232 第6章 補足と付録
この後の議論は(2)と同様で,広義積分が収束するための必要十分条件はs >2 で,このとき
L[f](s) = 0°1 2°s = 1
s°2. (3)f(t) =tとする.
L[f](s) =Z 1 0
e°stt dt= lim
R!1
Z R 0
e°stt dt
であるが,s= 0ならばこの広義積分が発散することは明らか.s6= 0ならば 部分積分して
Z R 0
e°stt dt= 1°e°sR(1 +Rs)
s2 .
これから,広義積分が収束するための必要十分条件はs > 0で,このとき L[f](s) = 1
s2 であることが分かる.
(4)f(t) =et2とするとき任意の実数sに対して,L[f](s) =1であり,f の
ラプラス変換は定義されない. §
注意 6.49 L[ ]のかっこ [ ]の中に関数を表す文字でなく,直接tの式を 書いて表すこともある.この書き方を使うと上の例の結果はL[1](s) = 1
s, L[e2t](s) = 1
s°2,L[t](s) =1
s と書ける. §
命題 6.50(線形性) (1)関数f,gに対して,L[f](s)がs > aで,L[g](s) がs > bで収束するならば,L[f+g](s)はs >max{a, b}で収束し,
L[f+g](s) =L[f](s) +L[g](s) (s >max{a, b}).
(2)関数f に対してL[f](s)がs > aで収束するとき,任意の実数cに対して L[cf](s)はs > aで収束し,
L[cf](s) =cL[f](s) (s > a).§ 証明は簡単(積分の線形性を使うだけ)なので省略する.
簡単な関数(非同次方程式の特解を発見する方法のところで述べた擬多項 式)のラプラス変換についてまとめておこう.
命題 6.51 (1) 任意の複素数aに対して L£
eat§
(s) = 1
s°a (s >Rea).
(2) 任意の自然数nに対して L
∑ tn°1 (n°1)!
∏
(s) = 1
sn (s >0).
(3) 任意の実数!に対して L[cos!t] = s
s2+!2, L[sin!t] = ! s2+!2.§ 証明 (1)は上の例と同様なので略する.(2)は部分積分によって
L£
tn+1§(s) =n+ 1
s L[tn](s)
という漸化式を得るので後は帰納法を用いればよい.(3)はEulerの公式を 使って,
L[cos!t](s) =L
∑ei!t+e°i!t 2
∏
(s) =L£
ei!t§(s) +L£
e°i!t§(s) 2
= 1 2
µ 1
s°i! + 1 s+i!
∂
= s
s2+!2, L[sin!t](s) =L
∑ei!t°e°i!t 2i
∏
(s) =L£
ei!t§(s) +L£
e°i!t§(s) 2i
= 1 2i
µ 1
s°i! ° 1 s+i!
∂
= !
s2+!2.§
注意 6.52 上の命題の内容は次のように一般化してまとめられる.
L
∑tư1 Γ(Æ)eat
∏
= 1
(s°a)Æ (s >Rea).
ただしΓ はガンマ関数3)を表す. §
3)ガンマ関数については第4章で学ぶ.aが自然数のときΓ(a) = (a°1)!.
234 第6章 補足と付録
6.21.2 逆ラプラス変換
ラプラス変換L[f](s)が恒等的に0になるような関数fは,それ自身恒等 的に0であることが証明できる.ゆえに与えられた関数'に対して,任意の sに対してL[f](s) ='(s)が成り立つような関数fは,もし存在するならば 一意的に定まる:
L[f1] =L[f2] =' =) f1=f2.
そのようなfのことを'の逆ラプラス変換とよび,L°1['](t)で表す.
例 6.53 L[1](s) = 1
s であるから,L°1
∑1 s
∏
= 1,L[e2t](s) = 1
s°2 である から,L°1
∑ 1 s°2
∏
(t) =e2t. L[t](s) = 1
s2 であるから,L°1
∑1 s2
∏
=t. § ラプラス変換の線形性から,逆ラプラス変換の線形性
L°1['+√](s) =L°1['](s) +L°1[√](s), L°1[c'](s) =cL°1['](s) (ただしcは定数)
が導かれる.
不定積分の計算をするための方法として,事前に色々な関数の導関数を調 べておいて,それを逆向きに読むということがかなりの部分を占めたが,逆 ラプラス変換の計算でも事情は似ていて,事前に色々な関数のラプラス変換 を調べておいて,それを逆向きに読むことで逆ラプラス変換を求めることが 多い.
