• 検索結果がありません。

初めに、in vitroでのヒトプレグナンXレセプター(hPXR)転写活性化試験法により、ダサチ

ニブがCYP3A4を誘導する可能性について評価した。ダサチニブの濃度は0.1, 1, 10及び25 μM

とし、リファンピシンを陽性対照として0.1, 1, 5及び10 μMの濃度で検討した7)(表2.6.5.12-1 薬

物動態試験概要表)。試験に用いたダサチニブの濃度では、CYP3A4のhPXR依存性のトランス活 性化を促進しなかったが、リファンピシンは濃度に依存してhPXRを2~37倍活性化した。これ らの結果から、ダサチニブにはhPXRの活性化を介したCYP3A4の誘導作用がほとんどないと考 えられた。

ダサチニブが肝CYP酵素(CYP1A2, 2B6, 2C9及び3A4)を誘導する可能性について、更にヒ ト肝細胞による検討を加えた5)(表2.6.5.12-2 薬物動態試験概要表)。この試験では、3例のドナー から得られたヒト肝細胞の初代培養を用い、ダサチニブ濃度を0.2, 1, 5及び25 μMとした。陽性 対照である3-methylcholanthrene(2 μM)、フェノバルビタール(1000 μM)及びリファンピシン(10

μM)では陽性対照として適切に酵素活性とCYP mRNA発現レベルが増加したが、ダサチニブで

は明らかな酵素活性及びmRNA発現の増加は認められなかった5)。これらの試験成績から、25 μM

(約12.2 μg/mL)までの濃度で、ダサチニブはCYP1A2, 2B6, 2C9及び3A4の酵素活性を誘導し

ないと考えられた。試験した最高濃度は、ダサチニブ70 mgを1日2回、7日間反復投与したと きのCML患者におけるCmaxの100倍を超える値である23)。これらの成績から、CYP1A2, 2B6, 2C9 又は3A4で主に代謝される併用薬剤の曝露量を低下させる可能性はかなり低いと考えられる。

0.1~50 μM(0.05~24.4 μg/mL)の濃度でダサチニブが肝CYP酵素(CYP1A2, 2A6, 2B6, 2C8, 2C9,

2C19, 2D6, 2E1及び3A4)を阻害する可能性について、ヒト肝ミクロソームを用いて検討した(表

2.6.5.12-3 及び2.6.5.12-4 薬物動態試験概要表)。更に、ダサチニブが同じ濃度範囲でCYP酵素

に対し、時間依存的な代謝様式を示すかどうか評価した。ダサチニブは50 μMまでの濃度範囲で CYP1A2, 2B6, 2C19, 2D6又は2E1を阻害しなかったが、CYP2A6, 2C8及び2C9を阻害し、IC50

それぞれ35, 12及び50 μMであった。また、ダサチニブはCYP3A4を阻害し、ミダゾラム及びテ

ストステロンを基質とした場合のIC50は、それぞれ18及び10 μMであった。ダサチニブによる

CYP2C8の阻害について、競合阻害モデルで算出されるKi値(阻害定数)は3.6 μMであった6)

(表2.6.5.12-3 薬物動態試験概要表)。ダサチニブはCYP3A4に対して時間依存的な阻害を示し、

ミダゾラムをプローブ基質とした場合には、KI値(不活性化の最大速度定数の1/2の速度に達す る濃度)及びkinact値(不活性化の最大速度定数)がそれぞれ1.9 μM及び0.022 min-1であった。

その他の酵素については時間依存的な阻害を示す傾向は観察されなかった。今回のヒト肝ミクロ ソームにおける阻害試験の結果は、先に実施した個々のCYP発現系による試験で、CYP1A2, 2C9,

2C19及び2D6に対するIC50値が32 μM以上であったという成績と矛盾しない成績であった。ま

た、ダサチニブはCYP3A4を時間依存的に阻害すると考えられた7)

ダサチニブによるCYP3A4の時間依存型阻害の程度についてKI値及びkinact値を算出し、時間 依存型阻害を示すことが知られているジルチアゼムとエリスロマイシンと比較した24)。ジルチア

ゼムのKI値及びkinact値はそれぞれ2.8 μM及び0.013 min-1であり、エリスロマイシンではそれぞ

れ5.1 μM及び0.030 min-1であった6)(表2.6.5.12-4 薬物動態試験概要表)。これらの成績から、

in vitroにおいて、ダサチニブはジルチアゼム及びエリスロマイシンと類似した阻害特性を有する

ことが示された。

CML患者において、ダサチニブ70 mgを1日2回、反復投与したときの定常状態時のCmax平 均値が0.12 μM(57 ng/mL, 変動係数65%)23)であり、Cmax/Ki比は0.1未満となることから、CYP2C8

の基質となる薬剤との併用により薬物間相互作用が発現する可能性は低いと考えられた25)。ダサ チニブによるCYP1A2, 2A6, 2B6, 2C9, 2C19, 2D6及び2E1の阻害についても同様に、各酵素のIC50 値から、これら酵素の基質となる薬剤との併用により薬物間相互作用が発現する可能性は低いと 考えられた。また、in vitroでの阻害パラメータと定常状態時のダサチニブの血漿中濃度から、ダ サチニブによるCYP3A4の阻害は弱いと考えられるが、時間依存型の阻害様式であるため、in vivo での阻害の強さを予測することは困難である。

6 排泄

マウス、ラット、イヌ及びサルにおける静脈内投与後あるいは動脈内投与後(ラット)の全身 クリアランスを検討した(表2.6.5.3-1, -3, -4及び-5 薬物動態試験概要表)。マウス、ラット、イ ヌ及びサルにおけるダサチニブの全身クリアランスは62, 26, 25及び34 mL/min/kgであった(表

3-1)。また、マウス、ラット、イヌ及びサルにおける経口投与時の終末消失相半減期は2~5時間

であった。

関連したドキュメント