3−1 プロジェクトの目的
インドネシア国中波無線標識局改善計画(以下「プロジェクト」と言う。)は、円借 款事業により整備された既設中波無線航路標識局を、より精度の高い航路標識サービス を提供できるディファレンシャルGPS(以下「DGPS」と言う。)システムに改善する ことにより、航行の安全性を向上させると共に、海上交通の効率化の促進を図り、ひい
てはSOLAS条約締結国としての国際的責務を果たすことを目的とする。
3−2 プロジェクトの基本構想
3−2−1 要請内容の検討結果概要
(1) 要請対象サイトの変更
7局の既設中波無線航路標識局(以下「MFB局」と言う。)を近傍の既設沿岸 無線局に移設する要請内容に係わる検討を行った。その結果、要請されたNo.2 Simedan Is.及びNo.13 Tg. Mandar MFB局の移設先は、各々の要請サイトTg.
Pandang及びDonggala沿岸無線局から、それぞれPontianak及びBalikpapan 沿岸無線局に変更することが妥当と判断された。右変更の主な理由は、当該要請 サイトとなる既設沿岸無線局の局員数及び施設等の脆弱さから、システムの維持 運営に支障をきたすと思料され、保守要員等が確保できる他の既設沿岸無線局に 変更したものである。変更後の対象7サイトは表−3の「対象改修7局」の通り である。
表−3 対象改修7局
No. DGPS局 沿岸無線局名 住 所
1 Jakarta Jakarta(送信局) Jl. Ancol Baru No.1, Jakarta Utara 2 Semarang Semarang(送信局) Jl. Tapak (Tugurejo)
3 Benoa Benoa Jl. Pelabuhan Benoa
4 Ujung
Pandang Makassar(送信局) Jl. S. Abdullah No.42, Talo Lama 5 Balikpapan Balikpapan(送信局) Jl. Yos Soedarso No.1
6 Banjarmasin Banjarmasin(送信局) Jl. Pelabuhan No.1 Trisakti
7 Pontianak Pontianak Jl. Gusti Hamzah No.1
22
これら変更後の対象7サイトの沿岸無線局及び所管する航路標識事務所の管 理体制の確認を行った結果、本計画で必須となるDGPS要員の確保が可能と判 断した。自然条件については、継続して安定した運用を行う上で特段の問題点 はない。各DGPSの有効範囲は、それぞれ主要商業港と港域を包含しており、
Jakarta、Benoa等は、重要国際海峡あるいはインドネシア国が設定したシーレ ーンを包含している。
以上により、対象7サイトのいずれも計画実施の妥当性があると判断した。
(2)運用維持管理体制
円借款事業による既設MFB局の殆どが、運営維持管理費の不足と運用維持 管理体制の脆弱さにより、開局後数年を経て運用停止となっている。円借款事 業のリハビリ計画である本プロジェクトにおいてかかる事態の再発を避ける ため、プロジェクトのサステナビリティにかかる調査を最重要課題の一つと位 置付け基本設計調査を実施した。結果、本プロジェクトの運用維持管理費につ いては、航路標識関連施設の運営維持管理費用の原資として本年6月に新たに 設けられた灯台税から維持運営費を捻出するとの計画が説明されたが、右灯台 税の導入状況については、本年8月中旬現在において、正式な報告はなされて いない。
なお、維持管理体制については、下図の「DGPS運用維持管理体制図(案)」 に基づき、システムの運用維持管理にかかる総括的な責任を持つ DGPS シス テム監理部門を新たに海運総局内に設置すること及び各 DGPS 局に少なくと も2名の専任保守要員を新たに配置することにより継続的に安定した維持運 営を図ることが可能と判断される。
運用維持管理体制図(案)
インターネット
Jakarta DGPS局
Semarang DGPS局
Benoa DGPS局
Uj.Pandang DGPS局
Balikpapan DGPS局
Banjarmasin DGPS局
Pontianak DGPS局 D G P S 監 理 部 門
23
(3) DGPSシステムに関する理解度、習熟度等
海運総局の航海局のスタッフレベルでは、海運総局が整備運用を計画して いる自動位置通報システム(AIS)及び船舶通行業務(VTS)等において必 須である位置情報提供システムとしてDGPSを考えていることから、DGPS への理解度がかなり有るものと判断した。対象7局の技術者レベルにおいて は、GPS の一般的知識は有しているものの、DGPS に関する知識は十分で はない。
従って、カウンターパートトレーニング、ソフトコンポーネント、施工段 階等における技術移転、業者契約に基づく引渡し時の技術指導及び専門家派 遣等による技術協力的観点からの支援等を通じて技術レベルの向上を図る 必要がある。
(4) 既設MFB局における既存機器・設備の再利用の可否等
DGPS局を沿岸無線局に設置する計画であり、既設MFB局の既存機器・設 備のうち、再利用の可能性がある送信空中線及び発動発電機に絞って検討を行 った。その結果、次の理由から本計画で再使用可能なものは無いと判断した。
送信空中線は建設以来一度も塗装、支線張替え等の保守が実施されておらず、
今後10年以上にわたり、使用することは困難である。また、発動発電機は、
本計画に必要な電源容量を満たしておらず、再利用できない。
(5) 対象改修局の再配置に伴う周波数割当の検討
