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ラマン ラマン ラマン ラマン分光 分光 分光 分光

第三章 結果 結果 結果 結果と と と と考察 考察 考察 考察

3.3 ラマン ラマン ラマン ラマン分光 分光 分光 分光

3.3.1 PVA

の のラマン の の ラマン ラマン分光特性 ラマン 分光特性 分光特性 分光特性

Fig. 3-17はPVAのラマンスペクトルである.(a)は80~1750 cm-1,(b)は2000~2200 cm-1 の領域のラマンスペクトルである.

このように,PVAのピークは複数あるが,そのうちもっとも評価しやすいピークは2900 cm-1付近のピークである.その理由は,他のピークはG-band付近にあり,したがってG-band の裾野に隠れるからである.また,2900 cm-1のピークは他のピークに比べて大きい.なお,

2000~2200 cm-1のピークは室内の蛍光灯によって発生するものである.

よって,複合材のラマン分光特性を測定するとき,80~1750 cm-1領域ではなく,1550~3000 cm-1の領域の測定を行う.

0 1000

Intensity (arb. units)

Raman Shift (cm–1)

(a)

2000 3000

Intensity (arb. units)

Raman Shift (cm–1)

(b)

3.3.2

ラマン ラマン ラマン ラマン分光 分光 分光 分光による による による複合材断面 による 複合材断面 複合材断面の 複合材断面 の の の測定 測定 測定 測定

ラマンスペクトルの測定では,光学顕微鏡を利用してレーザーを測定する対象に当てる.

光学顕微鏡は倍率を変化させることができ,最高倍率である100倍の場合,レーザーのス ポット径は最小となり,その大きさは約1 µmである.複合材は最低でも20 µm程度の厚 みを持つが,それに対してレーザーのスポットが十分小さいことから,複合材断面の局所 的なラマンスペクトルの測定が可能である.

Fig. 3-18は複合材断面にレーザーを照射した時の様子である.なお,この複合材は,5 %

のPVA水溶液を使用したものである.画面中央部を縦に横断しているものが複合材断面で あり,左側がSWNT部分である.青い光がレーザーのスポットである.このように,複合 材の断面のうち,局所的な測定が可能であることがわかる.

Fig. 3-19は複合材の断面のSEM像である.複合材内部の情報はSEM像である程度は得

られる.しかし,PVAで埋め尽くされた部分の中に,SWNTが存在する可能性もある.SEM では判断できないので,ラマン分光法により確認する.

なお,このSEM像からは,複合材の全体の厚みは16 µm,そのうちのSWNT部分は6 µm であることがわかる.

Fig. 3-18 顕微鏡で観察した複合材断面.

100μm

複合材断面

Fig. 3-20 複合材断面とレーザー.

複合材の厚み方向に対して,1 µmずつレーザースポットの位置を変化させて測定する.

なお,この厚み方向を,x座標と名付ける.Fig. 3-20の(a),(b),(c)は厚み方向へとレーザ ーのスポットを移動させた時のキャプチャー画像である.(a)と(c)はレーザーがあたってい ないが,見かけの試料の厚さである16 µmよりも測定範囲を広く設定した.実際にレーザ ースポットが複合材にあたっている場合は,(b)のようになる.なお,この測定は,x=0 µm

からx=23 µmまでを1 µm刻みで24点の計測を行った.

(a) レーザー位置 x=0 (b) レーザー位置 x=6 (c) レーザー位置 x=23

Fig. 3-19 SEMで観察した複合材断面

x座標

SWNT部分 PVA部分

以下に測定の結果を示す.

Fig. 3-21の横軸はx座標,縦軸はG-bandの強度で,Fig. 3-22の横軸はx座標,縦軸は

2900 cm-1付近のPVAピークの強度である.

G-band の強い部分とPVAのピークが強い部分の代表的なラマンスペクトルをFig. 3-23

に示す.

黒はx=6,赤はx=16の地点でのラマンスペクトルである.なお,ともに現れる2200 cm-1

付近のスペクトルは,室内の蛍光灯のスペクトルである.

2000 3000

Intensity (arb. units)

Raman Shift (cm–1) x=6

x=16

Fig. 3-23 特徴的な二つのラマンスペクトル.

0 10 20

Gband Intensity (arb. units)

x coordinate(μm) Fig. 3-21 G-bandの強度.

0 10 20

PVApeak Intensity (arb. units)

x coordinate(μm)

Fig. 3-22 PVAのピーク強度.

このように,4~10 µmのところでG-bandが強く,11~17 µmのところでPVAのピークが 強いということがわかる.残りの0~3 µm,18~24 µmの部分は,複合材にスポットが完全 にはあたっていない.G-bandが強い部分の範囲が6µmであり,これはSEM像で観察した SWNT部の厚さと一致する.

ただし,PVA部(11~17 µm)においてG-bandが若干現れる.この地点は,SEMによると SWNTは一切存在しない.考えられることは,1)SEMでは観察できなかったSWNTがPVA 中にいる,2)SWNT部にレーザーがあたってしまっている,の二通りである.そこで,複 合材内部の SWNT がどの程度離れた位置にまでラマン分光により検出されるかを検証す る.複合材から離れた位置x=-10で測定したラマンスペクトルと,既に測定した複合材付 近の位置x=0のラマンスペクトルをFig. 3-24とFig. 3-25に示す.

x=-10 と x=0 のいずれも 1600 cm-1付近に,ノイズに比べてシグナルが弱いが,G-band

が現れている.すなわち,SWNT の G-band はレーザースポットが複合材から遠い位置に あっても,多少検出されてしまうということである.レーザーの一部が拡散して,離れた 位置にあるSWNT部のG-bandを検出しているからと考えられる.

PVAは透明であるので,複合材断面のPVA部に焦点を合わせても,いくらか透き通る.

したがって,同様に,PVA部(11~17 µm)でG-bandが現れるのは,PVA部にSWNTがある わけではなく,SWNT部(4~10 µm)に由来するG-bandを検出しているからである.

以上がVASWNT上に5 %PVA水溶液を満たして作製した複合材のラマンスペクトルで

ある.他の全ての作製条件の複合材においても,同様のデータが得られた.すなわち,SEM 像で確認できるSWNT部ではG-bandのシグナルが強く,PVAのピークが見られなかった.

一方,PVA部では,G-bandのシグナルは微弱であるが検出され,PVAのシグナルが強いと

いう結果となった.

2000 3000

Intensity (arb. units)

Raman Shift (cm–1) Fig. 3-24 x= -10での測定.

2000 3000

Intensity (arb. units)

Raman Shift (cm–1) Fig. 3-25 x=0での測定.