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バイアグラ錠について

ドキュメント内 21 60 Vol. 21 No (ページ 43-53)

話題の薬のプロフィール

ファイザー製薬 医 薬 情 報 部 北島

きたじま

ゆき

図1 クエン酸シルデナフィルの構造式と分子式

シルデナフィルは,陰茎海綿体の細胞内phos-phodiesterase type 5(PDE 5)を選択的に阻害す る勃起不全治療薬である。(図3)

陰茎勃起のさいには,性的刺激に伴い神経伝達 経路を経て陰茎海綿体のadrenergic non-cholinergic(NANC:非アドレナリン非コリン作 動性)神経末端及び内皮細胞から放出されるNO

(一酸化窒素)が細胞内セカンドメッセンジャー のc-GMPの合成を促進して陰茎海綿体平滑筋の弛 緩を引き起こし血流増大をもたらし勃起に至る。

勃起のメカニズムにおいて,細胞内で産生される c-GMP濃度が重要な役割を果たしている。このc-GMPは,陰茎の平滑筋においては細胞内のPDE5 によって加水分解される。従ってc-GMPを加水分 解するPDE5を特異的に阻害する事によって,陰 3.作用機序

茎勃起を助け,勃起を維持することができる。1)

2)3)

以上のことから,シルデナフィルの作用発現に は,性的刺激が必要であり,その刺激がなければ 勃起は起こらない。

PDE5は陰茎以外の血管平滑筋や血小板にも分 布している。しかし,バイアグラ錠の通常量を服 用しただけでは,血行動態への影響は軽微でかつ 出血傾向は認められない。生体内において現在9 種類以上のPDE(1から9)が発見されているが,

本剤の作用は,PDE5に選択的である。(表1)

図2 健常人男子におけるシルデナフィル空腹時単回経口投与後の血漿中濃度

(注:本剤の日本での承認用量は1日1回25mg〜50mgである。)

図3 本剤の有効成分シルデナフィルの作用機序

表1 ヒトPDEアイソザイムの活性に対するシルデナフィルの作用(in vitro)

各種ヒト組織から調製したPDEサブタイプの活 性に対するシルデナフィルの作用を検討した。シ ルデナフィルはヒト陰茎海綿体より調製したPDE 5活性を強力に阻害し,酵素活性を50%阻害する 濃度(IC50値)は3.5nmol/Lであった。一方,他 のPDEサブタイプの活性に対する阻害作用は,IC 50値で比較すると,PDE1に対して1/80,PDE2,

PDE3及びPDE4では1/2000以下,PDE6では約 1/10の効力であり,シルデナフィルはPDE5に対 して選択的な阻害作用を示した。また,シルデナ フィルのPDE5阻害は競合的であった。4)5)6)

前臨床薬理試験において,本剤はPDE5を選択 的に阻害することにより陰茎海綿体のcGMP産生 をNO存在下で増大し,神経刺激による摘出陰茎 海綿体の弛緩反応および海綿体内圧の上昇を増強 した。しかし,NO非存在下,即ち,神経刺激が ない状態では陰茎海綿体の機能に直接的な影響を 及ぼさなかった。このことからシルデナフィルは 性的刺激の存在下においてのみ勃起を誘発または 増強しうる新規の勃起不全治療薬と考えられた。

バイアグラ錠は国内外の多数の臨床試験によ り,その有効性と安全性が検討されている。(表 2,図4,5)

Boolellらは本剤を平均年齢48歳の勃起不全患者12 例(36〜63歳,平均罹病期間3.4年)に投与した成 績を報告している。本剤(10,25,50mg)は二 重盲検交差試験法にて経口投与され,プラセボと 比較された。投与後30分〜2時間の視覚的性刺激

(性的なビデオなどを見せて刺激する方法)後の 陰茎硬度を測定した。その結果,いずれの投与量 でも本剤はプラセボに比較し有意に勃起持続時間 を延長した。7)

Goldsteinらは,24週間のプラセボ対照二重盲検 の用量反応試験,12週間のプラセボ対照可フレキ シブル(可変)用量増加試験及びそれに続く32週 間延長のオープン試験結果を報告している。用量 反応試験は532例で,本剤25mg,50mg及び100mg

(注:本剤の日本における承認最大用量は,1日 50mgである)を投与して実施され,用量依存的 に勃起機能を有意に改善した。8)フレキシブル用 5.臨床効果

4.薬理作用 量増減試験は329例で実施され,本剤の場合4週 間における性交の試みのうち69%が成功したが,

プラセボの場合の成功率は22%であった(p<

0.001)。1ヵ月当たりの性交平均回数はシルデナ

フィル群で5.9回,プラセボ群で1.5回であった

(p<0.001)。

海外の臨床試験の最も大規模なものとしては,

米国や欧州諸国で行われた4つのプラセボ対照二 重盲検比較試験があげられる。この4つの試験成績 は,いずれも米国食品医薬品局(FDA)での承認申 請に際して評価資料として提出されたものである。

4つのうちの2つは固定用量試験であり,対象 となる勃起不全患者を,バイアグラ錠25,50また は100mg(注:本剤の日本における承認最大用量 は,1日50mgである)を投与する群計706例と,

プラセボを投与する群計343例とに分け,その効 果が比較された。その結果,バイアグラ投与群で はプラセボ投与群に比較して,勃起機能が有意に 改善した。

残りの2つは可変用量試験であり,バイアグラ 錠投与群計322例とプラセボ投与群計322例との間 で効果が比較されたが,やはりバイアグラ錠投与 群で有意に優れるという結果であった。

バイアグラ錠の長期投与試験としては,337例

表2 国際勃起スコア(IIEF)

―「挿入の頻度」及び「勃起の維持」―

挿入の頻度

「ここ4週間,性交を試みた時,何回挿入する ことができましたか?