よく使われるものを表にしてまとめておこう.
f(t) '(s) =L[f](s) 収束範囲 原関数 ラプラス変換
1 1/s s >0 tnf(t) (°1)n'(n)(s)
tn n!
sn+1 s >0 1
tf(t) 1
s
'(s)ds
eat 1
s°a s >Rea eatf(t) '(s°a)
sin!t !
s2+!2 s >0 f0(t) s'(s)°f(0)
cos!t s
s2+!2 s >0
t 0
f(t)dt 1
s'(s)
sinh!t a
s2°!2 s >|!| f(t°a)(a∏0) e°as'(s)
cosh!t s
s2°!2 s >|!| f(at)(a >0) 1 a' s
a
6.21.3 微分方程式への応用
定理 6.54 任意の自然数nについて
(2) L[f(n)](s) =snL[f](s)°sn°1f(0)°sn°2f0(0)°· · ·°f(n°1)(0).§ 証明 任意の正数Rに対して
Z R 0
e°stf0(t)dt=£
e°stf(t)§R 0 +s
Z R 0
e°stf(t)dt.
R! 1のときe°sRf(R)!0となるので,
L[f0](s) =sL[f](s)°f(0).
この公式を2回使って
L[f00](s) =L[(f0)0](s) =sL[f0](s)°f0(0)
=s(sL[f](s)°f(0))°f0(0)
=s2L[f](s)°sf(0)°f0(0).
以下同様にして(2)が示せる(正確には帰納法による). § この定理は定数係数線形常微分方程式を解くために利用できる.
236 第6章 補足と付録
例 6.55(定数係数線形常微分方程式の初期値問題) 微分方程式の初期値問 題
y00°y= 1, y(0) = 0, y0(0) = 1
を考える.この微分方程式の両辺のラプラス変換を取り,線形性を用いると L[y00](s)°L[y](s) =L[1](s).
定理6.54を用いると
s2L[y](s)°sy(0)°y0(0)°L[y](s) =L[1](s).
初期条件とL[1](s) = 1/sを代入して,
s2L[y](s)°s·0°1°L[y](s) =1 s. L[y](s)について解くと
L[y](s) = 1 s(s°1). 右辺を部分分数分解して
L[y](s) = 1 s°1 °1
s. これを逆ラプラス変換すると
y=L°1
∑ 1 s°1
∏
(t)°L°1
∑1 s
∏
(t) =et°1.§
問題
1. 積分を直接計算することによって,つぎの関数のラプラス変換を求めよ.
また本文中で紹介した定理を利用する別解も考えよ.
(1)t2 (2) sinat (3) cosat (4)teat (5)eatcosbt (6)eatsinbt 2. つぎの関数のラプラス変換を求めよ.
(1)e°2t+ 2e°5t (2) 1°e°t (3)°5e°2t+ 8e°3t (4) 2 +e°2t°3e°3t (5)e°t°e°5t (6)e°tcos 2t+e°tsin 2t (7) 1°2 sin 5t
(8) 1 a2
µ t°1
asinhat
∂
(9)tcosht (10)e°3t+ 2e°tcost°e°tsint
3. つぎの関数の逆ラプラス変換を求めよ.
(1) 3s+ 9
s2+ 7s+ 10 (2) 1
s(s+ 1) (3) 3s+ 1
s2+ 5s+ 6 (4) 7s+ 12 s(s+ 2)(s+ 3)
(5) 4
s2+ 6s+ 5 (6) s+ 3
s2+ 2s+ 5 (7) s2°10s+ 25
s(s2+ 25) (8)° 1 s2(s2°a2) (9) s2+ 1
(s2°1)2 (10) 3s2+ 9s+ 5 (s+ 3)(s2+ 2s+ 2)
4. ラプラス変換を利用して,つぎの初期値問題を解け(独立変数はt).
(1)y00°2ay0+a2y= 0, y(0) =b,y0(0) =c (2)y00°3y0+ 2y= 0, y(0) = 3,y0(0) = 1 (3)y00+y=t,y(0) = 1,y0(0) = 3
(4)y000+y00+ 4y0+ 4y=°2,y(0) = 0,y0(0) = 1,y00(0) =°1 (5)y00°y0°6y= 3t2+t°1,y(0) =°1,y0(0) = 6
(6) 4y00+y=°2,y(0) = 0,y0(0) = 1/2 (7)y00+ 2y0+y=et,y(0) = 0,y0(0) = 0 (8)y00+ 2y0+ 3y= 3t,y(0) = 0,y0(0) = 1 (9) 2y00+ 6y= 1,y(0) =a,y0(0) =b (10)y00+ 3y= sint,y(0) = 0,y0(0) = 0
(11)y000+y0=e3t,y(0) = 0,y0(0) = 0,y00(0) = 0
5. ラプラス変換を利用して,つぎの連立微分方程式の初期値問題を解け.
( y0=ay+bz+p(z) z0=cy+dz+q(z)
( y(0) =k
z(0) =` (a, b,c,d, k,`は定数)
(逆ラプラス変換を実行する必要はない.)