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中性条件における牛ミオグロビン構造に対するトレハロース の効果

第 5 章 ミオグロビンの酸変性及びアミロイド様 凝集体形成に対するトレハロースの効果

5.3 結果及び考察

5.3.1 中性条件における牛ミオグロビン構造に対するトレハロース の効果

図5.1にpH 7.0における牛ミオグロビンWAXS曲線のトレハロース濃度依存

性を示す。これまでのWAXS実験と同様に、トレハロースの添加によるコント ラスト変化が生じているため、このWAXS曲線を直接評価することは困難であ る。そこで、CRYSOLを用いて牛ミオグロビンの理論構造(PDBコード: 1Z2S)か ら研鑽される理論散乱関数と実測したWAXS 曲線のフィッティングを行い、ず れ因子χ2 を評価した(図 5.2)。フィッティングはタンパク質の外形を反映する 0.041 Å–1 < q < 0.2 Å–1の小角領域で実施した。これを見ると、pH 7.0の中性溶媒 中でもχ2値が大きく、牛ミオグロビンの溶液構造が理論構造に比べて緩んだ構 造をとることを示唆した。その傾向は5% w/wおよび10% w/wのトレハロース 溶液中でも同様であった。さらに濃度を上げると15% w/wからχ2値が減少し、

25 % w/w以降に急減した。この結果は、トレハロースの添加によりが緩んだタ

ンパク質構造がコンパクトな理論構造へ近づいたことを示すものである。

3 章および4 章と同様に理論散乱関数のシミュレーションを用い、トレハロ ースの牛ミオグロビン水和構造への効果についても検討を行った。ここでは4章 と同様に選択的溶媒和モデル、中性的溶媒和モデルおよび選択的排除モデルの3 つのモデルに基づいてシミュレーションを実施した。図5.3Aに規格化したI(0)1/2

の実測値と理論値を比較したものを示す。実験値は全てのトレハロース濃度で 中性的溶媒和傾向を示し、トレハロース分子は牛ミオグロビンの水和殻から完 全に排除されはしないが、排除される傾向があることが明らかとなった。図XB にはRgの実測値と理論値を比較したものを示す。上で述べたように、牛ミオグ ロビンの溶液構造はトレハロース濃度に依存してコンパクトな理論構造に近づ く。従ってタンパク質の外形を反映するRgを規格化した上で比較することは不 適切であり、ここでは実測値は規格化せず比較を行った。図5.3Bを見ると、ト レハロース非存在下では実験値が理論値から大きく乖離しており、牛ミオグロ ビンの溶液構造が結晶構造に比べて広がった構造をとることを示した。χ2値が

大きい0~10% w/wについては溶液構造が理論構造と異なると考えられるため、

理論値との比較は不適当である。15% w/w より高濃度では、中性的溶媒和モデ ルに従った。従って、I(0)と同様にタンパク質表面からトレハロース分子が排除 される傾向を持つことを示した。

5.1. pH 7.0における牛ミオグロビンWAXS曲線のトレハロース濃度依存性。

5.2. 牛ミオグロビンWAXS曲線の理論散乱関数とのフィッティング結果。挿 入図は実験値と理論値のずれ因子χ2値のトレハロース濃度依存性を示す。

5.3.2 ミオグロビンの酸変性によって生じるアミロイド様凝集体