対象改修局7局が再配置されること、その有効範囲が拡大することから、既 存航空用中波無線標識局との混信も含め、計画実施に当って事前に周波数主官 庁との調整が必要である。
(6) 落雷障害への対応
一般的に、絶対確実な避雷対策は難しいが、新たに設置される空中線等に対 する適切な対策を行う必要がある。
24
(7) 基線解析
各対象改修局において、システムの基準位置を確定するため、敷地内の2 点
(A点及びB点)において位置測定を行った。各点の基線解析の結果は、表-4 の「基線解析結果」の通りである。
表-4 基線解析結果 測地系:WGS−84
局名 解析点 緯度 経度
A S 06°07′08.19820″ E 106°51′47.66374″
Jakarta
B S 06°07′08.32962″ E 106°51′47.25311″
A S 06°58′34.96703″ E 110°20′34.57313″
Semarang
B S 06°58′35.15373″ E 110°20′35.92469″
A S 08°44′35.47796″ E 115°12′35.15003″
Benoa
B S 08°44′36.24779″ E 115°12′34.96632″
A S 05°06′22.84262″ E 119°26′31.75777″
Ujung Pandang
B S 05°06′21.59272″ E 119°26′32.26951″
A S 01°16′12.36637″ E 116°48′32.02178″
Balikpapan
B S 01°16′12.59811″ E 116°48′31.70571″
A S 03°18′09.31199″ E 114°34′38.49799″
Banjarmasin
B S 03°18′08.78100″ E 114°34′37.80763″
A S 00°01′16.72827″ E 109°19′02.57480″
Pontianak
B S 00°01′16.37295″ E 109°19′04.10474″
3−2−2プロジェクトの概要と基本構想
本計画の基本構想は、既設MFB局7局を、保守要員及び商用電源の確保が容易な既 設沿岸無線局に移設し、DGPS技術を導入することにより、安定、高精度且つシステム のIntegrityが確認可能な電波標識として、航海者に位置情報等を提供し、もって航行 の安全性を向上させると共に、海上交通の効率化の促進を図るものである。
本計画でユーザーに位置情報を提供可能な海域は、下図の「DGPSシステム有効範囲 図」の通りである。
25 DGPSシステム有効範囲図
本計画は、次の項目を基本要件としてシステムを構築した。
・ 国際規格に準拠し、国内法規を遵守する。
・ 長期間の連続運転を確保する。
・ システムの安定動作と容易な保守運用を図る。
・ 維持運営費の低廉化を図る。
・ 自然環境への対応を行う。
・ 機器周辺環境への対応を行う。
・ 既存施設、設備及び機器の共用、活用を図る。
・ 安定した維持管理体制の確保を図る。
3−3 基本設計
3−3−1 基本方針
(1) 自然条件への対応
1) 屋外設置機器と屋内設置機器は、それぞれ適切に機器動作保証環境を規 定する。
2) 屋外設置機器は、防水構造ととする。
3) 屋外設置機器は、外気温度が45℃で動作すること。
4) 屋外設置機器の風速荷重は、風速45m/secを想定して設定されること。
Jakarta
Semaran
Beno
Ujung Banjarmasi
Pontianak
Balikpapa
26
5) インドネシア国の建築基準に従い、地震荷重を設定する。
6) 屋内設置機器は、コンピュータ及び周辺機器を除き、外気温度40℃で 動作すること。また、室温35℃で相対湿度98%のもとで動作し、結 露は無いものとする。
7) 屋内設置機器のうちコンピュータ及び周辺機器は、一般的に市場に流通 する機器の温度仕様に従うこと。
8) 雷害対策として、既設避雷設備の増強及び新設を行う。また、新設受信 空中線の接地場所に避雷突針がない Semarang 局においては、防雷装置 を設置する。
(2) 現地業者、現地資機材の活用等
1) 本計画は、インドネシア国においてDGPSシステムという新しいシステ ムを導入するため、調整工事は、全て製造メーカの技術者により行う。
2) 機器設置工事は、製造メーカの技術者による監督のもと、現地技術者及 び技術員によりおこなう。
(3) 施設、機材等の範囲、グレードの設定
DGPS関連機器は、既設局舎内の既存スペースまたは既設機器の再配置によ り設置スペースを確保することが可能である。従って、本計画において、DGPS 局を沿岸無線局に併設するため新たな局舎等の施設整備は発生しない。
高い測位精度を有する位置情報を提供する本システムは、いかなる自然環境 のもとでも航行船舶の安全に直接影響する業務を遂行するものであり、高い信 頼性をもった機器が必要である。
(4) 工期に対する方針
無償資金協力で実施する場合、単年度案件の実施が妥当と考えるが、実工程 には15ヶ月の確保が必要となる。なお、10月以降はインドネシア国におい ては、雨季へ移行する時期にあたり、屋外作業において、作業効率が低下する ことを考慮する必要がある。工期を守るため、鉄塔の基礎、管路埋設及び電線 敷設等の屋外作業は可能な限り雨季前に完了するよう計画する必要がある。
本計画は、既設沿岸無線局の既設中波空中線及び電源設備を共用するため、
工事工程に合わせ、現在実施中の運用業務との調整を行う必要がある。