〔アメリカ統一商事法典〕
第2A編 リース
第1章 総則
第2A-102条(適用範囲)
本編は,形式を問わず,リースを設定するすべての取引に適用される。
第2A-103条(定義と定義の索引)
(1) 本編においては,文脈から異なる読み方が必要とされる場合を除き,以下の定義によ る。
(g) 「ファイナンス・リース」とは,以下の要件を満たすリースをいう。
(i) レッサーが物品を選択,製造又は供給しないこと
(ⅱ) レッサーが当該リースに関して物品又は物品を占有し使用する権利を取得する こと,及び,
(ⅲ) 以下のうちのいずれかが生ずること。
(A) レッサーがリース契約に署名する前に物品又は物品を占有し使用する権利を取 得した旨の契約の写しをレッシーが受け取ること,
(B) レッサーが物品又は物品を占有し使用する権利を取得する旨の契約をレッシー が承認することがリース契約の効力発生の条件であること,
(C) レッシーが,リース契約に署名する前に,レッサーが物品又は物品を占有し使 用する権利を取得する契約に関連して,又はその契約の一部として,物品供給者 からレッサーに与えられた,(物品の製造者等の第三者のそれを含む)約束及び保 証,保証の免責,救済方法の制限もしくは変更,又は損害賠償額の予定,につい て明記した,正確で完全な陳述書を受け取ること,
(D) リースが消費者リースではない場合に,当該リース契約にレッシーが署名する 前に,レッサーがレッシーに書面で以下のことを知らせること。
(a) 当該物品をレッサーに供給する者の同一性(identity)。但し,レッシーがそ の者を選択し,かつその者から当該物品又は物品を占有し使用する権利を取得 することをレッサーに指示したときはこの限りでない。
(b) レッサーが物品又は物品を占有し使用する権利を取得する契約に関連して,
又はその契約の一部として,物品供給者からレッサーに与えられた(第三者の それを含む)約束と保証に対し,レッシーが本編のもとで権利を有すること,
(c) レッシーが物品をレッサーに供給する者と交信することができ,かつ,約束
及び保証(それらの又は救済方法の免除や制限を含む)についての,正確で完 全な陳述書を受け取ることができること。
(n) 「レッシー」とは,リースのもとで物品を占有し使用する権利を取得する者をいう。
文脈から異なる内容が明瞭に示されていない限り,この用語はサブレッシー(転借人)
を含む。
(p) 「レッサー」とは,リースのもとで物品を占有し使用する権利を移転する者をいう。
文脈から異なる内容が明瞭に示されていない限り,この用語はサブレッサー(転貸人)
を含む。
(x) 「供給者」とは,レッサーがファイナンス・リースによりリースされる物品を購入 し又はリースで借りる相手方となる者をいう。
(y) 「供給契約」とは,レッサーがリースされる物品を購入し又はリースで借りる契約 をいう。
第2A-209条(供給契約の受益者としてのファイナンス・リースのレッシー)
(1) 供給契約における供給者のレッサーに対する約束及び,明示的か黙示的かにかかわら ず,すべての保証(当該供給契約と関連して又はその一部として与えられた第三者によ るものも含む)を援用する権利は,その供給契約に関係するファイナンス・リースのも とでのレッシーの賃貸借上の権利の限度において,レッシーにも及ぶ。この場合におい て,その権利は,保証及び供給契約の条件並びにそこから生ずる全ての抗弁又は請求権 に服する。
(2) 供給者の約束及び保証を援用する権利のレッシーへの拡張(第2A-209条(1)項)
は,(i)供給契約から生じたか否かを問わず,供給契約の当事者の債権債務を変更するも のではなく,又,(ⅱ)供給契約上のいかなる義務や責任もレッシーに負わせるものでは ない。
(3) 供給者とレッサーによる供給契約のいかなる変更又は解消も供給者とレッシーの間で 有効である。ただし,その変更又は解消の前に,レッシーが当該供給契約に関係するフ ァイナンス・リース契約を締結したとの通知を当該供給者が受けたときはこの限りでな い。もしその変更又は解消が供給者とレッシーの間で有効である場合は,レッサーは,
リース契約の下でレッサーがレッシーに負う債務に加えて,供給者のレッサーに対する 約束及び変更又は撤回された保証を,変更又は撤回の前に存在し,レッシーが援用でき たのと同じように,引き受けたものとみなされる。
(4) 第(1)項による,供給者の約束及び保証に対する権利のレッシーへの拡張に加えて,レ ッシーは,レッシーと供給者との間の合意又は他の法律から導かれる,供給者に対して 持ちうる全ての権利を保持する。
第2A-212条(商品性の黙示的保証)
(1) ファイナンス・リースの場合を除き,物品に商品性があるという保証は,もしレッサ ーがその種類の物品に関して商人である場合には,リース契約に黙示的に含まれる。
第2A-219条(損失の危険)
(1) ファイナンス・リースの場合を除き,損失の危険はレッサーが負い,レッシーには移 転しない。ファイナンス・リースの場合には,損失の危険は,レッシーに移転する。
第2A-220条(債務不履行の損失危険に対する効果)
(1) 損失の危険がレッシーに移ることになっており,移転の時期が定められていないとき は,
(a) 物品の提供または引渡しが,リース契約に適合しておらず,拒絶権を行使できる場 合は,その損失の危険は,追完又は受領まで,レッサーに留まり,ファイナンス・リ ースの場合には,供給者に留まる。
第2A-407条(撤回できない約束:ファイナンス・リース)
(1) 消費者リースでないファイナンス・リースの場合においては,リース契約におけるレ ッシーの約束は,レッシーによるその物品の受領とともに,撤回不能で,かつ,独立し たものとなる。
