Scheme 52. Synthesis of methylenated PLLA
5.3 メチレン化ポリ乳酸の物性
Figure 21およびTable 8にPLLAおよびメチレン化PLLAのDSC測定結果を示す.メチ
レン化PLLAにおいて,メチレン化率の増加に伴ってガラス転移温度 (Tg) および結晶融解 温度が低下し,結晶融解エンタルピーの減少が観測された.これは,メチレン化PCLと同 様に,カルボニル基がメチレン基に変換されたことで結晶化が阻害されたと考えられる.
Chemical shift δ, (ppm)
Figure 22. 1H NMR spectra of (A) PLLA and (B) methylenated PLLA (CDCl3).
O O
O (A)
(B)
a b b
a
b (end) a (end)
a’ a’
c
c c
73
30 60 90 120 150 180
30 60 90 120 150 180
Heat flow (←Endo)
Temperature, ℃
Heat flow (←Endo)
(A) (B)
(C) (D)
Temperature, ℃
(A)
30 40 50 60 70
(a) (a)
30 40 50 60 70
(b) (b)
(E) (F) (G)
Figure 21. DSC curves of (A) PLLA and methylenated PLLA [(B) run 1, (C) run 2, (D) run 3, (E) run 4, (F) run 5, (G) run 6] (1st heating run).
74 5.4 結言
PLLA においても PCL と同様にジメチルチタノセンを用いたメチレン化反応によって,
メチレン基の導入が可能であった.ジメチルチタノセン溶液中のTHFを除去することで,
反応性が向上し,メチレン化が進行しやすくなった.メチレン化PLLAにおいて,メチレン 基が導入されたことで結晶化が阻害され,ガラス転移温度および結晶融解温度が低下し,結 晶融解エンタルピーの減少が起き,メチレン化率が34 %のメチレン化PLLAにおいては,
メチレン基の割合が高いために結晶化が起こらず,非晶性になった.
PLLA単一ポリマーにメチレン基を簡便に導入して例はこれまでにはないため,これから,
新しい官能基化の手法としてジメチルチタノセンを用いたメチレン化反応はおおいに期待 できる.
参考文献
1) T. Fuoco, A. F. Wistrand, and D. Pappalardo, Biomacromolecules, 17, 1383 (2016).
2) H. Sun, M, Y. Z. Chang, W. Cheng, Q. Wang, A. Commisso, M. Capeling, Y. Wu, and C.
Cheng, Acta Biomaterialia, 64, 290 (2017).
3) F. Tasaka, Y. Ohya, and T. Ouchi, Macromolecules, 34, 5494 (2001).
4) T. Ouchi, H. Miyazaki, H. Arimura, F. Tasaki, A. Hamada, and Y.Ohya, J. Polym. Sci.: Part A: Polym. Chem., 40, 1218 (2002).
Methylenated PLLA
Methylenation
(%) Tg (℃) Tm (℃) ΔHm
(mJ/mg)
PLLA ― 57.5 160.7 79.2
run 1 4.4 52.8 149.2 57.4
run 2 13.8 52.1 120.4 53.3
run 3 14.8 45.4 118.1 43.0
run 4 9.9 51.3 142.4 50.8
run 5 24.7 43.6 114.3 39.7
run 6 34.8 46.5 ― ―
Table 8. Tm and ΔHm of PLLA and methylenated PLLAs (runs 1-6).
75 5) K. Pagar and P. Vavia, Sci. Pham, 81, 865 (2013).
Y. Xu, W. Ren, H. Zhou, G. Gu, and X. Lu, Macromolecules, 50, 3131 (2017).
76 第6章
総括
第1章では,高分子材料の発展とそれに伴う様々な問題点を取り上げ,本論文との関係性 を明らかにし,本研究の目的を明確に示した.
第2章では,ジメチルチタノセンを用いたPCLのメチレン化を行った.メチレン化反応 は,高温かつ短時間反応させることで,分子量の大きな低下や架橋による不溶化を起こさず,
元のPCLの性質をある程度維持したまま,メチレン基を導入することが可能であった.ま た,カルボニル基がメチレン基に変換されたことで,結晶化が阻害され,結晶性の低下によ って結晶融解温度が低下し,結晶融解エンタルピーが減少することを確認した.
第3章では,チオール-エン反応を用いることで,メチレン化PCLに種々の官能基を導入 し,種々の官能基化PCLを合成した.官能基化PCLは,メチレン基の消失および官能基が 付加されたことで,元のメチレン化PCLよりも結晶融解温度が上昇し,結晶融解エンタル ピーは元のPCLと同程度まで増加することを見出した.
