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ボトムアップアプローチ

ドキュメント内 Issue Date (ページ 30-43)

4.3.1

実験の目的

定量的データを包絡分析法で分析した結果(代替案の順位)に基づき,主観的判断の修正 を行うことにより,代替案の順位を合わせることができるかどうか,それにより,主観的判 断の妥協点を見出すことができるかどうかについて評価する.

4.3.2

実験の方法

実験は,主観的判断の順位,定量的データを包絡分析法で分析した結果の順位, ノルムな どを参考にして, 定量的データを包絡分析法で分析した結果の順位と一致するように評価 項目の重要度を決めて分析する,という作業を数回,繰り返して行った.

4.3.3

実験の結果

結果を表4.3に示す.

4.3.4

実験の考察

最終的に修正された重要度はすべての実験でほぼ同じ値になった. このことは,本研究 で提案した方法の妥当性の裏付けになると考えられる. 本実験では3つの例を用いて行な い,3つとも1位から3位までの同じ順位を合わせることができた. その中で,特に例2が 最もノルムが小さいため,最も適した重要度であるということができる.

実験によりボトムアップアプローチは以下のような場合に用いられると有効ではないか と考えられる. 意思決定者は代替案の中からどれが良いか判断することができない, ある

いは現時点で用いている代替案を選択する材料となる定量的データでは組合せを変える ことによっても説明付け,納得付けを行なうことが難しい. そういう場合にとりあえず,現 時点での分析に用いている定量的データで分析を行い, 定量的データではどの代替案が選 択され,どの評価項目が重要視されているかを見ることにより1つの目安となり, 主観的 判断のどの部分をどう変えると現時点で用いているデータで説明付け,納得付けを行なう ことができるかといった妥協する部分を見つけることができると考えられる. ボトムアッ プアプローチの分析結果は1つの目安にすぎない. しかし,全く何もない状況で判断する 場合より,何かしらの基準,目安がある方が一般的に判断しやすいと考えられるため,この 分析は有効ではないかと考えられる.

順位を一致させるという観点から考察するとトップダウンアプローチとは逆に, 包絡分 析法で分析結果に合うように主観的な判断(重要度)をある程度自由に重み付けできるに もかかわらず,1位から5位までのすべての順位を一致させることができなかった. 原因 として,トップダウンアプローチと同様に代替案間の微妙な重要度の違いにより順位が変 化したと考えられる. 一改善案として,トップダウンアプローチと同様に代替案間の重要 度の比などをみてグループ化して,そのグループ内では同順位にするなどの方法が考えら れる.

ここでトップダウンアプローチ,ボトムアップアプローチの両方の実験を通して, AHP を用いた主観的判断の分析結果と包絡分析法を用いた定量的データの分析結果の関係に ついて考察する. AHPでは各評価項目,各代替案の中でどれが最も重要であるかと重要度 で判断している. それに対し,包絡分析法では入力項目はなるべく小さい値,出力項目はな るべく大きい値でその比が最も大きい値,つまり効率性で各代替案を判断している. よっ て,代替案が効率的であるほど意思決定者がその代替案を重要であると考えているならば 包絡分析法の分析結果をAHPに適用することが可能となる. しかし,効率性以外で表さ れるもの,例えば信頼性や柔軟性などで表されるものや単調増加,単調減少以外のデータ などは包絡分析法で分析できないため, 分析結果をAHPに適用することができない. こ れらは今後の課題である. あくまでも包絡分析法は効率性を評価する手法である.

4. 評価実験

4.3: ボトムアップアプローチの分析結果

重要度 一致した順位 ノルム 住居費 延べ面積 居住室数

例1 0.333 0.3333 0.333 (1)(2)(3) 0.038

0.500 0.300 0.200 (1)(2)(3) 0.035

例2 0.615 0.319 0.066 (1)(2)(3) 0.034

0.500 0.400 0.100 (1)(2)(3) 0.032

例3 0.701 0.199 0.106 (3) 0.039

0.600 0.300 0.100 (1)(2)(3) 0.034

包絡分析法で分析した各代替案の順位

(1)石川県,(2)宮城県,(3)愛知県,(4)沖縄県,(5)北海道

第 章 結論

本論文では主観的な判断の根拠付けあるいは納得のための説明付けをするための方法 を提案した. また,主観的な判断と定量的データの分析結果の重視の違いによる分析アプ ローチも提案した.

本研究によって実現されたこと,明らかにされたことを以下にまとめる.

主観的な判断を重視したトップダウンアプローチ, 定量的データの分析結果を重視 したボトムアップアプローチの2つの分析アプローチを提案した.

マルチウィンド ウ上で,対話的操作で実行および確認ができ, 分析結果を管理する ウィンドウを採用して, ウィンドウがあまり多くならないよう配慮して見やすくし ている.

分析支援システムを構築し評価実験を行うことで,効率性の観点で本提案の有効性 を検討した.

今後は,評価実験の積み重ねによる有効性の確認が必要である. また,包絡分析法にはい くつかモデルが提案されているので, ユーザの心理的負担をさらに軽減できるよう, より 適切なモデルを検討していく予定である. 今回は単調増加,単調減少の定量的データしか 利用しなかったので,それ以外の定量的データを利用する方法を検討しなければならない.

