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資料:Agreste‑Enquete aviculture,1994,図72および73   より作成.

大させてきたとはいえ,未だ協同組合やその他の 生産者グループによる統合が半数以上を占める

(上述の分類では(i)と(ii))。

 またこうした全体統合方式における生産農家へ の報酬方法を見ると,標準鶏では,修正付き定額 支払い方式が採用されているのに対し,高級鶏で は最低保証つきで修正つきの市場価格で支払われ ている場合が多い(第10表)。例えば食鶏処理会 社の業界1位のDOUX社(フランスで生産され る鶏の3分の1を扱う)生産部長ピエール・ミ

シェル氏は,同社の報酬方法について次のように 述べている。「わが社では,生産農家は自らの経営 の所有者であり,生産に応じた支払いを受けてい ます。我々は彼らに対して,衛生基準や規定され た遺伝品種に対応した雛と飼料を与え,彼らに技 術コンサルタント,衛生サービスを供与します。

他のすべての経費(保険料や敷き藁など)は生産 農家が負担します」(Agra Presse Hebdo 〔1〕)。

この場合,生産者の報酬については次の三つの基 準が考慮される。すなわち,平均重量と飼料要求 率(鶏1kg生産するに必要な飼料の重量),販売 可能な家畜の率(ラベルルージュであれば規格外 率)である。こうして,例えば平均的な飼料要求 率1.87のプラスマイナス10%をはさんで,上位 25%の生産者と下位25%の生産者が差異化され るという。このようなトーナメント(競争)方式 により,プラスのボーナスとマイナスのボーナス が生産者に与えられる。このような定額支払い方 式は,仕組みそのものは標準鶏でもラベルルー

ジュ鶏でも変わらず, 1kg当たり,ないし1平方 メートルあたりの固定額が設定され,これに飼料 要求率などを基準としたボーナスが加算される。

第10表 全体統合における報酬方法

(%)

報酬方法 標準鶏 高級鶏

修正付き定額支払い 64 33

修正無し定額支払い 11

市場価格 (最低保証付き)

(修正付き,最低保証無い (修正付き,最低保証付き)

4 10  7

 2 15 36

その他

全体 100 100

資料:Agreste Enquete aviculture, 1994,表31.

飼料要求率という容易に観察可能なインセンチブ メカニズムがビルトインされており,これを通じ てインテグレーターは農家による鶏飼養にかかる ケアの質,すなわちコミットメント遵守を容易に 監視できるのである(6)。 こうしてこのガヴァナン ス構造は,インテグレーターによる完全統合とい うコストのかかる手法に訴えることなく,緊密な コーディネーションを維持できるのである。

 ところで,こうした契約では品質グループは複 数の処理会社や飼料会社を含むのが常であり,こ れは機会主義を抑制するように働く。競合的な処 理会社の存在によりコミットメントの遵守が促さ れるのである。また契約条項の75%は規格の仕 様や運営方法,紛争解決に関する手続き的なもの にとどまり,価格や費用,量などは上限や下限の 大枠を決めているに過ぎない。契約がこのように 不完備であるため,品質グループによる事後的な コーディネーションが決定的に重要になる。

 (3)ハイブリッドガヴァナンスと組織イノ    ペーション

 1)品質グループによるコーディネーション  これまで論じたように,品質シグナルが,それ ぞれ独立した企業により共有され,また単一企業 だけではこの品質を広範囲にシグナルするのに十 分な生産規模を有していない場合に,集合的品質 表示が差別化戦略として採用される。しかしこう した品質シグナルの信頼性を保証するためには,

事業者間の活動のコーディネーションと,機会主 義的な行為を監視する機構(ガヴァナンス構造)

が立ち上げられなければならない。仲間集団

第7図 オールチャンネル型ネットワーク(左)と車輪型ネットワーク(右)

資料:Raynaud et Valcechini 〔38,図1〕.

peer groupe associationに関するウィリアムソ ン(Williamson〔50, p. 78〕)の指摘によれば,

交渉にかかるコストや意思決定単位の削減という 理由からオールチャンネル型ネットワークよりも 車輪型ネットワークが選好されるという(第7図 を参照,見やすさを考慮してReynaud et Valce‑

chini〔38〕から引用)。ラベルルージュ家禽肉の 例でいえば,生産農家や処理会社からなる「品質

グループ」が立ち上げられ,これがパートナー間 のコーディネーションを担当することになる。

 ところでラベルルージュ家禽肉の取引の流れ は,雛鳥生産農家一入工孵化場一生産農家一飼料 会社一処理会社一流通業者という形をとってい る。例えば生産量の調整においては品質グループ による取引のコーディネーションは,まず流通業 者から処理会社に販売状況についての情報が入 り,これが品質グループに伝達される。次いで品 質グループは雛鳥生産農家や人工孵化場に雛を注 文し,さらにこのグループが生産者の選択と生産 配分を行い,鶏の出荷期日を指定するのである。

 2)組織イノベーションとしてのハイブリッ    ドガヴァナンス

 ラベルルージュ家禽肉は経験財ないし信用財で あり,消費者は従属的な立場に置かれていて,品 質グループや認証機関による生産者のコミットメ ントの遵守の監視が,品質シグナルの信頼を確立 する。この監視にかかるコストを飛躍的に節減さ

せているのが「仕様明細書」という組織的イノ ベーションである。これが生産者の遵守すべき条 件や観察可能な特徴を定義している。生産農家に よる「仕様明細書」の遵守の他にも,生産農家の 加盟に当たっては,評判や「抵当(人質)」条項

