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第3章 リーダー評価過程に所属期間が与える影響【研究 3】

第 4 節 考察

本章では, リーダー評価がフォロワーの未来展望, および組織コミットメントに与える 影響について検討を行った。そして, フォロワーの所属期間によって, その影響に差異が認 められるかについても併せて検討を行った。

人格評価

能力評価

楽観的な 期待

自己成長の 期待

不利益の 予測

内在化 愛着

.41***

.26*

.25†

.50**

.26*

.25†

.53***

-.29***

.68***

R2= .17

R2= .07

R2= .47

R2= .58

***p< .001, *p< .05, †p< .10 GFI = .92, AGFI = .82, RMSEA = .09

Figure3-2リーダー評価が組織コミットメントへ与える影響モデル(長期者)

註: 誤差変数は図から省略した

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まず, フォロワーの未来展望が組織コミットメントに与える影響については, 集団への 所属期間の短期者,長期者ともに,肯定的な未来展望が組織コミットメントを高めることが 明らかになった。この結果から, 集団において肯定的な未来展望が得られるほど, 組織コミ ットメントは高くなるという, 仮説1は支持された。Schein (1978) は, 組織に参入した初期 の段階においては, 組織および個人の役割についての「将来像」を獲得することが重要であ ると述べているが, 新入成員に限らず長期に渡って肯定的な将来像の獲得は重要であるこ とが示された。特に, 自己成長の期待については愛着と内在化の両因子に与える影響が2つ のモデルに共通して認められ, 長期者のモデルにおいては強い影響が認められた。つまり, フォロワーは集団内での役割を自己の中に見出すとともに, 集団活動の中で何かを得て, 自分自身の成長ができると感じることが集団適応に結びつくことが示された。

次に, 所属期間とリーダー評価との関連については, 有意な相関関係は認められず, 所属 期間が長くなっても, リーダー評価は高くならなかった。Graen & Uhl-Bien (1991) は, 時間 経過と共に, リーダーとフォロワーの交換関係は発展し, 信頼や親密感のような心理的な 交換もなされるとしている。しかし, 本研究の結果をふまえると, 所属期間の長さなどの単 純な接触機会の量ではなく, その期間にどのような相互作用を行ってきたかという関係の 質が重要である可能性が考えられる。そのため, 今後はリーダーとフォロワーが集団に所属 してからの時間経過とともに, どのような関係形成をして, フォロワーはどのように評価 していくのかについて, 詳細な分析が必要になる。

次に, 所属期間の短期者については, リーダーの人格評価が高いほどフォロワーの肯定 的な未来展望が得られていた。そして, 人格評価が未来展望を媒介した, 集団適応に与える 間接効果も認められた。一方,所属期間が長いフォロワーについては, 人格評価が未来展望 に与える影響は有意ではなかった。また,人格評価から集団適応への直接的影響もみられな かった。以上より,仮説2は支持された。つまり,Fiske et al. (2006) および2章で予測した 通り, 人格評価が集団適応に与える影響の間には集団における肯定的な未来展望が存在し ていることが明らかになった。つまり, リーダーの人格を高く評価することで, フォロワー は集団においてリーダーからの援助が期待できるという認知を行い, 集団に関与していく と考えられる。ただし,予測した通り,そのような効果は集団への所属期間が短いフォロワ ーに限られていた。

一方で, 所属期間が長いフォロワーについては,短期者では認められなかった, 能力評価 が未来展望に与える影響が有意であり, 能力評価が高いほど肯定的な未来展望が得られて

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いることが明らかになった。つまり, 所属期間が長いフォロワーの未来展望に対してリーダ ーへの人格評価は影響を与えないものの,能力評価については影響力が認められた。Fiske

et al. (2006) によれば, 人格評価は「自分に援助してくれる人かどうか」を判断する基準で

あり, 能力評価は「その援助を実際に実行することができる人であるか」を判断する基準と なる。つまり, 集団への所属期間が長くなるにつれて, リーダーからの援助が得られるとい う認知が担保され, その次の段階である能力評価が未来展望に働きかけるようになったと 考えられる。また, 所属期間が短い新入成員の場合, 集団の中での不安が高く, 情報を収集 することでその不安を低減することが必要であると考えられる。しかし, 所属期間が長くな ると, 集団の中で自分自身の役割が確立され, 単に集団に居ることに不安を感じなくなる と考えられる。そして, Maslow (1954) の欲求階層説でも示されている通り, 集団への所属が 安定すると, フォロワーは他者からの承認や自己実現を目指すようになると思われる。その 時に, 自分の未来の自己像として, リーダーをモデルとし, リーダーの能力が高いと評価す るほど, 将来の自己が望ましいものであると認知するのではないだろうか。

以上より, 本章ではリーダー評価が集団適応に与える影響について, 未来展望が媒介す る間接効果を検討した。その結果, リーダー評価が高まるほど, 集団に所属していくことの 肯定的な将来像が形成され, 組織コミットメントが高くなることが明らかになった。そして, リーダー評価が未来展望に与える影響は, フォロワーの所属期間の長さによって異なり, 新入成員にとっては人格評価が, 比較的長期になるにつれて能力評価が重要な要因となる ことが示された。しかし, 本研究は, 横断的調査であるため, 所属期間が長くなるにつれて リーダー評価の重要性が変化する過程を, 十分に検討できたとは言い難い。そのため, フォ ロワーが集団に新規参入してから縦断的に調査を行い, リーダーとフォロワーの関係の進 展を測定するとともに, リーダー評価がフォロワーの将来展望, および組織社会化に与え る影響を検討する必要があるだろう。

本章の註釈

註 3. 森下 雄輔・谷口 淳一 (2014). 新入成員の組織社会化にリーダー評価が与える影響 日本応用心理学会第81回大会発表論文集, 23.

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