謝辞

本研究を進めるにあたって,多くの方にご支援をいただきました. この場を借りて感謝 の気持ちを表したいと思います.

指導教官の國藤進教授には研究に関してさまざまな助言をしていただき,自由な研究環 境をはじめとする日頃の研究生活全般においても常に配慮していただき,大変感謝してい ます.

國藤研究室博士課程の加藤直孝氏には研究について数多くのアドバイスを与えて頂き, 本システムの一部の処理においては, 加藤氏が開発された AHP-aidを使用させて頂きま した.

また,國藤研究室の方々には日頃から研究に関して議論を重ねていただき, 研究活動以 外にも私生活の面でも非常にお世話になりました. 心から感謝しております.

最後に私ごとで恐縮ですが,これまでの学生生活を金銭的・精神的に支えてくれた家族 にも感謝の意を表させていただきます.

1998年213日 小川 剛志

参考文献

[1] 広内哲夫,小坂武. 意思決定支援システム.竹内書店新社,1983.

[2] Herb ert A.Simon.意思決定の科学.産能大出版部,1979.

[3] 戸田光彦,山口高平,新谷虎松.知能化技術と意思決定支援システム.社団法人計測自動 制御学会,1994.

[4] 小橋康章. 決定を支援する.東京大学出版会,1988.

[5] T.L.Saaty. The Analytic Hierarchy Process.McGrawHill,1980.

[6] 刀根薫. ゲーム感覚意思決定法 −AHP入門−.日科技連出版社,1986.

[7] 刀根薫. 経営効率性の測定と改善.日科技連出版社,1993.

[8] 木下栄蔵. 階層分析法による多目的意思決定問題への適用に関する研究. 交通工 学,Vol.28,No.1,pp.35-44,1993.

[9] 市川惇信().多目的決定の理論と方法.計測自動制御学会,1980.

[10] 岡本良夫. 逆問題とその解き方.オーム社,1992.

[11] 木下栄蔵. わかりやすい意思決定論入門.近代科学社,1996.

[12] 飯島淳一. 意思決定支援システムとエキスパートシステム.日科技連出版社,1993.

[13] 社会調査研究所. 地域経済総覧'96.東洋経済,1995.

[14] 経済企画庁国民生活局編. 新国民生活指標(平成8年版).大蔵省印刷局,1996.

参考文献

[15] 加藤直孝,中條雅庸,國藤進. AHP支援ソフトウェア AHP-aid for Windows.日本オ ペレーションズ・リサーチ学会春季研究発表会,pp.96-97,1997.

[16] A.Charenes,W.W.Co oper and E.Rho des. Measuringthe Eciencyof Decision

Mak-ing Units, European Journalof Operational Research,Vol.2,No.6,pp.429-444,1978.

[17] 長田英希.主観的判断と合理性を考慮した意思決定法の研究. 北陸先端科学技術大学 院大学 情報科学研究科 修士論文,1994.

[18] 刀根薫. DEA のモデルをめぐって −再論−. 日本オペレーションズ・リサーチ学 会,Vol.40,No.12,pp.681-685,1995.

[19] 末吉俊幸.DEAによる効率性分析に関する一考察.日本オペレーションズ・リサーチ 学会,Vol.35,No.3,pp.167-173,1990.

[20] 小川剛志,國藤進,加藤直孝.代替案評価の根拠を定量的データで説明可能にした意思決 定支援システムの提案.計測自動制御学会システム/情報合同シンポジウム '97,pp.159-162,1997.

付録

AHP

の概要

AHP(Analytic HierarchyPro cess)は,意思決定問題の要素を最終目標(意思決定すべき 問題),評価項目,代替案の三段階からなる階層構造に作り上げる. そして最終目標から評 価項目の重要度を求め,次に各評価項目から代替案の重要度を評価し、最後に最終目標か らみた代替案の重要度に換算する.

1)一対比較行列

上述の重要度の算出法として一対比較法を用いる. n個の要素のうち任意の要素iと要素j の組合せに対して, 意思決定者は「要素iは要素jと比べてどのくらい重要であるか」を下 表の意味を参考にして決め,一対比較値aijとして表される. そして, n2n行列A = [aij] を作る. ここで[aij]=1,[aji]=1=aij(i6= j)と仮定する. n個の要素があるとn(n-1)/2回 の一対比較で行列Aができる. この一対比較行列から各要素の重要度を求める.

ここで,n個の要素の重要度を

w=[w

1

;w

2

;111;w

n ]

T

(A:1)

とし,wi

=w

jをaijで推定する. すなわち,行列Aの各要素aijをwi

=w

jで置き換え,

A= 0

B

B

B

B

B

B

B

B

@ w

1

=w

1 w

1

=w

2

... w

1

=w

n

w

2

=w

1 w

2

=w

2

... w

2

=w

n

.

.

.

.

.

. .

.

. .

.

.

w

n

=w

1 w

n

=w

2

... w

n

=w

n 1

C

C

C

C

C

C

C

C

A

(A:2)

ドキュメント内 Issue Date (ページ 30-43)

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