4-1 技術的留意点(耐震技術、改修技術を実用化させる上での予想される困難な点、効果的な 提案等)
(1) 補強対象となる建築物の構造形式、構造性能が多様であり、単純に既往の手法を適用した
としても目標とする耐震性能が得られるとは言えない。(2) 対象となる建築物には、保有性能が目標耐震性能に比して、極めて低いものがあり、我が 国が実施してきている、保有性能を若干引き上げるような手法が有効かどうか分からない。
(3)
対象建物の立地地盤に応じた適正な設計用地震動に関する情報が不足している。以上のような問題を解決するためには、次のような方法が提案される。
A) 時代ごとに、異なる耐震基準で建設された、典型的は建築物の耐震性能を、建築図面、建
築材料等のデータを基に保有耐震性能を把握する。B) 上記建築物に適用可能な耐震補強方法について、解析ならびに構造実験により、補強効
果を検討する。C) 地震動記録ならびに地盤情報をもとに設計用地震動の適正化を図る。
D) 有効な補強方法について、適用にあたってのフロー(保有性能の把握、有効な補強方法の
選択、補強後の性能評価、等)をまとめた、補強マニュアルの作成を行う。4-2 プロジェクト成果の実用化に係る留意点(基準案の法制化を支援する上での予想される困 難な点、効果的な提案等)
(1) 現行基準における問題は、その妥当性が確認されていない、様々な仮定や、エンジニアリン
グジャッジメントによって成り立っていることにある。そこで、それらを、構造実験、地震動、地 盤などのデータによって確認し、必要な是正を行う必要がある。そのためには、まず現在の 耐震設計基準の類を集約し、それらの問題点等を洗い出す必要がある。(2) 本プロジェクトの成果をできるだけ初期の段階から、進行中の補強工事や新築工事に生か
すことが、プロジェクトの恩恵をできるだけ多く社会に還元することにつながる。しかし、プロジ ェクトの初期の段階において、新築建物に関する耐震基準や補強設計の基準を完全なもの とすることは不可能である。そのような不完全な基準に、ある程度の強制力を持たせることに 社会的なコンセンサスを取り付けることは、一般には難しい。すなわち、不完全な情報に基づく基準で設計したものへ、後日補償請求や、補強工事のやり直し請求など、係争を生む 恐れがあるからである。そのような混乱を来たさないための、何らかの過渡的状況に対する 対策が必要である。
4-3 プロジェクトの実施体制に係る留意点
(1) 「地震災害軽減センター」の形態・機能
センター設立の目的を当初
ORDINANCE
では「JICAプロジェクトを実施するため」と謳ってい たが、今回の改訂版では「JICA プロジェクトの実施および地震災害軽減に係る他の国家プロジ ェクト、国際プロジェクトを実施するため」と謳っており、MLPTL はセンターを恒久機関として位置 づけ、活動を継続させていくと表明している。センターが恒久機関として存続するためには、プロジェクト活動の中で成果が実用化され、技 術が広く普及するなど、実績を積み重ねることが必要である。センターに活動のイニシアティブを 執らせ、実質的な活動が主体的にかつ継続的に行われる体制が5カ年で確立するよう、MLPTL のセンターに対する理念を確立し、複数機関から構成されるルーマニア側関係者を実用化・応 用化指向へ方向づけることが必要である。
今後実際にセンターの形態、活動レベルがどのようになるかは予見不可能であるが、タスクフ ォース式になるにせよ、恒久的機関になるにせよ、最終的に本プロジェクトの計画が実行され、プ ロジェクトが終了した後も、本プロジェクトによってもたらされた成果が消え去ることなく、ルーマニ ア側関係者によって生かされる仕組みを作っていくことが重要である。
(2)
現場との連携センターに活動のイニシアティブを取らせ、現在進行中の
MLPTL
の耐震改修・補強事業との 連携をとり、現在、現場で必要とされている耐震基準、補強技術をセンターに伝え、また逆に、セ ンターで開発された技術、基準を実際の補強事業で実施するなど、センター・現場間での技術フ ィードバックが効果的に行われるよう、緊密な連携体制が整備される必要がある。4-4 その他
一般市民への啓蒙活動をどのように行うか、ルーマニア側の考えを明らかにさせ、計画を具体化させた。
構造技術者に対するセミナーのみならず、一般市民に対するセミナーの開催が予定されているが開催責 任者、参加者募集のアイディアなど、プロジェクトの成果がプロジェクト期間中にどの範囲で波及される計 画であるのかルーマニア側の考えを聞き取りした。
その結果、ルーマニア側の想定している「一般市民」とは、あくまで、このプロジェクト活動に関わりがあ り、プロジェクトの影響を受けた市民であり、幅広く無作為抽出した一般大衆を意味しているわけではない
ことが明らかになった。
調査団側も、この「一般市民」の範囲を限定する必要性には同意見であり、プロジェクトが実施した啓蒙 セミナーに参加した市民、補強工事の対象となった集合住宅の住民等を対象とし、彼らの意識を啓蒙す ること、また、彼らがプロジェクトの活動、セミナー活動による影響を受けどのように意識が変化してきたか を追跡調査し,プロジェクトの一般市民へのインパクトを測ることとした。