(2) 第(1)項により撤回不能で独立したものとなった約束は,
(a) 両当事者間,及び,両当事者の譲受人を含む第三者との関係で,有効であり,かつ 履行を強制することができ,
(b) その約束が与えられた相手方当事者の同意なしに,解約,解除,変更,拒絶,免責,
または代替されることはない。
第2A-516条(物品受領の効果;債務不履行の通知;受領後の債務不履行の立証責任;
応訴すべき者に対する請求または訴えの通知)
(2) レッシーが物品を受領したときは,受領された物品の拒絶をすることができない。フ ァイナンス・リースの場合において,不適合を知って受領されたときは,受領はそれを 理由として撤回することができない。それ以外の場合において,不適合を知って受領さ れたときは,不適合が適切な時期に追完されるであろうとの合理的な推定に基づいて受 領がされた場合を除き,それを理由として受領を撤回することができない。受領は,そ れ自体によっては,本編又は不適合に関するリース合意によって与えられる他の救済方 法を妨げない。
〔共通参照枠草案(DCFR)〕
共通参照枠草案(DCFR)では,個別の典型契約に関する第 4 部において動産賃貸 借(Lease of goods)に関する章(IV.B.)を定めている。その第 4 部 B 章の適用対象に 関する IV.B.-1:101 条 4 項では,契約が信用供与の目的を有していること,貸主が信用 供与者としての役割を担っていること,または借主が貸借物の所有者となるオプション を有しているといった事情は,第 4 部 B 章の規定の適用を排除するものではない,と規 定されている。ただし,同条 3 項では,貸借期間の終了後に貸借物の所有権が移転する ことが合意されているときは,当事者が当該契約を賃貸借と呼んでいたとしても,動産
賃貸借に関する第 4 部 B 章の規定は適用されない旨の規定が置かれている。このように,
DCFRでは,契約終了時における借主への所有権移転が合意されている場合を除き,
いわゆるファイナンス・リースについても動産賃貸借に関する規定が広く適用されるこ とになる。
また,動産賃貸借に関する個別の規定の中には,ファイナンス・リースとしての特徴 を有する契約に適用されることを前提としたいくつかの特別の規律を定めているものが ある。ただし,それらの特別規定においては,その賃貸借において信用供与が目的とさ れていることがその既定の適用に際してのメルクマールとされているのではなく,賃料 の算定方法や供給者との契約関係の存在といった特徴が適用要件として組み込まれてい る点が,特徴的である。
(1) まず,IV.B.-2:103 条(黙示の更新)では,黙示の更新に関する III.-1:111 条によっ て期間の定めのある動産賃貸借契約が更新される場合で,かつ賃料が目的物に関する費 用の償却を考慮して算定されていた場合には,更新後の賃料額は既払賃料額を考慮して 合理的な範囲に制限される旨の規定が置かれている(IV.B.-2:103 条 1 項)。以上の規定 に関しては,貸借期間における賃料額が目的物に関する費用の償却を考慮して定められ るのは,貸主が供給者から物品を調達する場合における三当事者での契約となることが 多いものの,そのような賃料の算定方法は二当事者間の契約においても用いられる場合 があるため,本条では,それらの場合を広く含む形で更新の場合の賃料についての特別 規定を定めている,との説明がなされている(Christian von Bar/Eric Clive (eds.), Principles, Definitions and Model Rules of European Private Law: Draft Common Frame of Reference (DCFR), Full Edition vol.2, 2009, p.1474)。
(2) IV.B.-3:101 条(物品の使用可能性)では,1 項において,貸主は貸借期間の開始時 に III.-2:101 条によって定まる履行地において目的物が借主に使用できるようにする義 務を負う旨の規定を定めており,さらに 2 項において,物品が借主によって指定された 供給者から取得される旨定められている場合には,1 項の規定にかかわらず,借主の営業 所(場合によっては,借主の住所地)において目的物を借主に使用できるようにする義 務を負うものとされている。
(3) IV.B.-3:104 条(貸借期間における物品の適合性)では,1 項において,貸借期間を 通じて,物品が契約によって定められた数量,品質および種類を備えており(a 号),か つ物品が貸借の目的に適合していること(b 号)が,貸主の義務内容として規定されてい る。ただし,2 項において,賃料が目的物に関する費用の償却を考慮して算定されていた 場合には,1 項の規定は適用されない旨定められている。
(4) IV.B.-4:104 条(物品の供給者に対して向けられるべき救済)は,物品が供給者から 提供される三当事者間での契約に対して適用される特別の規定であり,本条の適用対象 を定める 1 項においては,(a) 借主によって指定された供給者から借主が物品を取得す ること,(b) 物品に関する明細書の提供や供給者の指定に際して貸主の能力や判断に借 主が主として依存していないこと,(c) 供給契約の条項を借主が承認していること,(d) 借主を供給契約の当事者として,または借主がその当事者であるのと同様に,供給契約 上の債務を供給者が借主に対して法律または契約上負っていること,(e) 供給者が借主