第4章では,これまでと異なるアプローチとして,ラクトンモノマーにメチレン基を導入 したメチレン化ラクトンモノマーを合成することで,PCLにメチレン基の導入を行った. α-MBL と CL を共重合することでメチレン基を導入した P(CL-MBL)共重合体を得たが,α-MBLが開環しにくいため,副反応であるα-MBLのメチレン基同士によるα-MBLホモポリ マーが生成されてしまった.α-MCLとCLの共重合によってメチレン基を有するP(CL-MCL) 共重合体を得た.α-MCL は容易に開環し,α-MBL
の様な副反応は起こらなかった.P(CL-MCL)は第 3章と同様にチオール-エン反応によって種々の官能基の導入が可能であったが,
官能基化P(CL-MCL)は,官能基がエステル基に隣接していることから,直接メチレン化PCL
のチオール—エン反応による官能基化PCLとは異なり,結晶融解温度の上昇や結晶融解エン タルピーの増加は見られないことを確認した.
第5章では,直接メチレン化の応用として,PLLAの直接メチレン化を行った.メチレン 化PLLAはメチレン化PCLと同様に,メチレン基が導入されたことで結晶化が阻害され,
ガラス転移温度および結晶融解温度の低下や結晶融解エンタルピーの減少が見られた.ジ メチルチタノセンのTHFを除去することで,メチレン化の反応効率が上昇することを見出 した.
以上、ジメチルチタノセンを用いたPCLおよびPLLAの直接メチレン化反応によってメ チレン基を簡便に導入することが可能であった.また,チオール-エン反応によって種々の
77
官能基の導入が可能であった.これらの一連の反応を用いることで,様々なポリエステルの 簡便な官能基化の手法として,大いに期待できるものである.得られた新材料は、メチレン 基を利用して高強度化,異種材料との複合化,または導入したカルボキシル基,アミノ基や 水酸基を利用して生理活性分子の固定化など,生分解性を生かした環境系材料,生体材料へ の応用展開が期待できる.
78 研究業績
【学術論文】
1. Hiroshi Yamashita, Toru Hoshi, Takao Aoyagi, Direct methylenation of carbonyl group in poly(ε-caprolactone) chain using petasis reagent and further functionalization, Transactions of the Materials Research Society of Japan, Vol. 42, No. 2, pp. 47-50 (2017)
2. 山下 博,星 徹,青柳 隆夫,医用材料への応用を目指したチオール-エン反応によるメ チレン化ポリカプロラクトンの官能基化,Koubunshi Ronbunshu, 75, 48 (2018)
【学会発表】
1. 山下 博・菅生 将広・仲野 尚弘・佐々木 大輔・星 徹・萩原 俊紀・澤口 孝志,ゴ ム系アイオノマーの合成と物性,第61回高分子討論会,1Pe073,2012年9月
2. 山下 博・水口 翔平・佐々木 大輔・星 徹・萩原 俊紀・澤口 孝志,ポリプロピレン -ポリアクリル酸共重合体系アイオノマーの熱挙動,第62回高分子学会年次大会,2Pe047, 2013年5月
3. 山下 博・佐々木 大輔・星 徹・萩原 俊紀・澤口 孝志,トリブロック共重合体系アイ オノマー中の酸ブロック鎖の熱挙動,第62回高分子討論会,1Pb030,2013年9月
4. 山下 博・佐々木 大輔・星 徹・萩原 俊紀・澤口 孝志,ポリオレフィン系共重合体ア イオノマー中のアクリル酸ブロック鎖の熱的性質,日本化学会第94春季年会,2PC-092 5. 山下 博・佐々木 大輔・星 徹・萩原 俊紀・澤口 孝志,含水したポリアクリル酸金属
塩の熱的性質,第63回高分子年次大会,1Pe029,2014年5月
6. 山下 博・佐々木 大輔・星 徹・萩原 俊紀・澤口 孝志,ポリプロピレン共重合体系ア イオノマーにおけるイオン凝集体の形成に与える水の影響,第63回高分子討論会,2Pe025, 2014年9月
7. 山下 博・平松 達郎・渡邉 保奈美・佐々木 大輔・星 徹・萩原 俊紀・澤口 孝志,
トリブロック共重合体系アイオノマーにおけるイオン凝集体と水の関係,日本化学会第 95 春季年会,4B1-06,2015年3月
8. 山下 博・平松 達郎・渡邉 保奈美・佐々木 大輔・星 徹・萩原 俊紀・澤口 孝志,
ポリオレフィンブロック共重合体系アイオノマーにおけるイオン凝集体の熱特性,第64回 高分子学会年次大会,1F05,2015年5月
9. 山下 博・竹原 佑哉・波田野 杏・佐々木 大輔・星 徹・萩原 俊紀・澤口 孝志,PP の精密熱分解生成物を利用した新規PP複合材料分散剤の開発,第4回高分子学会グリーン ケミストリー研究会シンポジウム,P4,2015年8月
10. 山下 博・佐々木 大輔・星 徹・萩原 俊紀・澤口 孝志・青柳 隆夫,トリブロック共 重合体系アイオノマー中のセンターブロック鎖がイオン凝集体の形成と崩壊に与える影響,
第64回高分子討論会,1F09,2015年9月
11. 山下 博・佐々木 大輔・星 徹・萩原 俊紀・澤口 孝志・青柳 隆夫,トリブロック共