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ドキュメント内 昭和58年度 国立国語研究所年報 (ページ 94-98)

  請書など)に現れる傾向が強い。直接主文は,作成者側の行為や事実を   単に叙述することを霊目的とする文書(決議書・調書など)に現れる傾   向がある。全体としてメタ主文をもつ文書が多い(表5参照)。

② 雷語行動における対人的な配慮を明示する言語表現について

①考察の対象

 人への待遇表現的な配慮は,書語行動の成立要素の諸側面にまつわって行 われるものであり,この配慮そのものが雷語表現として明言される場合があ る。言語行動の何らかの側面に雷及した言認表現(メタ言語行動・「注釈」)

のうち,言語行動の主体や桐手,話題の人への気配りから発したものを考察 の対象とする。括弧内は言藷行動の要素で,配慮の対象になっていると考え

られるもの。

「私ナドガシャシャリデテブシツケデスケレド」 (直接の行動主体)

「オ父様ガソウオッシャテイルノデシタラ,ワタシナドハモウ……」

       (実際の行動主体)

「ホカナラヌ,アナタダカラ言イタインデスヨ」 (直接の行動摺手)

「ゴ主人ノオ耳二三レテイタダクノデスカラ……」 (実際の行動桐手)

ドコレハ,オタ琴ネシテイルノデシテ,決シテ命令シテイルノデハアリマセ  ンカラ……j      (機能)

「恩師ノコトヲ書クノニ,随筆デハ失礼ダカラ,正式ナ論文ニマトメタイノ  デ……」       (ジャンル)

「『○○サン』ト呼ブノハ気ガピケマスノデ, 『先生』ト呼バセテイタダキ  マス」      (言語形式)

「コンナコト書ウベキコトカドウカワカリマセンケド」 (内容)

「ザックバランニ申上ゲテ……」       (調子)

「夜分遅ク申訳ケナイデスガ……」      (物理的場1翻

「オトリコミ中スミマセンガ……」       (心理的場瀬)

「本来ナラパオ目ニカカッテ申上ゲルベキトコロ,オ電話デ失礼イタシマ  ス」       (接触・媒体)

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「細カナトコ羅マデオワカリイタダキタクテ,クドクド言ッタワケデスノデ  ……」      (圏的・動機)

「(アンナコト言ッタバカリニ)トンダゴ迷惑ヲオカケスルロトエナリマシ  テ……」       (結果・効果)

「オコトパヲ返スヨウデ恐縮デスガ」     (談話の規範)

「折角ノゴ忠告デシタノニ,いちゃもんダナドト受取ッテシマイマシテ…

…」      .     (解釈の規範)

 以上は,ハイムズ・D。(1972)の掲げた言語行動の16成立要素についての

「注釈」の例であるが,これらのほかに,言語行動ゐ非言語的側面について 言及する「注釈」も留意される。

「本i当ナラ,モットニコヤカニオ迎エスベキトコr・デスガ,コンナ無愛想デ  ……」      (態度・表情)

「失礼シテ,脚ヲクズサセテイタダキマス」   (動作・姿勢)

「ねくたいモナシデウカガイマシテ……」    (服装)

「コソナ端近デハ申訳アリマセソカラ」     (場所)

「アマリオ近クデハ,オソレ多イコトデスノデ,コUカラ申上ゲマス」

       (位置・距離)

「オ番茶ヒトツ差上ゲモシマセンデ……」    (接遇)

②仮説

 待遇度の高い(丁寧な・改まった)場颪における言語行動には,こうした 配慮を明醤する言藷表現が現れやすい。又,配慮の及ぶ要素の種類は,言語 行動の種類によって異なる分布を示す。

③知見(抜粋)一印制見本の文章の場合

 a。手紙などの聞接的言語行動では,接触状況や媒体に配慮の及ぶ場合が   多い。

  「参上拝眉ノ上,御礼申上ゲルベキトコpa,トリァエズ書状・・テゴ挨拶申上ゲマ   ス」

  「マズハ,右,略儀ニテ失礼ナガラ,書中ヲモッテ御礼申上ゲマスj

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 b。帆手に何らかの(言語)行動を求める言語行動では,相手の心理的状   況に配慮の及ぶ場合が多い。

