• 検索結果がありません。

ポリ(カーボネート-ウレタン)の酵素分解

ドキュメント内 創成に関する研究   (ページ 75-78)

第 3 章  アミノ酸により架橋されたバイオベースポリグルタミン酸ゲル  32

4.4  結果と考察

4.4.3  ポリ(カーボネート-ウレタン)の酵素分解

  本章で合成したポリ(カーボネート-ウレタン)は、加水分解酵素により主鎖分解を起こ すことを期待して設計した。そこで、4.4.2で合成したPTeCUおよびPHCUを、アニソール に分散、溶解し、リパーゼ CA を用いた酵素分解試験を行った。このとき、加水分解に伴 う、脱炭酸反応を避けるため、無水アニソールを溶媒として使用した。PTeCU の酵素分解 反応前後の、SECクロマトグラムの変化をFigure 4.2に示した。PTeCUのポリマーのピーク が、オリゴマー領域にシフトしたことがわかる。しかし、PHCU はいずれも、PTeCU と同 条件ではリパーゼCAによってオリゴマーレベルまで分解されなかった。PHCUのアニソー ルへの溶解性が低かったことが一因として考えられる。 

Figure 4.2 SEC profiles of the degradation products of 4 mg/mL PTeCU in anisol by 200 wt-% of lipase CA at 110 °C for 24 h. (a) before degradation. (b) after degradation.

  酵素分解生成物の分子構造についてMALDI-TOF MS を用いて分析を行った。その結果を

Figure 4.3に示した。MALDI-TOF MSと1H NMRの測定結果から、分解生成物は、主に環状

オリゴマーから成っていると考えられる。例えば、397、513、655および771 m/zで観測さ れたピークは、環状オリゴマー由来と同定された。一方、371、487、629および745 m/zの ピークは、計算上、環状オリゴマーおよび末端水酸基を持つ鎖状オリゴマー、両方の分子 質量と一致する。しかし、1H NMRでは、末端水酸基に由来するメチレンプロトンのピーク はほとんど観測されなかった。PTeCUの酵素分解は、溶媒として無水アニソールを使用し、

反応系に水を添加しない、鎖状オリゴマーが生成しない条件で行っていることから、分解 生成物中には対応する鎖状構造は含まれていないと考えられる。また、類似した反応条件 で、構造規則性の高い、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリ(カーボネート-ウレタン)

15 20 25

Retention time (min) (a)

(b)

やポリ(エステル-ウレタン)を有機溶媒中でリパーゼを用いて酵素分解した場合、対応す る環状オリゴマーのみが選択的に生成され、ポリマーのケミカルリサイクルに利用できる ことが報告されている[17, 18, 20-23]。以上の結果から、これまで報告されている、酵素リパー ゼを用いた分解と分解生成物(環状オリゴマー)の再重合によるケミカルリサイクルシス

テム[17, 18, 20-23]が、PTeCUのような構造規則性の低いポリウレタンにも応用できる可能性が

あることが示された。

C O

NH 6 CH2 NH C

O

n C

O

O CH2 O 4

O CH2 O 4 m C

O NH

6 CH2 NH C

O

n C

O

O CH2 O 4

O CH2 O 4 m

cyclic oligomer: M = 258m + 116n

300 400 500 600 700 8 513 [M + Na+]

(m=1, n=2)

371 [M + Na+] (m=0, n=3)

629 [M + Na+] (m=1, n =3)

*

*

*

745 [M + Na+] (m=1,n=4)

771 [M + Na+] (m=2, n=2) 397 [M + Na+]

(m=1, n=1)

603 [M + Na+] (m=0, n =5) 487 [M + Na+]

(m=0,n=4)

655 [M + Na+] (m=2, n =1)

* 253 [M + Na+]

(m=0, n=2)

*

*

[m/z]

*:Matrix

Figure 4.3 MALDI-TOF mass spectrum of the degradation products of 4 mg/mL PTeCU in anisol by 200 wt-% of lipase CA at 110 °C for 24 h.

 

  さらに、得られた酵素分解生成物についてBOD測定を行った。活性汚泥を用いて測定し たBOD値と計算したThODから求めた、ポリマーおよびオリゴマーの生分解度をFigure 4.4 に示した。PTeCUの酵素分解生成物の活性汚泥による生分解度は28日間で48 %に達した。

この結果から、PTeCU は、コンポスト条件のような適切な環境下で、低分子成分に加水分 解されれば、最終的に生分解可能であると考えられる。ポリ(カーボネート-ウレタン)の ソフトセグメントとして用いたoligo(TeC) diolは、1,4-ブタンジオールと炭酸ジエチルにリ パーゼ触媒を作用させて重合したが、このoligo(TeC) diol単独の場合には、活性汚泥によっ て容易に生分解され、Figure 4.4に示すように、BODによる生分解度は培養期間2週間以内

で60 %に達した。一方、PTeCUフィルム(厚さ100 μm)はBOD試験液中ではほとんど生

分解されず、生分解度は6 %程度にとどまった。今回のBOD試験条件下でPTeCUの生分解 が遅かったのは、PTeCU フィルムの疎水性が高く、微生物による攻撃を受けにくいためと 考えられる。これらの結果から、合成されたPTeCUは、耐水性が高く、かつ酵素分解可能 であり、潜在的に生分解性を有するポリウレタンであることが示唆された。

0 20 40 60 80 100

0 5 10 15 20 25 30

Cultivation time (day)

Biodegradability (%)

Figure 4.4 BOD biodegradability of oligo(TeC) diol (○), PTeCU (•), and the enzymatic degradation product of PTeCU (♦). The test was conducted using activated sludge at 25 °C.

ドキュメント内 創成に関する研究   (ページ 75-78)