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マイクロサーフェシング工法の適用性について

ドキュメント内 asphalt (ページ 37-43)

1960年代後半から1970年代前半にかけてドイツで開発 され,既設舗装の延命化を図る予防的維持工法(表面 処理工法)として,1980年代から欧米をはじめ,オー ストラリア,東南アジア等世界各地で採用されている。

我が国では1990年代の始めから導入され,既に60万

g

の実績がある。

MS工法はスラリーシール工法によく似た工法であ るが,スラリーシール混合物は水分が蒸発することに よりアスファルト乳剤が分解し強度発現が起こるのに 対し,MS混合物は化学的な反応で乳剤が分解し強度 発現する点が異なる。

橋面舗装の維持修繕への

マイクロサーフェシング工法の適用性について

(Micro-Surfacing for Maintenance of Brige Deck Pavement)

特集・橋面舗装

武 田   雄

* たけだ ゆたか 日本道路1技術研究所 研究部長

橋面舗装の維持修繕工法としては,死荷重の増加を抑制するため加熱アスファルト 混合物を用いた切削オーバーレイ工法または薄層のオーバーレイ工法が一般的である。

しかしながら,工事中に発生する衝撃等で床版本体に悪影響を与えることや環境への 負荷が危惧されるため,近年,常温型薄層舗装のマイクロサーフェシング工法が採用 されるようになってきた。本文では,その耐久性および橋面舗装の維持修繕工事に対 する適用性の検討結果を報告する。

MS工法の施工は専用ペーバを用いて行われる。施 工に必要な急硬性改質アスファルト乳剤,選定された 骨材,セメント,水,分解調整剤を専用ペーバに搭載 し,車両の後部に取り付けたミキサにより連続的にス ラリー状の混合物を製造し,牽引しているスプレッダ ボックスに投入する。投入された混合物は専用ペーバ が前進することにより敷きならされる。混合・敷なら しの概念図を図−1に,橋面舗装上における敷ならし 状況を写真−1に示す。

MS工法の特長は以下に示すとおりである。

q

予防的維持工法として最適な工法2)3)であり,予 防的維持をタイムリーに行うことで舗装の供用性 を高いレベルで保持し,トータルコストの低減を 図ることができる。

w

MS工法で維持を繰り返す場合,通常の加熱舗装 と異なり,切削はほとんど必要ない。したがって 舗装材料の使用量は少なく,舗装発生材を抑制す

ることができる省資源工法である。

e1層の施工厚が3〜10 a

と薄層なため4),施工後 の路面高さへの影響が少なく,付帯構造物や建築 限界等の制限により路面の嵩上げができない箇所 への適用が可能である。また,既設舗装の状態に 応じて2,3層の重ね施工が可能である。

r施工速度が10〜20m/min.と速いため,1日当た

りの施工面積が大きく効率的である。さらに施工 後,数時間で交通開放が可能なため交通渋滞を軽 減できる。

t

路面テクスチャを改善し,すべり抵抗性等の機能 回復ができる。

y常温施工のため,多くのエネルギーを必要とせず,

地球環境の保全に役立つだけでなく,夏期の施工 において加熱アスファルト混合物から発生する熱 に曝されないため作業環境の改善ができる。

u老朽化した既設路面のリフレッシュができる。

i荒れた既設路面上に施工することで交通騒音や振

動を軽減できる。

o改質アスファルト乳剤を使用しているため,重交

通路線への適用が可能である。

施工年月 1997/06 1997/09 1999/03 1999/08 1999/10 2000/05 2000/10 2001/07 2001/10 2002/09

