TDAとの大きな違いは, 引力が強いときの集団状態の励起エネルギーである。(3.9)で示したよう に, TDAではκ≤κTDA のとき負の励起エネルギーが現れるが, RPAでは
κ≤κRPA= 1
DRPA(0) =− 1 2∑
ph
|fph|2 ϵph
=κTDA
2
になると, 集団状態の励起エネルギーは実数ではなく複素数になる。これも引力に対する系の不安 定性を表す。
粒子–空孔エネルギーϵph が ϵに縮退している場合, (3.26)の解は
(ℏωλ)2=ϵ2
1 + 2κ ϵ
∑
ph
|fph|2
となる。残留相互作用が弱くて
κ∑
ph
|fph|2≪ϵ のとき
ℏωλ≈ϵ+κ∑
ph
|fph|2
で近似できTDAの結果に一致する。一方, 引力が強くなるとω2λ<0 となるから,前に述べたよう にωλは実数ではなくなる。
になる。ただし,mを電子の質量としてEk=ℏ2k2/(2m)
Ckσ,k′σ′(q) =⟨k+qσ ,k′σ′|v|kσ ,k′+qσ′⟩ Bkσ,k′σ′(q) =⟨k+qσ ,k′−qσ′|v|kσ ,k′σ′⟩ である。v は電子間のクーロン力
v(1,2) = e2
|r1−r2| を反対称化した行列要素を表す。一般に
⟨k1σ1,k2σ2|v|k1′σ′1,k′2σ2′⟩=δσ1σ′ 1δσ2σ′
2
e2 V2
∫
d3r1d3r2
exp (
i(k′1−k1)·r1+i(k′2−k2)·r2 )
|r1−r2|
=δσ1σ′ 1δσ2σ′
2
e2 V2
∫
d3r2 exp (
i(k′1−k1+k′2−k2)·r2
)
×
∫ d3r
exp (
i(k1′ −k1)·r )
r
=δσ1σ′1δσ2σ′2δk1+k2,k′1+k′2
e2 V
1
|k1−k′1|2 ただし, (2.14)を使った。したがって
Ckσ,k′σ′(q) =⟨k+qσ ,k′σ′|v|kσ ,k′+qσ′⟩
=⟨k+qσ ,k′σ′|v|kσ ,k′+qσ′⟩ − ⟨k+qσ ,k′σ′|v|k′+qσ′, kσ⟩
= 4πe2 V
( 1
|q|2 − δσσ′
|k−k′|2 )
Bkσ,k′σ′(q) =⟨k+qσ ,k′−qσ′|v|kσ ,k′σ′⟩
=⟨k+qσ ,k′−qσ′|v|kσ ,k′σ′⟩ − ⟨k+qσ ,k′−qσ′|v|k′σ′,,kσ⟩
= 4πe2 V
( 1
|q|2 − δσσ′
|k−k′+q|2 )
になる。q=|q|が小さいとき|k| ≤kF,|k±q|> kFを満たす kは |k| ∼kF である。したがって, 平均的には|k−k′| ∼kFであり,C,B の括弧内の第2項は1/q2に比べて無視できる。以下では
Ckσ,k′σ′(q) =Bkσ,k′σ′(q) =v(q)
V , v(q) =4πe2 q2 とする。(3.28), (3.29)に上式を代入すると
(ℏω−Ek+q+Ek
)
Xkσ= v(q) V
(∑+ k′σ′
Xk′σ′+∑− k′σ′
Yk′σ′
)
−(
ℏω+Ek−q−Ek )
Ykσ= v(q) V
(∑+ k′σ′
Xk′σ′+∑−
k′σ′
Yk′σ′
)
したがって
N =∑+ kσ
Xkσ+∑−
kσ
Ykσ
とおくと
Xkσ= v(q) V
N
ℏω−Ek+q+Ek, Ykσ =−v(q) V
N ℏω+Ek−q−Ek これをN の定義式に代入すると
F(ω,q) =2v(q) V
(∑+ k
1
ℏω−Ek+q+Ek −∑−
k
1 ℏω+Ek−q−Ek
)
= 1 (3.30) になる。因子2はスピンの自由度(σの和)である。
θk=
{ 1, |k| ≤kF
0, |k|> kF
とするとF(ω,q)は
F(ω,q) = 2v(q) V
∑
k
