8/4 8/5
潮位(T.P.m
-100 0 100
流速(mm/s)
5m
実測値 計算値
-100 0 100
流速(mm/s)
10m
-100 0 100
7/31 8/1 8/2 8/3 8/4 8/5
流速(mm/s)
15m
-100 0 100
流速(mm/s)
20m
71
図 4-1-19 東方平均潮流の再現性(7 月大潮)
-2 -1
7/25 7/26 7/27 7/28 7/29 7/30 7/31
潮位(T.P.m)
-100 0 100
流速(mm/s)
5m
実測値 計算値
-100 0 100
流速(mm/s)
10m
-100 0 100
7/25 7/26 7/27 7/28 7/29 7/30 7/31
流速(mm/s)
15m
-100 0 100
流速(mm/s)
20m
72
図 4-1-20 北方平均潮流の再現性(7 月大潮)
-2 -1
7/25 7/26 7/27 7/28 7/29 7/30 7/31
潮位(T.P.m
-100 0 100
流速(mm/s)
5m
実測値 計算値
-100 0 100
流速(mm/s)
10m
-100 0 100
7/25 7/26 7/27 7/28 7/29 7/30 7/31
流速(mm/s)
15m
-100 0 100
流速(mm/s)
20m
73
表 4-1-2 大潮の平均潮流誤差
東方平均潮流誤差(%) 北方平均潮流誤差(%)
5m 10m 15m 20m 5m 10m 15m 20m
48時間 30.0 86.8 30.0 24.6 45.1 28.3 29.9 25.3
54時間 31.9 92.1 28.1 24.8 43.2 29.5 30.0 26.6
60時間 30.7 95.3 25.5 23.5 43.9 27.2 28.6 27.2
66時間 26.5 99.1 23.0 24.6 41.3 25.3 28.3 28.4
72時間 27.6 102.4 20.5 26.7 39.4 23.8 28.2 26.6
78時間 30.2 112.9 19.6 27.2 39.2 26.3 25.5 24.9
84時間 27.8 126.4 19.1 29.9 39.6 28.4 22.8 26.0
90時間 25.6 141.4 17.7 31.6 39.5 24.8 17.6 17.9
96時間 27.4 158.6 18.6 36.8 25.5 25.1 19.1 19.2
102時間 26.5 179.1 19.9 42.4 23.5 17.9 17.8 21.6
108時間 25.7 207.4 24.5 52.1 26.2 18.2 19.3 26.6
114時間 20.4 110.0 10.2 56.9 24.2 18.9 16.2 30.3
120時間 25.3 16.9 10.4 46.8 34.8 24.0 13.9 24.5
74
図 4-1-21 東方平均潮流の再現性(7 月小潮)
-2 -1
7/31 8/1 8/2 8/3 8/4 8/5
潮位(T.P.m
-100 0 100
流速(mm/s)
5m
実測値 計算値
-100 0 100
流速(mm/s)
10m
-100 0 100
7/31 8/1 8/2 8/3 8/4 8/5
流速(mm/s)
15m
-100 0 100
流速(mm/s)
20m
75
図 4-1-22 北方平均潮流の再現性(7 月小潮)
-2 -1
7/31 8/1 8/2 8/3 8/4 8/5
潮位(T.P.m)
-100 0 100
流速(mm/s)
5m
実測値 計算値
-100 0 100
流速(mm/s)
10m
-100 0 100
7/31 8/1 8/2 8/3 8/4 8/5
流速(mm/s)
15m
-100 0 100
流速(mm/s)
20m
76
東方平均潮流誤差(%) 北方平均潮流誤差(%)
5m 10m 15m 20m 5m 10m 15m 20m
48時間 36.2 26.9 34.7 116.2 32.5 34.9 27.0 53.2
54時間 34.8 24.0 37.2 119.9 35.0 33.6 26.0 56.3
