第 2 章 文献レビュー
2.6. マネジメント体制
フィランソロピーへの関心の高まりと共に、具体的な「体制づくり」を急ぐ 企業が増えてくるのである。本節では、以下の3つについてレビューを行って 日本企業のフィランソロピーにおける「マネジメント体制づくり」を明らかに したい。
9 「企業市民」とは、(丹下、1994)によると「個人と同じように企業も社会に対して責任を負 っている」ということを表している。
2.6.1. フィランソロピー活動推進のための社内体 制・制度導入状況
表2-5から2003~2005年度の3年間に導入されたフィランソロピー活動を 推進するための制度は329件と全件数の35.4%を占める。
表2-5 フィランソロピー活動推進のための制度
出所:日本経済団体連合会、2006
特に、「基本方針の明文化」、「専門部署または専任担当者の設置」、「社内横断 的組織の設置」における増加が顕著である。フィランソロピー活動の体制が整 備されつつあることが伺える。
2.6.2. 企業理念を反映した経営の担保
企業理念は単に飾りとして掲げるものではない。それは企業経営方向向け、
企業文化を築くための根幹であり、社内全体に繰り返し伝え、浸透させるのが 経営トップの役割である。
経営理念を社内に浸透させ、その浸透度合を把握する努力はしているものの、
価値観の共有は必ずしも十分ではないという姿も浮き彫りになった。
図2-14 経営理念の明文化と浸透努力
図2-15 経営理念で掲げた価値観の浸透
出所:経済同友会、2004
図2-12、13から、浸透努力はしているが、価値観の共有はまだ十分ではな いことが分かる。そこで、「社会貢献専門部署」を設置して、フィランソロピー 活動の理解を促進して、全社内での価値観の共有を実現する。
2.6.3. 経営トップの選任・評価の仕組み
進化しつつある市場の進化、現実の中、ビジネス環境の変化に的確に対応し ながら社会に対して責任を持って社会に貢献活動をする。また、持続的に企業 価値を創造していくためには、経営者個人の資質に過度に依存するのでなく、
経営者が健全なプレッシャーの下で適切な意思決定を行うとともに、客観的な 視点から選任・評価し、場合によって解任できる仕組みを持つことが必要であ る。
図2-16 現社長以外が次期社長候補者の選考に関与する仕組み
出所:経済同友会、2004
図2-17 社長経験者以外が現社長の業績を評価し、場合によっては 解任できる仕組み
出所:同上
形式よりも機能が重要である。上から、客観的な仕組みを持つ企業は半数以 下に止まるとともに、仕組みはあっても「十分機能している」とはいえない状 況が分かる。経営トップの選任・評価の仕組みと「業務執行」と「経営監督」
の分離が求められる。
日本においても、個人やNPOなどが市民社会を形成し、新しい社会のガバナ ンスが生まれることが期待されている。企業にとっても、単なる金銭的支援に 止まらず、社会の多様な主体との積極的な対話、協力、協働を通じて、社会の 価値観を経営に反映させたり、より良い社会の実現に寄与していくことが求め られている。その意味で、「企業理念を反映した経営の担保」、「経営トップの選 任・評価の仕組み」はより一層進めるべき課題であると考えられる。