( θk(1−θk+q)
ℏω−Ek+q+Ek − θk(1−θk−q) ℏω+Ek−q−Ek
)
である。第2項でkを −k に置き換えθ−k=θk,E−k=Ek を使うと F(ω,q) = 2v(q)
V
∑
k
(θk(1−θk+q)
ℏω−ωk,q −θk(1−θk+q) ℏω+ωk,q
)
= 2v(q) V
∑
k
θk(1−θk+q) 2ℏωk,q
(ℏω)2−(ℏωk,q)2, ℏωk,q =Ek+q−Ek (3.31) と表すこともできる。
F(ω,q)をωの関数として図示すると下図のようになる。F(ω,q)はω=±ωk,qで発散し,ω→ ∞ では 1/ω2 に比例する。系の体積 V が有限ならばk は離散的であるから ωk,q も離散的な値をと る。破線は
ω=ωk,q = ℏ 2m
(
2k·q+q2 )
, ただし |k| ≤kF, |k+q|> kF (3.32) である。交点•の ω がF(ω,q) = 1の解を与える。
F(ω,q)
1
0 ω
図から分かるように解には2種類ある。1つは破線に挟まれた解である。V → ∞ では破線の間 隔は無限小になるから,この解はωk,q になり連続的に分布する。これは粒子・空孔励起である。粒 子・空孔励起のω には|k| ≤kFであるため上限ωmaxがある。(3.32)より
ωk,q = ℏ 2m
(
2k·q+q2 )≤ ℏ
2m (
2kq+q2 )≤ ℏ
2m (
2kFq+q2 )
=ωmax(q) である。
残りの解は,前図で1/ω2で減少していく曲線との交点である。これは粒子・空孔励起とは別の種 類の励起で集団励起である。プラズマの場合,この励起状態はプラズマ振動と呼ばれ,粒子・空孔励 起よりも高い励起エネルギーに現れる。プラズマ振動の励起エネルギーω を求めよう。(3.31)の
S=∑
k
θkθk+q
2ℏωk,q
(ℏω)2−(ℏωk,q)2 =∑
k
θkθk+q
2(Ek+q−Ek) (ℏω)2−(Ek+q−Ek)2 の部分でk′=k+qとすると
S=∑
k′
θk′−qθk′
2(Ek′−Ek′−q) (ℏω)2−(Ek′ −Ek′−q)2 k′ =−kとすると
S =∑
k
θk+qθk 2(Ek−Ek+q)
(ℏω)2−(Ek−Ek+q)2 =−S であるからS= 0になる。したがって
F(ω,q) =2v(q) V
∑
k
θk
2ℏωk,q
(ℏω)2−(ℏωk,q)2 = 2v(q) V
∑
k
( θk
ℏω−ℏωk,q − θk ℏω+ℏωk,q
)
=v(q) (
f(ω,q) +f(−ω,q) )
になる。ただし
f(ω,q) = 2 V
∑
k
θk ℏω−ℏωk,q
である。kの和を積分で表すと f(ω,q) = 2
V V (2π)3
∫ kF 0
d3k 1
ℏω−ℏωk,q = 1 2π2ℏ
∫ kF 0
dk k2
∫ 1
−1
dt 1
ω−ℏ(2kqt+q2)/(2m) ここで,t= cosθ,θはq とk のなす角である。更に
k=kFk′, x= m ℏkFq
(
ω−ℏq2 2m
)
とすると
f(ω,q) = mkF2 2π2ℏ2q
∫ 1 0
dk′k′ (
log|k′+x| −log|k′−x|)
= mkF2 4π2ℏ2q
[
2xk′+ (k′2−x2) log k′+x
k′−x ]k′=1
k′=0
= mkF2
4π2ℏ2qg(x), g(x) = 2x+( 1−x2)
log 1 +x
1−x
であるから
F(ω, q) =v(q) mk2F 4π2ℏ2q
(
g(x+) +g(x−) )
, ただし x± = m ℏkFq
(
±ω−ℏq2 2m
)
(3.33) になる。係数
v(q) mkF2
4π2ℏ2q =e2mk2F πℏ2q3