60時間 35.2 25.5 35.9 129.3 38.0 36.3 24.9 61.2
66時間 35.5 27.2 31.7 132.5 38.9 37.1 26.8 63.9
72時間 35.1 29.5 16.8 47.9 43.1 40.8 29.4 66.5
78時間 37.2 31.2 18.5 48.6 43.6 40.2 30.1 69.7
84時間 37.6 32.2 18.6 52.8 42.0 40.5 26.8 77.4
90時間 40.7 33.3 13.3 41.2 36.4 35.9 30.5 86.5
96時間 43.6 33.5 10.1 44.0 28.1 40.1 32.2 95.6
102時間 54.4 30.5 6.7 51.1 33.7 31.3 25.9 111.9
108時間 70.1 40.2 5.6 52.4 26.3 20.9 25.3 143.1
114時間 70.4 48.6 7.8 40.3 31.6 10.5 31.9 142.0
120時間 64.3 37.1 2.9 41.0 24.0 19.6 43.9 35.4
77 4-2 震災前後の流速分布の比較
三次元流動シミュレーションの結果を,流速ベクトル図で表した.考察を行う水深は,
5 m,10 m,15 m,20 mであり,大潮の下げ潮と上げ潮について,広域での震災前後の 比較を図 4-2-1~図 4-2-16に,北部海域を拡大したものを図 4-2-17~図 4-2-32に示し ている.また,小潮の下げ潮と上げ潮について,広域図を図 4-2-33~図 4-2-48に,北 部海域を図 4-2-49~図 4-2-64に示している.
大潮における下げ潮の流動として,水深5 mの湾奥の水は大島瀬戸を通過し,東湾を 経て太平洋に流れる傾向にあった(図 4-2-1,2).西湾では,中心部の最大水深が約10 mであるため,湾奥の水が南下しにくく,途中でつまるような挙動を示した.水深10 m より下層の水は,西湾を流れることが出来ずに,大島瀬戸に向かって吸い込まれて,太 平洋に抜ける一方通行の流れになっていた(図 4-2-5,6,9,10,13,14).
上げ潮では,水深5 mと10 mの水は太平洋から東湾と西湾に流入するが,東湾では そのまま北上し,大島瀬戸を通過して湾奥へと向かう.西湾では途中の浅場で大島瀬戸 の東から流入してきた水とぶつかり合い,流れが弱まる傾向にあった(図 4-2-3,4,7,
8).
次に拡大図から,大潮時における震災前と震災後の流動を比較した.震災前は,下げ 潮の水深5 mにおいて,湾奥の狭窄部での南方向の流速が80 mm/sであるのに対し(図 4-2-17),震災後は25 mm/sと弱くなっており(図 4-2-18),上げ潮では,大島瀬戸の 流速が震災前は70 mm/sであったが(図 4-2-19),震災後は100 mm/sと強くなってい た(図 4-2-20).水深10 mでは,下げ潮における違いは明確ではなく(図 4-2-22),
上げ潮時では,震災前は大島瀬戸の流速が50 mm/sであったが(図 4-2-23),震災後は
70 mm/sと強くなっていた(図 4-2-24).
小潮における下げ潮の流動として,水深5 mでは湾奥の水は大島瀬戸から東湾を通っ て,太平洋に流れ込んでいたが,西湾の北部の水は太平洋と大島瀬戸の2方向への流れ が混在していた(図 4-2-33,34).上げ潮では,太平洋からの水が東湾,西湾を通って,
湾奥に流れていた.また,大島瀬戸から西湾への南下する流動はあまり強くなかった.
また,水深10 mでも同じような傾向が見られ(図 4-2-39,40),15m,20mでは大潮 時と同じような流れであった(図 4-2-43,44,47,48).
次に拡大図から,小潮時における震災前,震災後の流動の比較を行った.いずれの水 深も,下げ潮時の違いはあまり見られず,上げ潮も同様であった.
以上より,大潮において,震災後は,下げ潮では湾奥の狭窄部の流速が震災前より小 さくなっており,上げ潮では大島瀬戸の流速が全層で大きくなっていた.