発注者 作 東 町 生 野 町 本 四 公 団 郡 山 国 道 本 四 公 団 本 四 公 団 関 東 地 建 大 塔 村 本 四 公 団 那賀振興局

工 事 名 町道大環境橋面補修工事 町道山神橋等橋面舗装補修工事 大三島橋面補修工事

小高舗装修繕工事

瀬戸中央自動車道鋼床版補修工法実橋試験 因島大橋薄層舗装工事

国道298号舗装修繕工事 加茂橋舗装補修工事

下津井瀬戸大橋鋼床版舗装補修工事 荒見粉河橋補修工事

工事場所 岡 山 県 作 東 町 兵 庫 県 生 野 町 愛 媛 県 大 三 島 福 島 県 小 高 町 下津井瀬戸大橋 広 島 県 因 島 市 埼 玉 県 戸 田 市 和歌山県大塔村 下津井瀬戸大橋 和歌山県粉河町

施工面積(

g

1,210

329 5,000 900 4,411 23,867 555 627 14,914 1,980 表−1 マイクロサーフェシング施工実績(橋面舗装上)

図−1 混合・敷きならしの概念図 写真−1 敷きならし状況(橋面舗装上)

さらに,MS工法を橋面舗装の維持工事に適用した 場合,これらに加え,

q

超薄層舗装のため死荷重の増加を軽減でき,重ね 施工も可能である。

w既設舗装の切削工程が無いため,床版等を損傷す

る危険性が少ない。

e

伸縮装置の嵩上げ等の工程を省くことができる。

r予防的維持工法として最適な工法であることから,

施工期間が長くなる修繕工事の回数を減らすこと ができ,利用者負担を軽減できる。

t

迅速施工で工期が短縮できるため,迂回路の制約 がある橋梁部では交通規制を大幅に緩和できる。

y橋面舗装の維持工法として道路維持修繕要綱に取

り上げられているカーペットコート工法より安価 である。

u常温舗装のためゴム製の伸縮装置に損傷を与えな

い。

等の利点がある。

3.MS工法の耐用年数

耐用年数は,追跡調査結果をもとにMS工法の路面 性状,MCIの経時変化を評価し推定した。ここでの耐 用年数とは,MS工法を適用することにより一旦改善 された路面性状が再び適用前のレベルに達するまでの 期間とした。

MS工法が橋面舗装の維持工事に採用された実績5)6)7)8)

は多いが,供用期間が短く供用性能を評価するための データが少ないため,土工部におけるMS工法の供用 性の追跡調査結果から耐用年数を推定した。

耐用年数を推定するために追跡調査を実施した工事 は,一般国道180号の試験施工工事9)である。この工 事を選定した理由は土工部ではあるが,q交通量が高 いレベルにある,w適用区間がひび割れまたはわだち 掘れが進行した区間に区分され,破損形態ごとの適用 評価が可能である,e切削オーバーレイの区間が設置 され供用性の比較ができる,r供用期間が長いこと等 である。以下に工事内容,追跡調査および耐用年数の 推定結果を示す。

3. 1 工事内容

q工事名:常温型速硬性薄層試験施工工事 w路線名:一般国道180号(岡山県高梁市内)

e

施工時期:平成9年10月

r交通量:舗装計画交通量1,000以上,3,000台未満

(旧C交通区分)

t施工内容

・1 工 区:わだち掘れが発生している区間で あり,既設舗装の隆起部を切削後,

MS工法(8a+7aの2層施工)

を適用

・2 工 区:ひび割れが発生している区間であ り,既設舗装のひび割れを処理後,

MS工法(5a+5aの2層施工)

を適用

・比較工区:1工区と同様にわだち掘れが発生し ている区間であり,既設舗装を5b 切削後,改質2型アスファルト混合 物による5

b

のオーバーレイを適用 3. 2 追跡調査結果および耐用年数の推定

各路面性状の追跡調査結果およびその結果をもとに 推定した耐用年数を以下に示す。なお耐用年数の推定 には,過去に行われたMS工法の追跡調査結果も考慮 に入れた。

a

ひび割れ

ひび割れが進行していた2工区のひび割れ率の追跡 調査結果を図−2に示す。

M S 工 法 を 施 工 す る 前 の 既 設 舗 装 の ひ び 割 れ 率

(9.6%)に達するまでの期間,すなわち耐用年数は,

6.5年程度と推定される。

s

わだち掘れ

既設舗装にわだち掘れが進行していた1工区と比較 工区のわだち掘れ量の追跡調査結果を図−3に示す。

MS工法は既設舗装のわだち掘れを完全に無くすこ とが困難なため,1工区のわだち掘れ量は,供用初期 の段階では比較工区に比べ大きいが,その後のわだち 掘れの進行割合は小さい。そのため,比較工区のわだ

