第三章 中国におけるベンチャー事業発展上の問題点
第二節 ベンチャー事業の発展と中小企業の資金調達
通常,大企業に比べて,中小企業の貸出額が小さく,倒産確率が高いため,
中小企業向け貸出はリスクが高く,コストが大きいことが指摘される。このた め,貸し手と借り手の間に「情報の非対称性」が生じることとなり,信用リス クが不明瞭な中小企業への貸出を控え,条件を厳しくして対応することになる。
しかし,以上の問題を指摘された背景として,情報の非対称性とそれにとも なう銀行融資(間接金融)という資金調達手段の選択があげられる。なお,周 知のように,金融機関の機能は信用創造であり,安定的な金利を獲得するため,
メインボード(株式の新規公開および上場
についての管理弁法) 創業株市場上場管理弁法(草案)
上場資格:
設立後,営業期間が3年以上の株式有限会 社(第9条)。
直近3年間,主な経営内容,取締役,高級 管理に大きな変化がなく,実質支配者に変 更がないこと(第9条)。
財務および会計
直近3年間の純利益が黒字で,累計で3,000 万元を超えていること(第33条)。
直 近3年 の キ ャ ッ シ ュ フ ロ ー の 累 計 が 5,000万元を超えていること,もしくは直 近3年の累計営業収入が3億元を超えてい ること(第33条)
上場前の資本総額が3,000万元を下回らな いこと(第33条)。
上場直前期末の無形資産(除く土地使用 権,養殖,採掘権など)が純資産の20%を 超えていないこと(第33条)。
直前期末に補#されていない損失が無いこ と(第33条)。
上場資格:
設立後,営業期間が2年以上の株式有限会 社(第8条)。
直近2年間,主な経営内容,取締役,高級 管理に大きな変化がなく,実質支配者に変 更がないこと(第11条)。
財務および会計
直近2年間連続で黒字であり,直近2年間 の累計純利益が1,000万元を下回らず,利 益が増加し続けていること。或いは直近1 年間に黒字で純利益が500万元を下回らず,
直近1年間の営業収入が5,000万元を下回 らず,且つ直近2年間の営業収入の増加比 率が30%を下回らないこと(第12条)。
上場前の資本総額が2,000万元を下回らな いこと(第12条)。
上場する際に,現金資産は総資産の30%を 超えること。
前期末に補#されていない損失が無いこと
(第12条)。
表12 中国におけるメインボードと創業株市場上場基準の比較
資料:!『株式の新規公開および上場についての管理弁法』
"『創業株市場管理弁法』
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リスクの高い事業へ投資を避けるようにしている。それ故に,新規企業や創業 まもなく企業は高いリスクを抱えるため,金融機関からの資金調達が困難とな り,通常資本市場の活用,あるいは投資家の役割が重要となる。33)金融機関(間 接金融)と投資家出資(直接金融)の2つ資金調達手段の違いについて,忽那 憲治(1997)はリターンの獲得方法は根本的な違いであることを明らかにして いる。すなわち,銀行融資の場合はリターンの獲得が金利に限定され,これに 対して,投資家出資のリターンは可能性としては上限のない利潤率であること から,後者のほうがリスクの許容度が大きいと指摘されている。このように,
企業の規模・所属する産業部門の制限ではなく,優良な企業であれば,直接金 融の利用が可能となる。
一方,各国の
VC
の投資行動をみれば,ベンチャーファイナンスは中小企業 資金調達において,重要な役割を果たしている。ベンチャーファイナンスとい えば,その投資先はソフトウエア,通信,医療など新興産業あるいは研究開発 型ベンチャー企業に限られるということをよく言われるが,実際,それだけで はない。ベンチャーファイナンスは高いリスクを伴う投資を指すため,その投 資先はある産業に限定されるものではないはずである。また,各国の状況をみ ても,様々である。例えば,イギリスVC
の投資先企業は,消費者関連部門と サービス業への投資が中心であり,ハイテク部門への投資が少なく,また,日 本でも,VCの投資先企業は成熟部門への投資が中心となっている。34)なお,各 国の共通点としては上場前段階の企業に限られて,そのほとんどは中小企業で ある。中国でも,ベンチャー投資は中小企業資金調達問題対策の1つとして,期待 されている。1999年に国務院は「わが国ベンチャーシステムの設立に関する 報告書」の審査を行う際に,ベンチャーキャピタルは優先的に小企業に投資す
33)仮屋広郷「ベンチャー企業のニーズと商法改正」法律時報74巻10号p.39−44
34)資料:忽那憲治『中小企業金融とベンチャー・ファイナンス』東洋経済新報社,1997年,
p.141。
中国における創業・投資ファンドの発展と中小企業資金調達 355
ることを示した。また,2002年に発布された「中小企業促進法」において,
ベンチャーシステムの整備は資金調達対策の1つとして取り上げている。さら に,前節で述べたように,中小企業が利用できる資本市場も次第に整備されて いる。
以上のことから明らかなように,中小企業金融の特徴に対して,ベンチャー ファイナンスは自らの優位性を持つため,それに対応可能な資金調達手段の1 つであると考えられる。現在,世界では,ベンチャーファイナンスは中小企業 の資金調達において,有効な方法であると見られ,中国でも,中小企業資金調 達対策の1つとして仕組まれている。
お わ り に
中国では,1980年代後半から,私営企業の発展・中小国有企業の民営化に よって,中小企業が急速に発展してきた。一方,その過程のなかで様々な問題 が現れてきた。特に資金調達問題は最も深刻な問題の1つである。
中小企業資金問題の対策として,資金調達の多様化が有効な手段であると考 えられる。そのうち,ベンチャーファイナンスは1つの方法であると考えられ る。特に資金需要・不確実性が高いベンチャー企業はベンチャーファイナンス を利用している割合が高いといわれている。一方,中国でも,80年代から,
科学技術制度の改革の一環として,ベンチャーファイナンスの導入が始まっ た。その後,市場経済化の進展に伴って,ベンチャーシステムが設立され,次 第に充実されている。この20年間の発展を通じて,ベンチャーファイナンス は重要な資金調達手段の1つとして,独自のシステムが確立され,中小企業・
ハイテク企業の資金調達において,大きな役割を果たしているとみられる。し かし,現段階では,ベンチャー市場の整備や,それに対応した法律・制度面で の基盤整備が遅れているため,その役割が十分に果たされていない。今後,ベ ンチャーシステムの充実が進んでいくことによって,中小企業資金調達におけ る役割がより重要となるに違いない。
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