1.パラメータ領域Dpの境界∂Dpにおいて,精度保証により初期区間からの軌 道を計算する.パラメータの境界を4600個に分割し,各々に対し,初期点
図 8: 錐体面L−1(0)を切断する平面Ξ
図 9: [X1]とΞの位置関係
集合[X0] = (1.0×10−5,−1.0×10−4,[−5.8×10−7,−5.6×10−7])からの解軌 道を精度保証により計算すると,t = 74.78(= ˆT)における解[YT]は図10の ようになる.このとき,[YT]を成す各区間[YT1],· · · ,[YT4600]に対し,区間演 算によりLyapunov関数値
L= [YT i]TY[YT i]
= [YT i]T
−1.0671 −0.2324 0.1424
−0.2324 −1.0584 −0.0071 0.1424 −0.0071 1.0257
[YT i]
(i= 1,· · · ,4600)
を計算し,全て負の区間値を取ることを確認した.すなわち,[YT]⊂L−で あり,かつx∗ ∈/ [YT]である.
2.[YT]の,不動点x∗を通過する平面Γへの射影PΓを考える.平面Γとしてxy 平面を取る.ここで,PΓによる像[PΓ(YT)]が,5.4節における条件
(A1) [PΓ(YT)]が不動点x∗を含まないこと
を満たしていることは,図(11)からも明らかである.また,正数r′を小さ く取れば,[PΓ(YT)]の内部に不動点を中心とする半径r′の円板Br′が取れる ことも明らかである.
以上より,F3, F4の構成可能性が確認でき,FSおよびFS′ も構成できること がわかる.
図 10: 初期点集合のt = 74.78における解[YT]
図 11: YT から平面Γへの射影による像[PΓ(YT)]
(3) [PΓ(YT)]とx軸正方向との角度を求める.いま,パラメータ領域の境界∂Dp を4600個に分割している.これを境界右回りにc1,· · ·, c4600とし,
C1 =c1∪c2∪ · · · ∪c1533 C2 =c1534∪ · · · ∪c3066 C3 =c3067∪ · · · ∪c4600
と分類する.同様に,得られたc1,· · · , c4600の像をそれぞれv1,· · ·, v4600と
おき,
V1 =v1∪v2∪ · · · ∪v1533
V2 =v1534∪ · · · ∪v3066 V3 =v3067∪ · · · ∪v4600
とする.ただし,[PΓ(YT)] =V1∪V2∪V3である.このときIS定理の検証条 件(1)〜(4)が満たされることを確認した.したがって,この問題において写 像FSの写像度は0ではない.図12はvn(n= 1,· · · ,4600)と,x軸との角度 を−π ≤ θ ≤πで図示したものである.nの増大に伴ってπから−πへ一周 しており,これからも写像度が0でないことが読み取れる.
図 12: vnのx軸正方向との角度θとの関係
以上の結果および5.4節における議論により,パラメータ領域[a1, a2]×[b1, b2] = [0.3797,0.3804]×[0.2993,0.3008]の範囲内に,ホモクリニック軌道を持つパラメー タの組が少なくとも一つ存在することがここに証明された.
7 まとめと展望
3次元力学系に対し,余次元2のホモクリニック軌道の存在検証を行い,その存 在を証明した.先行研究では時間を逆転させることでホモクリニック軌道を捕捉 していたが,本論文では時間逆転により計算が不安定となる方程式に対して,時 間を逆転させずにホモクリニック軌道を捕捉する手法について論じている.
Lyapunov関数を利用することで,不安定多様体や安定多様体の存在範囲を限定
することができ,これによって検証手順が単純化されている.本検証法は余次元 2の安定多様体に対して適用可能であるため,4次元力学系における余次元2の ホモクリニック軌道に対しても,適用可能であると考えられる.また,松江・山 本により,理論のn次元への拡張が進められており,さらに高い余次元のホモク リニック軌道の直接的な存在検証が可能になることが期待される.
8 謝辞
本論文の執筆にあたり,山本野人教授,並びに統計数理研究所の松江要博士に ご助力を賜りましたこと,ここに厚く御礼申し上げます.
参考文献
[1] 松江要,山本野人,“Saddle-saddle connectionの精度保証付き数値検証”,日 本応用数理学会2012年度年会,2012
[2] 松江要,山本野人,“IS定理の系”など,Private Communications,2015 [3] C.ロビンソン,〔国府寛司,柴山健伸,岡宏枝 訳〕“力学系(上・下)”,シュ
プリンガー・フェアラーク東京株式会社,2001
[4] 山本野人,“常微分方程式の解の精度保証法”,シミュレーション第31巻第3 号,日本シミュレーション学会,2012
[5] 中尾充宏/山本野人,“精度保証付き数値計算”,日本評論社,1998 [6] 大石進一,“精度保証付き数値計算”,コロナ社,1999
[7] D.Wilczak,“The Existence of Shilnikov Homoclinic Orbits in the Michel-son System: A Computer Assisted Proof”,Foundations of Computational Mathemathics,6(4):495-535,2006
[8] P.Zgliczy´nski and M.Gidea,“Covering relations for multidimensional dynam-ical systems”,Journal of Differential Equations,202(1):32-58,2004