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第 7 章 裾野産業育成のためのベトナム中小企業

7.1 ベトナム企業データベースを活用したベトナム中小企業振興策

ベトナムにおける裾野産業の育成に向けては、以下に示すような、裾野産業の実態と重要性、及びそれ を受ける形でのベトナム企業データベース整備の必要性を指摘することができる。

 ベトナム政府の行政機構における裾野産業関連企業を含む中小企業振興を専門に扱う主務官庁は、MPI、

MOITを中心に特定されている。既存の機関では、MPI傘下のAED、TAC、FIAが機能しており、MOIT

傘下にはARID、SIDEC が機能している。しかし、これら諸機関が有機的に連携して、ベトナムの裾

野産業振興に向けた取り組みを展開している動きは見えず、個別に活動しているのが実態である。

 裾野産業の育成には、積極的な経済的優遇策が不可欠である。特に、税制、関税等にかかる優遇措置 が必要である。これは、裾野産業の担い手がベトナム国内企業、外資を問わず中小企業である場合 が多い点に鑑みると重要な政策である。そのほか、1)資金調達能力の脆弱性に鑑み、保証・保険機能 を付帯させた金融サービスの充実、2)経営者が若く、経営能力の習熟が必要である点に鑑み、マネ ジメント層の育成、製造技能の直接的な支援を含む職業訓練等のサポートが重要、3)本邦中小・ベ ンチャー企業がベトナムの裾野産業に進出する際、独自の情報収集能力が十分でない点に鑑み、ベ トナムの法制度・投資環境等の情報提供の支援が重要である。

 本調査で構築した企業データベースは、上記のような裾野産業育成施策のうちの、3)ベトナムに進出を 検討している日系企業及び進出済みの日系企業への情報提供に資する施策に繋がるものである。

 裾野産業育成にあたっては、ベトナムに安定的な基幹産業が存在することがひとつの前提とも言える。

即ち、特に電気・電子、自動車、機械、ハイテクなどの主要基幹産業の育成に資するために裾野産業 育成が重要である。

以上の観点に立つとき、本調査で構築したベトナム企業データベースは、情報提供の側面からベトナム の裾野産業振興に資する役割を担い得る。ただし、当該データベースがベトナムの裾野産業振興に寄与する ためには、その適切な管理・運用が重要となる。

7.2 ベトナム企業データベースを活用したベトナム裾野産業振興のあり方

以上、企業データベースの管理主体をFIAとすることを前提とした議論を行ったが、その一方で、企業 データベースの管理主体には、民間主体が望ましいとする考え方もあり得る。企業データベースの主たるユ ーザーは民間企業であり、有用なツールであれば有料であっても利用したいとの意向が表明される可能性は

ある。ASEAN周辺諸国における企業データベースが存在するならば、その構築状況、管理状況については

参考資料として貴重な示唆であるが、本調査においては十分な把握がなされていないものの、タイ、マレー シア等において、民間機関が企業のマッチング斡旋などの諸活動を行っている可能性は高い。

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しかしながら、ベトナムでは、裾野産業振興に携わる政府機関が各所掌に明示的に基づき、活動を行っ ている。中央省庁の中には、裾野産業の振興に資する企業データベースの管理は、政府の一元的責任のもと に実施されるべきものであるとの強い認識を表明したところもある。従って、裾野産業振興に資する企業デ ータベースを構築し管理する主体は、第一義的には政府機関であることが望ましい。

以上の認識に基づき、本調査で構築されたベトナム企業データベースを活用して、今後のベトナムの裾 野産業振興を図る上では以下の点に留意することが重要である。

① 本データベースはベトナムの企業活動に係る日越の情報ギャップ縮小に資するツールであることに留意

本データベースのユーザーは、ベトナムに進出を希望、内至は進出を計画している日系中小企業、あ るいは、ベトナムで新たに原材料及び部品の調達先や、製品の販売先を模索している、ベトナムに進 出済みの日系中小企業が想定されている。当該ユーザーは中小企業であることから、ベトナムでの取 引先を見出すための潤沢な資金力、人的リソースを有するとは限らない。そのため、当該データベー スは中小企業にとっては可能な限り容易に利用できるツールである必要があり、具体的には、データ ベース言語は可能な限り日本語で記述されたものであることが望ましい。これは、今後、本データベ ースの管理主体となるベトナムFIAの予算確保の状況に依存して、可否が左右される可能性もある。

ただし、データベースの管理に際しては、日本語翻訳などについて支援を希望する他の機関の名前も あがっていることから、今後は管理体制を柔軟に構築していくことが肝要である。なお、本データベ ースの管理主体となることが想定されるFIA自身は、アウトソーシングによる外部協力も得ながら、