0 0 5 10 15 20 25

 

1 2 3

供用年数(年) 

 

4 5 6 7

2工区 

図−2 ひび割れ率追跡調査結果

ち掘れ量は数年後には1工区より大きくなった。追跡 調査結果からは,既設舗装のわだち掘れ量に達するま での期間は進行割合(約1.0a/年)から15年程度と推 定される。しかしながら,本工事以前に既設舗装の隆 起部を数回切削しているため正確なわだち掘れ量は定 かではない。したがって,以下に示すように過去の実 績をもとに耐用年数を推定した。

過去の実績から求めたMS工法の施工前・後のわだ ち掘れ量の関係10)を図−4に示す。既設舗装のわだ ち掘れ量を20aと仮定した場合,MS工法を採用する ことにより約11aとなり9a減少させることができ る。1工区の追跡調査結果ではわだち掘れ量は,1 年に1

a

程度進行することから,耐用年数は9年程 度と推定される。

d

平坦性

1工区,2工区および比較工区の平坦性の追跡調査 結果を図−5に示す。既設舗装の平坦性がσ=3.05

a

と大きい1工区はMS工法の採用によりσ=1.49aまで 改善されたが,σ=1.29

a

と良好な2工区は殆ど改善 されていない。

1,2工区とも施工時に発生した小さな凹凸が交通車 両による圧密作用で平滑になるため,一時的に平坦性 は僅かに改善されるものの,その後は1年に0.1a程度 ずつ徐々に低下している。比較工区も同様な傾向にある が2年経過後頃から急激に低下し,1,2工区より悪く なり,6年経過後には既設舗装と同程度となっている。

過去のMS工法の実績から求めた施工前・後の平坦 性の関係10)は,表−2に示すとおりである。平坦性が σ=3.0a以上の既設舗装上にMS工法を採用した場合,

約1a程度の改善は期待できるが,2.0a以下の比較的 良好状態では,余り改善されていない。

1工区および比較工区のような平坦性がσ=3.0

a

程 度の既設路面上にMS工法を採用したと仮定した場合,

平坦性は1.0a程度改善され2.0aとなる。追跡調査結 果では,供用後は1年に約0.1

a

程度低下する傾向にあ ることから,既設舗装の状態(σ=3.0

a

)となるまで の耐用年数は10年程度と推定される。

f

MCI

MS工法(1,2工区の平均)および比較工区の MCIの推移と舗装の管理水準と維持修繕工法に関する

施工前 5.34 5.07 3.81 3.07 3.01 2.91 1.58 1.43 1.29

施工後 4.09 4.34 2.81 1.22 1.77 2.36 1.45 1.17 1.16

1.25 0.73 1.00 1.85 1.24 0.55 0.13 0.26 0.13

差の平均

1.21

0.27

5 10 15 20 25

 

 

供用年数(年) 

a

 

1工区 

比較工区 

図−3 わだち掘れ量追跡調査結果

0 10  12  14 

5 10

施工前(a) 

a

 

15 20 25

y =0.4816x+1.594  R2=0.8424

図−4 施工前・後のわだち掘れ量の関係

0 0 1 2 3 4

 

1 2 3

供用年数(年) 

a

 

4 5 6 7

1工区  2工区  比較工区 

図−5 平坦性の追跡調査結果

表−2 施工前・後の平坦性の関係(単位:a)

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