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フライブルク(ドイツ)から考える原発に依存しないまちづくり  (三井康平)

 ここまで原発が歩んできた道のりとそれに関係する自治体・人々の姿を見てきましたが、第 8章では原発に依存しないまちづくりのために必要なことは何なのかという視点から、実際に 脱原発のまちを構築しているドイツのフライブルクの事例を紹介します。

 フライブルクは人口約22万人の都市で、自治体面積のうち住宅・産業・交通に利用されてい る面積は約3割という、都市計画の線引きが厳しいコンパクトシティとして知られています。

そんなフライブルクの一番の特徴は、まちを挙げてエネルギー転換に取り組んでいることです。

フライブルクではこれに1970年代ごろから取り組んでいるのですが、この動きが後にドイツ全 体に広がって、国全体のエネルギー戦略に大きな影響を与えました。そのドイツの今のエネル ギー戦略が脱原発と脱化石燃料です。実際にそのエネルギー戦略が形づくられるまでの経緯を 見ていきましょう。

 まず、1955年に連邦原子力省が発足して、西ドイツの経済復興に歩調を合わせて原発が次々 に建設されていき、1960年代末までに六カ所の原発が稼働しました。また、1973年の石油危機 もその追い風となりました。しかし、その動きに待ったをかけたのは、原発建設予定地を中心 とした地域住民です。ドイツ各地で反対集会やデモが行われ、原発反対の動きが活発になって いきました。

 そのさなか、チェルノブイリ原発事故が発生しました。この事故を重く受け止めたフライブ ルクの市議会では、事故の一カ月後に全会一致で脱原発に関する決議が採択されました。ドイ ツ政府も2000年に原発全廃の方針を決定し、脱

原発に向けて本格的にかじを切りました。そし て2011年の福島原発事故が起きたことで脱原発 へのスピードを早め、稼働中の原発7基を停止 し、残り9基の停止時期も明記して「原発ゼロ」

を2020年代に実現させる方針を固めました。

 続いて、脱化石燃料に向けた取り組みを見て いきます。ドイツでは国全体の温室効果ガス排 出量削減目標が定められており、1990年比で

2020年までに40パーセント、2050年までに80パーセントを削減することになっています。また、

自然再生可能エネルギーの普及・拡大政策が取られており、その一つが1991年に始まった再生 可能エネルギー電力買取制度です。この制度は再生可能エネルギー法と共にドイツでの自然再 生可能エネルギーの普及を支えています。また、図17のグラフから分かるように、ドイツでは 2000年から2012年にかけて自然再生可能エネルギーによる発電量が約6倍に増えており、特に 太陽光発電の増加が著しくなっています。

 フライブルクのまちづくり政策は大きく三つの柱から成り立っています。一つ目が省エネの 推進です。「市内の移動は公共交通機関で」というコンセプトを掲げており、市内を走る路面電

図17 自然再生可能エネルギー設備容量

(出典)ドイツ連邦環境省(BMU)より作成

車は主に住宅地を経由する形で市街地中心部まで直通10分で運行されています。また、路面電 車をはじめとした公共交通機関が乗り放題の定期券を使用する「レギオカルテ(地域環境定期 券)」を採用しているのが特徴です。また、バス交通も路面電車と接続しやすいようにするなど の工夫がされています。自転車専用道路やカーシェアリングといった制度も発達しています。

 二つ目の柱はエネルギーの高効率化で、「コージェネレーションシステム(熱と電力の同時利 用システム)」を利用して地域暖房を導入しています。コージェネレーションシステムで発電・

発熱した場合、エネルギーロスは合計10パーセントで済みます。火力発電所で発電してボイラー で暖房した場合、エネルギーロスは合計40パーセントにも上ります。このように、ドイツでは 地域暖房の仕組みを使ってエネルギーを効率的に使っています。

 三つ目の柱は自然再生可能エネルギーの推進です。チェルノブイリ原発事故以降、フライブ ルクでは太陽光発電の利用を促進し、まちを活性化させてきました。特に市民が協力的で、市 民出資で太陽光発電装置の設置を行っているケースが多いのが特徴です。また、企業もサッカー 場やビール工場の屋根・外壁を利用して、太陽光発電を大規模に行っています。さらに、農村 部では風力発電装置の設置が進んでいます。