  「ゴ多用中マコトニ恐縮デハゴザイマスガ,オリカxシゴ回讐賜リタク空回イ申   上ゲマス」

  「オ手数ナガラ,同封ノ葉書ニヨリ,ゴ鵠席ノ有無ヲゴ回三三リタク,三三イ申   上ゲマス」

  rナオ,ゴ来場ノ筋ハ,ゴ面倒ナガラ,本状ヲゴ梶示願イタク,オ願イイタシマ   ス」

(3)今後の課題と予定

①資料整理の収束

②意識調査の実施

 a.当該の雷語表現の有無と,待遇度・明解さ・おしつけがましさ・好悪   などとの関連

 b・言語行動の主体と受け手の意識差  c・文範・規範との関連

 第3項目 社会変化と敬語行動の標準(渡辺ほか)

 渡辺グループは,グループ員が次の5項目を各自分担して,調査研究に当 たった。憂欝ごとに成果知見のごくあらましを述べる。

(1)戦後β本の社会構造の変化と敬語行動の変化に関するマクロな考察(渡   辺)

① 戦後の臼本人の敬語・敬語行動へどのような影響を与えたか。この視点 から戦後日本の挫会構造の変化の全体像を明らかにしょうというのなら,そ の全体像は,少なくとも次の三つを軸にしてとらえるべきだという見解に到 達した。

 a.戦後八三主義の展醐と定着

 b.昭和30年代に始まった産業化と都市化  c・新1日世代の大幅な交替

 cは,aの事実を一層確実なものにした。 aは,戦後の日本人の敬語・敬        一93一

議行動に〈民主化〉という新しい基準を持ち込んだ。主として身分的な上下 関係に基づいて発達してきた,これまでの敬認の標準に代わって,各人の基 本的人格を尊重する根互尊敬の敬語という新しい標準である。後述する〈(2)

秋賑県北部農村の栓会変化と敬語行動の標準〉<(3>越中五箇山由村の三会 変化と敬語行動の標準〉は,東北地方と北陸地方の小さな村落社会の中で,

この新しい標準がどのように定着しつつあるかをフィールド調査によって明 らかにしょうとしたものである。

②全国的な産業化・都市化の進展は,村や町,それに伝統三者肺の地域社 会がこれまで有してきたゲマインシャフト(共同体)的性格の崩壊を一一層早 めることになった。地域社会住民梢互の連帯感・融和感が薄れ,孤立化が進 んだ。他人とのかかわり方,結合の仕方に関して,ゲマインシャフトに特徴 的な〈親〉の結合よりも,ゲゼルシャフトに特徴的なく疎〉の結合を志向す る性向が増大してきた。他人をく上下〉の関係でとらえるよりも,〈親疎〉

の関係,とりわけ〈疎〉の関係でとらえようとする志向が強まってきたので ある。これは,見方を変えれば,〈私秘化〉(privatizatien),又は〈個別化〉

(individuation)とも言われる現象にも見%る。

 したがって,産業化・都衛化の全国的な進展に伴い,〈上下〉の敬語行動 に代わって,〈親疎〉の敬語行動,とりわけく疎〉の敬語行動の占める比重 が増大していくと予想される。〈疎〉の敬語行動は,根手に対するく隔て〉

の敬語行動でもあり,〈構え〉の敬語行動でもある。〈(2)秋田県北部農村 の縫会変化と敬語行動の標準〉で,この辺の事情をフィールド調査によって 明らかにしょうとした。

(2)秋瞬県北部農村の社会変化と敬語行動の標準(渡辺・望月)

① 調査地の〈秋眠県北部農村〉とは,具体的には秋田県北秋田郡上小阿仁 村,その中でも下五反沢という集落のことである。この集落の戸数は規在82 戸。これを家の本末の系譜関係でまとめると, 〔表6〕のようになる。

ドキュメント内 昭和58年度 国立国語研究所年報 (ページ 94-98)