• 検索結果がありません。

第 3 章 事例研究及び分析

3.4. 両社の比較分析

3.4.4. コア領域

3.4.4.1 ビジネス面のコア領域

37

戦略はビジネス・エコシステムを構成するネットワークの大半をコントロールする ことが求められるため,そのために前述したようにインフラ設備を自社で整備する といったようにベンチャー企業にとっては過大な資金が必要になる。また,Iansiti

& Levien(2004)が説明するとおり,支配者戦略は,ビジネス・エコシステムへニ ッチ・プレーヤーを招致することが困難になるとともに,ニッチ・プレーヤーを集 められたとしても環境の変化に対して不安定になるという脆弱性があるため,将来 的にシステム全体が崩壊する危機に陥るという問題を内在している。

38

る。また,この「展開リソース」には,他の自動車メーカーも含まれており,BP 社の規格に従って他の自動車メーカーがバッテリー交換方式のEVを製造した場 合でも,BP 社のバッテリー交換ステーションを利用できるようにしている。後 述するように,BP 社の特許出願がバッテリー交換ステーションに関する技術と ICT システムに関する技術に集中していることも,BP 社がこれらの技術をコア 領域と捉えていたことの証左である。また,BP 社は,バッテリー交換ステーシ ョンについては自社での独占を目指しているといえるが,EV 本体とバッテリー の着脱インターフェースについては標準化(デファクトスタンダード化を含む)

することで(図7参照),より多くのEVがBP社のバッテリー交換ステーション を利用できるようにするという計画であったと考えられる。このようなバッテリ ーとEV本体の接続インターフェースの標準化に成功すれば,その標準規格もBP 社のコア領域を形成する技術になり得たと考えられる。

内平,石松,井上(2015)を参考にして筆者作成

図14 BP社のビジネス面のコア領域分析

一方で,RESC 社は,各モジュール(e モビリティ,カセット型バッテリー,

及び充電ロッカー)のネットワークを管理するためのICTシステムを「ビジネス 面」のコア領域(クローズ領域)に設定しており,それらモジュールの開発や製 造,設営については,RESCは部分的にサポートを行うものの,基本的に外部に 委託している(図 15)。このため「製造リソース」には,バッテリーや充電ロッ カーを製造する電機メーカー,電動スクーター等のeモビリティの初期開発を行

39

うバイクメーカー,充電ロッカーを住宅や店舗等に設営する建設・不動産会社や 電力会社が存在する。また,RESC社は,外部から調達したモジュールと自社が 提供するICTサービスとを組み合わせて,バッテリー交換方式のeモビリティ用 のバッテリー交換プラットフォームを形成し,このようにしてフルターンキー化 されたプラットフォームを,コンビニエンスストア等の店舗や宅配業者,国ある いは自治体などの「展開リソース」へと提供する。また,この「展開リソース」

には,他のバイクメーカーも含まれており,RESC社の規格に従って製造された e モビリティであれば,RESC 社のプラットフォームを利用することができるよ うになっている。また,RESC 社は,e モビリティ,カセット型バッテリー,充 電ロッカーのいずれかを独占するということは想定しておらず,これらの互換性 を維持するための標準規格のみを策定して,その規格に沿ったモジュールについ ては外部企業が自由に開発できる環境を構築する計画を持つ。もちろん,規格に 適合したモジュールは RESC 社の ICT システムで管理できるようにしており,

各モジュールの管理をRESCが独占できるようにしている。このような各モジュ ールの標準化に成功すれば,その標準規格やICTシステムによって蓄積されるビ ッグデータもRESC社のコア領域を形成する技術となり得る。

なお,RESC社は,ICTシステムのセキュリティ対策や,ICTシステムで収集 したデータ分析については,他の企業や研究機関(主に大学)と共同開発する予 定があるとのことである。このため,これらの企業や研究機関が「知識リソース」

に該当する。

内平,石松,井上(2015)を参考にして筆者作成

図15 RESC社のビジネス面のコア領域分析

40

以上のように,BP 社とRESC社のコア領域を比較すると,前者はバッテリー 交換ステーションという大規模なハードウェアと ICT システムというソフトウ ェアとがコア領域に設定されているのに対して,後者は主にICTシステムという ソフトウェアのみがコア領域に設定されているという点で相違すると理解できる。

関連したドキュメント