と x± の次元は無次元である。例えば,ここで採用しているCGS静電単位系では,無次元の微細構 造定数αがα=e2/ℏcであることに注意すると
e2mk2F πℏ2q3 = α
π mc2kF2
ℏc q3 = [エネルギー][長さ]−2
[エネルギー×長さ][長さ]−3 =無次元
である。
q →0 のとき F(ω, q) = 1 の解を求めよう。ω ̸= 0 とすれば q→0 のときx± → ± ∞ になる。
x→ ± ∞では
g(x) = 2x+(
1−x2)2 x
( 1 + 1
3x2 + 1 5x4+· · ·
)
= 4 3x
( 1 + 1
5x2 +· · · )
であるから
F(ω, q) =v(q) mkF2 3π2ℏ2q
( 1 x+ + 1
x− +1 5
( 1 x3+ + 1
x3− )
+· · · )
これと
1 x+
+ 1
x− ≈ℏkFq mω
ℏq2
mω , 1 x3+ + 1
x3− ≈3 (ℏkFq
mω )3
ℏq2 mω より
F(ω, q) =v(q) k3Fq2 3π2mω2
( 1 +3
5 (ℏkFq
mω )2
+· · · )
(3.34) である。したがって
ωp=
√ 4πe2
m k3F 3π2 =
√4πe2ρ
m , ρ= k3F
3π2, vF=ℏkF
m とするとF(ω, q) = 1は
ωp2 ω2
( 1 + 3
5 v2Fq2
ω2 +· · · )
= 1, ∴ ω≈ωp
( 1 + 3
10 v2Fq2
ωp2 )
(3.35) になる。ωpをプラズマ振動数という。vFはフェルミ速度である。
(3.33)を用いて F(ω, q) = 1を数値的に解いた結果を下図に実線で示す。破線は近似解(3.35)を 表す。電子密度ρとして金属中での電子密度ρ≈1023cm−3= 100 nm−3 を用いた。
mc2≈0.5×106eV, ℏc≈200 eV nm, α= e2 ℏc ≈ 1
137 であるからωpを概算すると
ℏωp=
√4πα(ℏc)3ρ mc2 ≈
√4π×(200)3×100
137×0.5×106 eV = 80
√ π
137eV = 12 eV
である。粒子・空孔励起エネルギーの最大値ωmaxに対してω(q) =ωmax(q)となるq以上では,プ ラズマ振動に対応する実数解は存在しない。
ℏωmax (q)
2kF
kF
ℏωp
10 20
10 20 30
ℏω(eV)
q(nm−1) 粒子・空孔励起
プラズマ振動は次のような簡単な古典力学的議論でも導ける。電子の平衡状態の密度をρ0 とす る。平衡状態ではプラズマは電気的に中性であるから,正電荷の粒子の密度ρB はρB =ρ0である。
正電荷粒子は電子に比べて重いため, その電荷密度は電子の運動に無関係に常に ρ0 とする。電子 の密度がρ=ρ0+δρ(r, t)に変化したとすると,ポアソン方程式から
∇·E= 4πe (
ρB−(
ρ0+δρ(r, t) ))
=−4πe δρ(r, t)
の電場E が発生する。電子ガスの速度場をv(r, t) , 圧力をP(ρ)とすると,運動方程式は微小量の 1次まで考えると
mρ0∂v
∂t =−∇P(ρ0+δρ)−eρ0E=−κ∇δρ−eρ0E, κ= ∂P
∂ρ
ρ=ρ0
である。また,連続の方程式は
∂ρ
∂t +∇·ρv= ∂δρ
∂t +ρ0∇·v= 0 である。したがって
∂2δρ
∂t2 =−ρ0∇·∂v
∂t = κ
m∇2δρ+eρ0
m ∇·E= κ
m∇2δρ−4πe2ρ0
m δρ (3.36)
になる。長波長(q→0 )では右辺第1項は第2項に比べて無視できるから
∂2δρ
∂t2 =−4πe2ρ0
m δρ これからδρは角振動数 √
4πe2ρ0 m で振動する。