5.2 使用機器,および実験環境
5.3.3 パラメータ T の決定
uを計算するために必要なパラメータT を決定する。具体的な手順としては,T ×10−2 秒を0.01秒から1秒まで0.05秒間隔で変化させたuを計算し,計算したuからユーザの選 択し難さを識別し,最も識別率が高かったときのパラメータTを求める。使用したデータ は5.3節の実験で取得した各ユーザがオブジェクトを選択した際のポインタの軌跡と各オブ
図 5.4: average of d
ジェクトの中心座標である。また,オブジェクトのサイズが25×25pixelのとき,ユーザは 選択し難く,125×125pixelのとき,ユーザは選択し易いとする。識別器には,高い識別精 度を誇るRandomized tree[63]を用いる。決定木の生成にはCART[64]を用いる。評価方法 は9人をトレーニングデータとし,1人をテストデータとする10-fold-cross-validation[65]
を用いた。評価値には適合率と再現率の調和平均であるF値を用いる。ユーザの選択し難 さを識別した結果,T=25のときに最も識別率がよく,正しく選択し難さを識別した割合
が88.3%,正しく選択し易さを識別した割合が88.6%だった。この結果から,5.4節の実験
にはT = 25を用いる。また,uはオブジェクトの選択し難さ,または選択し易さを約90%
の確率で識別できるため,妥当だと考えられる。また,これらのパラメータを用いて5.3節 の実験で得た10人の被験者のポインタの軌跡から選択し難さの指標dを算出し,オブジェ クト毎に平均した値を図5.4に示す。
図 5.5: average of selection time
5.3.4 操作支援方法
本研究でユーザの操作を支援する方法としてオブジェクトの拡大とポインタ自動移動を 行う。5.3節の実験におけるオブジェクト毎の総選択時間の平均値を図5.5に示す。図5.5 から総選択時間の平均値はオブジェクトサイズが小さくなることに反比例して増加してい る。総選択時間が大きいオブジェクトほど選択し難いオブジェクトであり,例えば総選択 時間の増加が他の区間に比べ大きい25×25pixelと50×50pixel間は他の区間より選択操 作を支援する必要があるが,図5.4から操作し難さの指標であるdはオブジェクトのサイ ズが小さくなることにしたがって単調減少しており,dをこのまま操作支援の指標として 用いると選択し難さの度合に応じた支援を行うことが難しい。このことからdを用いて図 5.5の増加曲線の特性を模した関数を定義する。
s =
0 d≥0.5 ve−ad d <0.5
(5.6)
sは支援を行う度合を示す変数であり,ユーザが選択し難いならばv,選択し易いならば0 に近づく。選択し難い際に操作支援方法が例えばオブジェクトの拡大ならば10msec毎に最
大vpixelずつ拡大し,移動速度の場合は目的のオブジェクトへ10msec毎にvpixelずつポ インタが近づくことを示している。一方,選択し易ければsは0に近づくため,支援は行 わない。また,本研究では選択し難いオブジェクトのサイズを25×25pixel,選択し易い オブジェクトのサイズを125×125pixelと定義している。そのため,選択し難いオブジェ クトを選択し易いオブジェクトに近づけることで支援を行うオブジェクトの拡大はv=100 とする。また,5.3節にて25×25pixelのオブジェクトを選択する際に目標のオブジェクト の周囲でポインタが水平方向に1.5±2.0pixel,垂直方向に平均2.1±2.9pixel振動的に動 いていたことから手振れによるポインタのぶれの影響を考慮し,ポインタ自動移動はv=5 とする。aは拡大率,移動速度の変化度を調整する変数である。また,d≥0.5のときに操 作支援を行わない理由として,5.3の実験で取得した10人分のデータからdを計算した結 果,選択し難い25×25pixelのオブジェクトを選択した際のdが0.09±0.02,選択し易い 125×125pixelのオブジェクトを選択した際のdが0.64±0.05となったことが挙げられる。
ただし,us,ulはdを算出するユーザ以外の9人分の平均から算出した。