6.2 考察
6.2.4 プロトコルの改良
本研究では、既存のプロトコルを用いて、1つのホストにツールを実装することによって、
転送トポロジーの情報を得るということを仕様としていた。しかし、現在のプロトコルにお いて、下流のマルチキャストルーティングやルータに関する情報を問い合わせて、応答を得 るというものはMLDのmtrace queryメッセージのみである。したがって、ユニキャスト におけるプロトコルの使用は避けられなかったと考える。
また、MLDのmtraceメッセージにおいても、マルチキャストが逆経路転送であるため、
受信ホストから送信ホストへのマルチキャスト経路を得るためのメッセージとなっている。
したがって、現段階では送信ホストからネットワーク全体への正確なマルチキャストパケッ トの到達性に関しては把握できる手法を提案することは不可能であったと考える。
しかし、マルチキャスト経路プロトコルにおいて、通常の機能として不要なものである
が、MLDのmtrace メッセージのようなトラブルシューティングのためのプロトコルとし
て、送信ホストの次ホップルータからホスト情報を加えて下流に転送し、最終ホップルータ からユニキャストで応答を得るプロトコルがあれば、正確な転送トポロジーが把握できる。
また、マルチキャストに対してICMPが応答するようにし、かつIPv6拡張ヘッダの始点 経路制御においてもマルチキャストアドレスを使用できるようにプロトコルを変更すること でも、正確な転送トポロジーの把握が実現できる。
この案が採用されると、第4.2.4節に示したホップリミット付きマルチキャストパケット とIPv6拡張ヘッダの始点経路制御を用いた探索手法案を採用することができる。
しかし、これには、多量のICMPメッセージが送信ホストへ送られることとなり、送信 ホストへの負荷を挙げることとなるというデメリットがある。特に発信元アドレスを偽造す ると、他のホストに対するDoSアタックが可能になることが問題となる。
もう一つに、MLD mtraceメッセージを受信ホストで有効にするという案がある。この 場合、ツールを実行しないホストに対して、そのホストにあまり利益のない処理を追加する
必要がある。
しかし、これらのプロトコル改良を行うと、本研究で提案した手法におけるユニキャスト における最終ホップルータとマルチキャストにおける最終ホップルータが同じ場合のみとい う制限がなくなり、より正確でシンプルな手法が提案できると考える。
まとめ
マルチキャストの管理において、現状を把握するツールが十分にないという問題点を指摘 した。そして、IPv6マルチキャストにおいて複数経路を表示するツールが存在しないこと を挙げた。そこで、本研究ではIPv6マルチキャストにおける転送トポロジーの探索手法の 提案を行い、UNIX上のツールとして実装した。
手法は、ICMPのechoメッセージを用いて受信ホストを見つけ、ユニキャストにおける
tracerouteのアルゴリズムを用いて受信ホストへの最終ホップルータを得る。その最終ホッ
プルータに向けて、MLD のmtrace queryメッセージを送出することによって、送信ホス トから受信ホストへの各マルチキャスト経路を得る。そして、得られた各受信ホストへのマ ルチキャスト経路を集約し、Tree構造で表示するものである。
この手法では、ユニキャストにおける最終ホップルータとマルチキャストにおける最終 ホップルータが同じである場合のみ正確に機能することと、このツールが送信ホストのみで 実行が可能であるという制限が生じた。
今後の課題として、このツールのマルチキャスト経路プロトコルPIM-DMにおける実験
と、PIM-SMの共有ツリーと送信元ツリーが混在する状況における実験を行う必要がある。
また、MLD mtraceメッセージの動作については、FreeBSD4.4の実装がプロトコル通り に動作しているのか検証する必要がある。
最後に、マルチキャストのデバッグツールに有効となるプロトコルの改良の提案を行い たい。
インテックウェブアンドゲノムインフォマティックスの中川いくおさん、小杉さん、木村 さん、金山さん、楠田さん、富山県総合情報センターの糸岡さん、東北大学の曽根先生、山 梨県立女子短期大学の八代先生、山梨大学の深澤さん、広島大学の相原先生、東北日立の樋 地さん、名古屋大学の長谷川先生、ニスカ株式会社の笹本さん、ソフトピアジャパンの石田 さん、山田さん、映像配信実験の際は大変お世話になりました。ありがとうございます。そ の他、地域間相互接続実験プロジェクトのメンバーの方々にも感謝します。
KPIX実験研究協議会のメンバーである高知大学の菊地先生、高知高専の今井先生、高知 システムズの松本さん、シティネットの澤本さん、富士通高知システムエンジニアリングの 平田さん、高知県工業技術センターの武市さん、今西さん、高知県情報企画課の蒲原さん、
高知電子計算センターの森さん、山梨国体映像配信実験の際はお世話になりました。
島村和典教授をはじめとする、TAO 通信トラヒックリサーチセンターの皆様に感謝し ます。
本研究に多大な助言をくださった、同じ菊池研究室の修士の、廣瀬さん、西内さん、正岡 さん、田渕さん、舟橋さんに感謝します。同じ菊池研究室で本研究の協力と、各中継実験に おいて助言をくれた、豊島君に感謝します。同じ菊池研究室の小川さん、澤田さん、澤野君、
前田さんに感謝します。
最後に、菊池 豊助教授に心から感謝します。
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