 日本も長期的には自然再生可能エネルギーを軸にエネルギー供給を行っていくことを提案し ます。環境省のロードマップでは、2020

年までに自然再生可能エネルギーの増加 が見込まれており、特に太陽光発電を大幅 に増やす計画となっています(表7)。し かし、コスト面から見ても、まだまだ一般 への普及は容易ではないのが現状です。

 そこで必要になってくるのが、JAや農 林漁業の協同組合からの支援です。現在 もJAバンク鹿児島やJA富士宮などで太陽

光発電装置設置のためのローンが組まれており、地元企業と連携した発電事業が行われていま す。これらの事業の幅を広げ、規模を拡大させていくべきだと考えます。

 加えて、再生可能エネルギーの固定価格買取制度の強化も必要です。昨年(2014年)、電力 会社が電気事業者からの新規申請の受入を中断する動きが広がりましたが、自然再生可能エネ ルギーを普及させるのに重要な役割を担っているこの制度を存続させるためにも、送電網を強 化するなど、電力供給面を改善するとともに、電力会社の適正利潤を基準にした価格ではなく、

目標導入量達成のために必要な買取価格を定めるなど、制度面の改善も必要です。これらの取 り組みを通して、自然再生可能エネルギーの普及を図っていくべきだと考えます。

 ここまでフライブルクの事例の日本への応用可能性を見てきましたが、最後に日本の自治体 の取り組みとして高知県梼原町の事例を紹介します。梼原町は1990年代後半から地域資源を 活用したエネルギー循環を志向しはじめ、「風をおこし、町をおこす」というスローガンの下、

1999年から町営で風力発電を行っています。また、住宅用太陽光発電の購入に対して補助金を 交付するなどの働き掛けをした結果、現在、梼原町の太陽光発電設置住宅割合は全国平均の約 5倍となっています。このように、梼原町では町のエネルギー自給率を向上させながら、産業 の活性化と雇用創出を実現しています。

 フライブルクにしても、梼原町にしても、まち全体でエネルギーを生産しようという強い意 志の下、そのエネルギー供給が実際にまちを活性化させ、産業も住民も一体となったまちづく りがなされています。こういった自然再生可能エネルギーと共存したまちづくりこそが、これ

表7 日本の自然再生可能エネルギーの普及見通し〈単位kw〉

(出典)環境省「ロードマップ」より作成

からの日本に必要となってくるのではないでしょうか。

終章

 (中村雄一)

 これまで見てきたように、原発が安いというのは発電量当たりのコストが安いという事実を 言っているに過ぎず、実際には原発立地自治体に交付する交付金や使用済み核燃料の処理コス トを含めると、原子力発電は決して安い発電方法ではないことが明らかになっています。また、

原発は事故が起これば人の健康や環境に多大なる悪影響を及ぼすというリスクを孕んでいます。

これらのことを踏まえて、これからの日本は脱原発へと向かっていく必要があり、その一つの 手立てとして、まちが自然再生可能エネルギーへの転換を図っていくことを提案します。

 ドイツでは自然再生可能エネルギーにおける雇用が2009年から2010年にかけて約7〜9万人 生み出されています。それに対して、日本の原子力産業における雇用は4万5000人ほどであり、

自然再生エネルギーの方が原発よりも雇用創出効果が期待できると言えます。従って、地域で 自然再生可能エネルギーを生み出すことはまちの活性化をもたらすだけでなく、それに伴う新 たな経済循環を生み、まちの環境保全、さらには住民・企業・行政間の結び付きの強化にもつ ながります。また、全国各地で自然再生可能エネルギーによるエネルギー転換がなされ、それ がなされたまちが相互に連携して大都市や産業界へエネルギーを供給することで、国全体のエ ネルギー転換も達成されます。さらに、エネルギー供給によって生まれる利益はそれぞれのま ちにもたらされるので、まちが豊かになり、住みよい地域社会が実現されます。こういったエ ネルギー転換による好循環が、今後の日本のまちを活気づけるプロセスとなっていくのではな いでしょうか。