(鶏舎の建築投資)という参入スクリーニングが 働く。鶏舎に投資している以上ラベルルージュか ら排除されるような機会主義的行動はとらないで あろう,という仮説である。もっとも(1)の2)

で見たように,この物理的資産の特殊性はそれほ ど高くはないようである。またこれと関連して,

認証の取り消しという脅威がコミットメントをク レディブル(信頼に足るもの)にしている(Wi1‑

liamson〔51〕も参照)。

 ところで,こうした監視にかかる費用はメン バーによる分担金と取引手数料によりまかなわれ る。また監視は94年(すべての認証機関は欧州規 格EN45011に適合するように義務づけられた)

以前は旧認証機関によりなされていたが,その場 合でも83年から94年まではそれぞれの旧認証機 関による検査および監視の均質性を保証するため に,SYNALAFは補足的な監視をQualite France 社に委託していた。

(4)競争規則とハイブリッドガヴァナンス 1)農業側に有利な競争規則に向かうのか?

フランス経済財務産業省不正防止総局(DGCCRF)

は91年に競争評議会に対してラベルルージュ家 禽肉にかかる取引のいくつかの要素が競争規則に 違反するとして申し立てを行った。しかし1994 年7月5日の評議会の決定(n0.94−D−41)は,

競争規則に違反する行為は存在しなかっと判断し た。その後,農業者側の「実力闘争」(量販店の占 拠等)もあって競争政策は農業側に譲歩した形で 推移している。例えば, 2001年5月15日のいわ ゆる新経済規制法は果樹および野菜の相場の低迷 時に,業種間組織の合意かおる場合には,政府は 生産者最低価格についての協定を義務付けること ができる旨規定している。しかしこれについて

も,経済財務産業省不正防止総局の担当官はリス クありとする。「最低価格の設定については(中 略)EUの統一規則に違反しているのではないか と考えている。したがって,例外的な状況で発動 したとしてもEUの独占禁止のルールに違反して いるということで訴追されるリスクかおる。新経 済規制法でも,最低価格の設定が位置付けられて おり,これについてもEU委員会がノーといって いることをやろうとしているので,その運用につ いては注視されている」(梗庭〔5〕)。さらに競争 政策という分野そのものにおいて,その性格上

(つまり経済学と法律学という境界領域にあると いうその学問的性格上,また国際交渉などの現実 政治に強く影響されているという意味で),学問 的に定説とされていることがあまりにも少ない

(後藤・鈴村編〔4〕を参照)。競争政策を経済学的 に根拠づけることが困難な課題をなしているので ある。このように,現在フランスにおいて農業側 に有利な競争政策の運用が見られる一方, WTO 等の国際交渉を含め非常に不確実な要因が多いの である。そこで我々はそもそも競争政策を主導し ている原則を一瞥しておく必要かおる。

 2)競争法の主導原理

 品質政策と競争規則の両立はしばしば困難な課 題である。その理由は,競争政策が反競争的行為 の禁止と公正取引,市場の透明性などを通じて消 費者の厚生を高めることを主眼とするのに対し,

品質政策は消費者への情報提供という消費者の厚 生にかかる品質表示管理政策を越えて,表示の管 理に関わる生産者の組織化とコーディネーション にまで踏み込まざるを得ないからである。

 競争規則の依拠する経済モデルは,(最近はさ すがに,あまり強調されることは少なくなったと はいえ)およそのところ,完全競争市場モデル,

つまり多数の供給者の存在と製品の均質性および 完全贋報にもとづいている(M6nard〔26〕)。この 場合価格は限界費用に限りなく近づく傾向を有す る。こうした仮定の下で競争政策の主導的原理は 次の二つを前提とする。一つは,支配的地位の存 在と製品の代替可能性を測定するための,よく画 定された市場,つまり「関連市場」が画定できる ということであり(村上〔9, pp. 383‑386〕も参 照),二つ目は,こうした市場では統合型組織とし ての企業が機能しているということである。ここ では競争規則は,価格が限界費用に等しくなるこ とを妨げる行為を排除するために次の二つの実践 を除去するように規定されている。

  ・市場支配力を生む実践(インテグレーショ    ンによる競争者数の削減,カルテルを通じ    た競争者間の協調的行為)

  ・消費者への情報の歪曲

 このようなモデルの下で想定される市場では,

ハイブリッド組織は競争規則に照らして供給調整 戦略と同一視されることになるが,集合的品質表 示におけるように経済単位間のコーディネーショ ンが取引の特性から生じるような場合(つまり資 産特殊性から生じる機会主義のリスクを抑制する ために)には,これを反競争的と解釈するには難 点かおる。もし競争規則違反としてこのハイブ リッド型組織が禁止されるならば,インテグレー

ションの強化という逆効果を生み出し,消費者の 選択の幅を狭め,かえってその厚生を減少させる ことになる。

 もっとも,「新しい産業組織論」等の最近の経済 理論の展開は上述の競争政策の主導的原則につい て次の二つの点をめぐって柔軟化させている。

  ・不完全競争(企業による差別化戦略)

  ・規模の経済および範囲の経済(市場支配力    を強めながらも消費者に恩恵をもたらす)

 つまり不完全競争により情報の非対称性やサー チ費用の上昇が生じたとしても,情報開示を促す ことで問題は回避でき,規模の経済および範囲の 経済により市場支配力が生じたとしても,潜在的 参入者の存在により経済厚生が維持されるという

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