第 5 章 実機を使用した実験的検証 35
5.1.1 レールの改良
図 5.1: レール接触時のロボット
図 5.2: レール転落時のロボット
どちらの問題も想定以上の摩擦抵抗が発生したために起きたと推測する.まず,レール 接触の問題についてはロボット改良前にも発生していた.改良後は,採用したフレームが 滑動可能であるため,ロボットの重心位置を自在に調整することが可能である.これを踏 まえ,調整を行い動作させたが,改善の余地がなかった.従って,この問題の原因はレー ルにあると推測した.考えられる問題として以下の点が挙げられる.
• 各レールの高低差
• 各レールの固有振動数
• 各レール表面の摩擦係数
• 実験環境の傾き
これらによってロボットの進行方向以外の方向に僅かな作用が起こり,レールへの接触や 転落が起きたものと考えられる.以下より,これらの要因について考察する.
各レールの高低差
初めに,各レールの高低差について考察する.この高低差の原因は,様々な要因による 誤差によって発生する.一つ目は,組み立て時に発生する誤差である.二つ目は,各部品 そのものに存在する誤差である.三つ目は,温度による膨張で発生する誤差である.
組み立て時に発生する誤差について説明する.レールを組み立てる際,これに使用する 各部品をねじ止めをする.しかし,この位置を目的の通り完全に一致させることは困難で ある.また,ねじ止めの強さも完全に同一にすることは困難となるため,その力の差に よって固定位置が異なる.最終的にはそれらの誤差が積算されてしまう.
各部品そのものに存在する誤差は,同一の部品の場合でも必ず存在する誤差である.現 在の加工技術では,その誤差を無くすことは不可能であるため,誤差のある状態で使用し なければならない.この誤差は多くの部品を組み合わせることによって積算されてしまう.
温度による膨張で発生する誤差は,各部品ごとに温度差が発生するとその膨張量にも差 が発生し,その差が誤差となって現れる.
一つ目と二つ目の誤差は,全体を組み立てた後に角度計等の測定機器を用いて部品の位 置を調整し,減少させることが可能である.三つ目の誤差は,厳密な温度管理を行うこと で対策可能である..現在の実験環境では,厳密な温度管理は困難なため,部品の位置調 整を行うことでレールの高低差を減らす.
各レールの固有振動数
次に,各レールの固有振動数について考察する.レールの振動が確認されたが,ロボッ トの揺動がレールの固有振動数と一致し共振したと考えられる.固有振動数は,物体の形
状や材質等から算出されるため,前述の誤差によりレール毎の固有振動数が僅かに異なっ たためにロボットの移動方向が変わったと推測できる.
この対策として,固有振動数を変える方法が挙げられる.固有振動数を変更することで ロボットの揺動による振動を防ぎ,移動方向の差異を減らす.固有振動数は,形状等から 決定されるため,フレームの追加や重りを搭載することで変更が可能である.
各レール表面の摩擦係数
次に,レール表面の摩擦係数について考察する.摩擦係数は,原則的に材料が全く同じ ならば等しくなる.しかし,摩擦係数が決定されるもう一つの要因として,表面状態があ る.多くの文献に示されている摩擦係数の測定は,研磨工程後に洗浄した試料を使用す る.レールに使用したフレームは,表面状態を均一化されたものではないため,その摩擦 係数も同一ではなく,僅かな差異があると推測できる.レールを研磨し,表面状態を限り なく均一にすることでこの差異を減少させることが可能である.
実験環境の傾き
最後に実験環境の傾きについて考察する.レール全体の誤差が完全な零だとしても,そ れを置く地面が傾いている場合には正しい実験結果は得られない.この対策として,板を 引き,水平器を使用して完全に水平な環境を構築する方法や水平台を使用する方法が挙げ られる.
以上の考察を踏まえ,最終的に以下の対策を採る.
• 角度計を用いたレールの位置・高さ調整
• 補助フレームを使用し,レールの固有振動数変更
• レール内部に研磨した角棒を設置(図5.3参照)
図 5.3: 角棒を設置したレール
図 5.4: 実際の実験環境
対策を施した実験環境は,図5.4に示すものとなった.また,レールには目盛を追加し,
移動距離の測定を容易にした.この結果,ロボットが進まない現象や進行を停止する現象 を無くすことに成功した.