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第4章 一質点系発電特性

4.4 一質点強制加振試験

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図 4.34:一質点強制加振試験の構成

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図 4.35:一質点強制加振試験写真

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以下では具体的な試験条件を示す。入力信号はsin波をファンクションジェネレータよりア ンプを通し,加振器へ入力,先端に付加する錘の荷重を変えながらそれに伴って理論式より導 出した理論抵抗を負荷した。今回の試験では片持ち梁の自由端変位とベースの加振変位をコン トロールし,入力エネルギーを一定とした。入力エネルギーを一定にするためファンクション ジェネレータで作成したsin波の入力振幅を適宜変更しな実験を行った。

実験結果を以下の表4.6,4.7と図4.36,4.37にまとめた。図4.36には電圧と電流の加振 試験結果を示した。入力エネルギーを一定にした際,先端に付加する錘の荷重を大きくすると 電流は一様に減少する傾向が確認できた。対し,電圧に関しては最適値を持つ結果が得られた。

これは先端に重荷重を付加すると,小さな加速度で大きな変位を得ることができる。これに対 し,先端に軽荷重を付加すると,大きな加速度を入力しなければ同様の変位を得ることができ ない。結果,錘の荷重が大きい時は小さな入力加速度を,荷重が軽い時は大きな入力加速度を 印加する結果になっている。上述より,電圧は最適値を得る結果となったことを確認した。電 流の観点から考慮すれば先端に付加する錘の荷重が大きいほど共振周波数が低下する傾向に あるため,整合抵抗値が上昇する。よって電流が減少する傾向になると推察した。電力に関し ては電圧と電流の積によって与えられるため,軽荷重の錘を付加した時の方が有利という結果 になっている。出力エネルギーは荷重増加に伴い共振周波数が低下し,電力波形の面積が大き くなる傾向があるため,電圧同様最適値を持つことを確認した。

表4.7には錘毎の入力エネルギーをまとめている。本結果より概ね一定にできていることが 確認できた。表4.7には入力エネルギーならびに一周期当たりの平均電力と一周期における効 率を示した。同一の入力エネルギーにおける振動発電に関しては先端に最適な錘の荷重を付加 することによって効率を37.2%まで高めることができた。平均電力に関しては2.5mW相当と いう出力が得られた。

図 4.36:一質点強制加振試験結果

0.0E+00 5.0E-05 1.0E-04 1.5E-04 2.0E-04 2.5E-04 3.0E-04 3.5E-04 4.0E-04

10.0 11.0 12.0 13.0 14.0 15.0 16.0

1 2.6 5 8 11 15 20

電流[A]

電圧[V]

錘[g] Voltage

Current

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図 4.37:一質点強制加振試験結果

表 4.6:一質点強制加振試験結果

g Voltage[

V

] Current[

mA

] Power[

mW

] Energy[

μJ

]

1 14.1 0.35 6.49 35.0

2.6 15.2 0.30 5.79 37.2

5 15.0 0.23 3.99 36.6

8 14.4 0.17 2.73 33.1

11 12.8 0.13 1.61 25.4

20 11.9 0.078 0.93 20.9

表 4.7:一質点強制加振試験結果

g Average Power[

mW

] Input Energy[

μJ

] Efficiency[

%

]

1 2.8 114 30.6

2.6 2.5 99.9 37.2

5 1.8 118 30.9

8 1.3 94.7 34.0

11 0.8 106 23.9

20 0.4 118 17.6

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最後に本章のまとめを以下に示す。本章では先端に荷重を付加することによってピエゾ素子 の高出力化を実現した。荷重の付加はステップ入力と外部振動による両方の応用例から有効で あることも確認した。ならびに錘の配置によってその出力,振動モードの変化についてもシス テム同定法を駆使し,解析そして考察した。上記に加えて,一質点デバイスに対し強制加振試 験を行うことによって一質点デバイスに外部振動を印加する条件での最適な荷重を実験的に 導出し,その際の効率についても言及した。

本章における最適荷重を付加した際の出力エネルギーは一周期35µJであり,前述の省電力 通信機器による実用を鑑みれば,初期送信に12mJ,定期送信に5mJ必要そして共振周波数が 67Hzだった理由から,初期送信に343周期,定期送信149周期程度つまり初期送信に5.1秒,

定期送信に2.2秒必要になることが概算できる。

上述の考察より実用化可能であると予測される。一方で,実用化が厳しい理由が二点ある。

一点目は最も発電特性の良い共振周波数で加振しているため,67Hz以外の振動には対応する ことができないことである。自動車振動などの共振周波数は一次モードが15Hz,二次モード が50Hz程度であるため上述の概算よりもずっと時間がかかることが想定される。二点目は上 記の最適荷重を付加した時の出力は加振器が1.5Gという大きな加速度を出した際の数値であ る点である。実際に自動車振動の実用化を考えた場合,市街地を走行した場合,加速度の約

68.3%が0.46G以内に包括され,ワインディングロードでは0.54Gまでが約68.3%,砂利道

では0.48Gまでで約68.3%となっており,如何に大きな加速度を入力しているのか実感でき

ることだろう。

上述より,実用化にこぎ着けるためにはまず,先端に付加する錘の荷重を増やすことそして,

更に振動を有効に活用して荷重をピエゾ素子に伝える必要がある。錘の荷重を増やすことによ って,小さな加振器の加速度で大きな変位を生じ,出力エネルギーを増加させることができる。

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