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第 3 章 PWM インバータ励磁下のフィルタインダクタ鉄損の計算方法

3.3 ロスマップ法

ロスマップ法は居安,清水らによって提案された,インダクタの鉄損特性図

「ロスマップ」を用いて,降圧チョッパ励磁下やPWMインバータ励磁下のフィ ルタインダクタのような励磁条件に磁界バイアスが含まれる鉄損を計算する手 法である[52]。ロスマップ法で用いる「ロスマップ」は磁界バイアス𝐻0特性,磁 束密度リプル𝛥𝐵特性を記載しており,この鉄損データは図 1.7 で示した降圧チ ョッパ回路と BH アナライザを併用して測定した値である。高純度鉄粉磁性体

(SK-14M:東邦亜鉛)では図3.2に示すロスマップとなる。

ロスマップは降圧チョッパ励磁下におけるインダクタの鉄損特性を記載して いるので,降圧チョッパ励磁下におけるインダクタに発生する鉄損を正確に推 定することが可能である。さらに,ロスマップを応用することで,PWMインバ ータ励磁下におけるフィルタインダクタの瞬時鉄損𝑄HFと高周波鉄損𝑃HFも計算 できる。ロスマップを利用した PWM インバータ励磁下におけるフィルタイン ダクタの瞬時鉄損𝑄HFの計算手順を図3.3に示す。

瞬時鉄損の計算は大きく分類して以下の4つの過程で行われる。第1過程では,

回路シミュレータから PWM インバータ動作時のインダクタの電流・電圧を導

出し磁束密度波形と磁界強度波形に変換する。第 2 過程では,スイッチング周 期の∆𝐵, 𝐻0を算出する。第3過程では,第2過程で求めた∆𝐵, 𝐻0に対応した鉄損 をロスマップと照らし合わせることで推定する。第 4 過程では,求めた鉄損を 時間軸にプロットする。

瞬時鉄損𝑄HFが計算されると高周波鉄損𝑃HFは(2.18)式を用いて計算できる。

ロスマップ法の第 3 過程である,単相および三相 PWM インバータ励磁下に おける瞬時鉄損の具体的な導出過程を説明する。

1スイッチング期間における磁束密度波形この時にBH平面上に描かれるオー プンマイナーループの形状を図 3.4(a)に示す。1 スイッチング期間における点 a から点 c の実際の励磁波形は∆𝐵1 ≠ ∆𝐵2,𝑇1 ≠ 𝑇2,𝐻01 ≠ 𝐻02となる条件である が,ロスマップ法ではオープンマイナーループの開始と終了の点(a点とc点)が 極めて近いと仮定して,オープンマイナーループを図 3.4(b)が示すように∆𝐵1 =

∆𝐵2,𝑇1 = 𝑇2,𝐻01 = 𝐻02としてクローズドマイナーループになるように近似し ている。点 a から点 c までのオープンマイナーループに起因する鉄損はロスマ ップに記載している鉄損データ𝑄HF(∆𝐵1, 𝐻0)より計算される。ただし,a 点と c 点が大きく離れている場合にはロスマップ法でフィルタインダクタの鉄損を計 算すると誤差が生じる。

図3.2高純度鉄粉磁性体のロスマップ(励磁周波数f=10kHz)

0 40 80 120 160 200

0 2000 4000

Instantaneousiron lossQHF[J/m3]

PremagnetizationH0[A/m]

ΔB=300[mT]

ΔB=400[mT]

ΔB=100[mT]

ΔB=200[mT]

B(t)

H(t)

Loss [J/m3 ]

H0 [A/m]

〈Loss map〉

ΔB1

ΔB3 ΔB2

H0

H0

ΔB1

Loss [J/m3]

Step:1 Simulate the waveform Step:2 Calculate the parameter

Step:3 Read the loss map

Loss locus Time [ms]

Q[J/m3]

Step:4 Plot the loss

図3.3 ロスマップ法による鉄損計算の流れ

b

a c

t

Δ

B1 at H01

Δ

B2 at H02

T2 T1

Tsw

Δ

B2

a c

b

H B

H01 H02

Δ

B1

(a) 1スイッチング期間の励磁波形とオープンマイナーループ

a c

b

H B

H0

Δ

B1

a c

b

H0 H B

Δ

B1

(b) 閉ループ近似と対応するロスマップの鉄損 図3.4 ロスマップ法による1スイッチング期間の鉄損計算