日本語翻訳を手がける趣旨の意向を表明しており、ベトナム語と日本語での閲覧が可能なデータベー スとなることが期待される。

本データベースのユーザーには日系中小企業が想定されていることから、データベースへのアクセス は日本側関係機関のウェブページなどの、可能な限りアクセス容易な媒体を活用することが重要であ る。そのためには、データベース開示に係る日本側の関係機関からの協力、支援が不可欠である。

② 本データベースは情報鮮度が鍵である点に十分留意する

本データベースが有効に利活用されるためには、企業へのアクセス情報が適切に管理される必要があ る。そのためには、企業の所在地情報、電話番号、メールアドレス等の連絡先情報に正確さを期する 必要がある。このような連絡先情報の適切な管理のためには、データベース管理者と、掲載された企 業との間の継続的なコミュニケーションが必須である。そのためのアクションとしては、例えば、FIA や関連産業団体主宰のイベント等への案内情報の展開、企業活動照会のためのメール配信等の、双方 向でのコミュニケーションが挙げられる。こうしたキメの細かいアクションの実施が、FIA側に求めら れる。加えて、日本側においてもFIAの活動状況を可能な限りモニタリングし、必要に応じて活動内 容の改善提言を提示することが求められる。

③ 本データベースの付加価値向上の重要性に十分留意する

FIAは、今後、本データベースの内容の高度化を図るべく、規模別・業種別・技術レベル別にランク付 けを行い、本データベースにアクセスする日系企業の利用利便性向上を図るとしている。こうした付 加価値向上に向けた取り組みは、データベース掲載企業側にとっても、技術レベル向上を図るインセ

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ンティブを与えることにもなり、ベトナム企業の技術力の底上げに資することになる。

しかしながら、企業の技術力を適切に把握し評価しランク付けを行う上では、高度な技術的専門知識 が求められることも想定される。今後、日本側も含めて関係機関による技術評価に係る支援等、必要 に応じてFIA支援の場面も想定される。具体的には、ベトナム現地ではVJCCが本データベースの運 用管理の一端を担うとの協力表明が出されており、こうした機関との連携方策の具体化が求められる。

④ 裾野産業育成のためのベトナム中小企業振興機関の課題と対応策のあり方

本調査では、ベトナム中小企業振興に携わる機関として、計画投資省、商業工業省、科学技術省を特 定し、当該中央政府に付随する関連機関の活動状況を調査した。これらの調査結果を踏まえた、ベト ナム中央政府及び地方政府の体制・機能・実施能力等に係る課題は、次のように整理される。

中央政府においては、各機関それぞれが中小企業振興に係る取り組みを展開しているが、機関 相互の横の連携が十分ではなく、活動や機能の重複が見られる。企業データベース構築におい ても同じ状況が見られ、類似の企業データベースが繰り返し構築されており、効率的な取り組 みとなっていない。

各機関それぞれが構築している企業データベースは、ユーザーである民間企業に対して十分開 示されていない。特に、日系中小企業に対する開示が十分ではない。そのため、日系中小企業 に対してはベトナム企業データベースの存在が認知されていない。

企業データベースをツールとして活用しながら、ベトナムの裾野産業の育成に繋げていく道筋 が明確になっていない。従って、企業データベースは構築されたあとに、十分活用されること なく放置される傾向が見られる。

上記を踏まえ、技術協力プログラム「ベトナム中小企業・裾野産業開発協力プログラム」の策定に対 する改善・支援方策案を列挙すれば、以下の通りである。

ベトナム中小企業データベースは、日越企業間のコミュニケーション活性化のためのツールの ひとつである。従って、当該データベースの活用方法を十分検討した上で、裾野産業開発のた めのどの活動に活かしていくべきかの議論を、尽くしていく必要がある。

また、企業データベースに情報としての付加価値を付加していくために、優良企業のフィルタ リングや、技術、規模等の指標に基づくランク付けなどが有効である。このような価値の付加 活動は、データベースに掲載される企業側にとっても、企業活動おランクアップの動機付けに もなる。

ベトナムの民間調査機関、コンサルティング会社に蓄積されている有料データの活用方法につ いてであるが、本調査で把握した限りでは民間調査機関が企業データベースを構築し、ビジネ ス展開を行っている事例は把握されなかった。冒頭にも記した通り、企業データベースの構築・

管理は中央政府の責務であるとする認識が、ベトナムには根強く浸透しているものと考えられ、

当面の企業データベースの構築・管理は、公的機関の所掌範囲の中で実施されていくことが妥 当と思料する。

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