勃起の維持

「ここ4週間,性交中,挿入後何回勃起を維持 することができましたか?」

スコア 性交の試み一度もなし ⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯0 毎回又はほぼ毎回(10回中9回以上)⋯⋯⋯5 おおかた毎回(半分よりかなり上回る回数:

10回中7回程度)⋯⋯⋯⋯⋯4 時々(10回中5回)⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯3 たまに(半分よりかなり下回る回数:

10回中3回程度)⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯2 全くなし又はほとんどなし

(10回中1回以下)⋯⋯⋯⋯⋯1

を対象に36週投与した米国での試験と,317例を 対象に52週投与した欧州での試験がある。いずれ も約90%に改善したと患者が報告し,問題となる 副作用の報告もないことが確かめられている。

糖尿病による勃起不全患者だけを対象とした二 重盲検試験も実施されているが,やはりバイアグ ラ錠投与群ではプラセボ投与群に比べて,勃起機 能の有意の改善が認められた。本試験でのバイア グラ錠(初回は50mgで開始)投与群は136例,プ ラセボ投与群は132例。試験のプライマリーエン ドポイントである「挿入の頻度」および「勃起の 維持」は,いずれもプラセボ投与群に比べバイア

グラ錠投与群で有意な改善がみられた。また,勃 起が改善したと報告した患者の割合も,バイアグ ラ錠投与群56%,プラセボ投与群10%であった

(ただし,日本の承認用量外の100mg投与群を含 む)。

さらに,脊髄損傷による勃起不全患者だけを対 象とした二重盲検試験でも,同様にバイアグラ錠 投与群では勃起機能の有意の改善が認められてい る。

国内では前期第Ⅱ相試験および後期第Ⅱ相試験 の各1試験が実施されている。前後期合わせた第

Ⅱ相試験において244例について安全性が,243例 図4 「挿入の頻度」スコアの推移

図5 「勃起の維持」スコアの推移

投与前の値は単純平均値で,投与後の値は調整済み平均値(Least Squares mean)

**:プラセボ群とのDunnett型多重比較,(p<0.001)

*:プラセボ群との比較(多重性の調整なし)(p<0.001)

※本剤の日本における承認最大用量は,1日50mgです。

― 58 ― 都薬雑誌 Vol. 21 No. 8(1999)

について臨床効果が検討された。結果は,たとえ ばプラセボ投与群との間の二重盲検試験として行 われた後期第Ⅱ相試験では,プラセボ投与群の全 般改善度15.0%。これと比較して,バイアグラ錠 投与群の全般改善度は25,50,100mg(注:本剤 の日本における承認最大用量は,1日50mgであ る)投与群でそれぞれ58.3,72.4,72.3%であり,

プラセボに対して有意に高かった。9)

国内での承認時までのデータでは,本剤25mg

〜50mg投与の総症例157例中40例(25.48%)に 副作用が発現した。その主なものは,頭痛20例

(12.74%),ほてり16例(10.19%),視覚障害3例

(1.91%)であった。一方,臨床検査値異常は157 例中31例(19.75%)に認められ,主なものはCPK 上昇などであった。(表3)

「ものが色づいてみえる」といった彩視症や,

「光をまぶしく感じる」といった光視症などの一 過性の視覚異常が各1例,国内の臨床試験時に認 められている。この発現機序については,本剤の 網膜におけるPDE6(ホスホジエステラーゼ タ イプ6)の阻害作用が関係していると考えられる。

すなわち,本剤にはPDE5に対する阻害作用の約 1/10の効力でPDE6の活性を阻害することが認め られており,これが網膜視細胞に分布するPDE6 の活性にも影響を及ぼしていると考えられる。

外国で実施された本剤の第Ⅱ相および第Ⅲ相プ ラセボ対照臨床試験のうち,固定用量で行われた 6.副作用

試験において,本剤との因果関係が否定できない 副作用は,25mg投与例で312例中71例(22.76%), 50mg投与例で511例中190例(37.18%)の計823 例中261例(31.71%)が報告されている。その主 なものは頭痛109例(13.2%),血管拡張(潮紅)

125例(15.2%),消化不良28例(3.4%),めまい 18例(2.2%)などである。

Moralesらは,世界各国で行われた28の二重盲 検等の臨床試験論文をもとに本剤の安全性及び認 容性について解析し報告している。外国の臨床治 験中において視覚異常による中止は,本剤投与 2,722例(投与期間が6カ月以上の症例)中1例

(0.04%)のみであった。10)陰茎が勃起したまま で痛みを伴う持続勃起症(プリアピズム)は,臨 床試験では1例も報告されていない。しかし,外 表3 日本と海外の副作用

頭 痛 16% 4% 13% 3%

潮 紅(ほてり) 10% 1% 11% 3%

胃部不快感(消化不良) 7% 2% 1% 0%

鼻 閉 4% 2% 0% 0%

尿路感染症 3% 2% 0% 0%

視覚異常 3% 0% 2% 0%

下 痢 2% 1% 0.6% 0%

めまい 2% 1% 0.6% 0%

発 疹 2% 1% 0% 0%

シルデナフィル

(25−100mg)

(n=734)

副作用

海外(Moralesら) 国内第Ⅱ相 プラセボ

(n=725)

シルデナフィル

(25−50mg)

(n=157)

プラセボ

(n=62)

;;

;

;

;

10 

0

重篤CV事象  MI

100患者・年当たりの発生率(±95%CI) 

脳卒中  プラセボ;349患者・年 

シルデナフィル,プラセボ対照;693患者・年  シルデナフィル,オープンラベル;4220患者・年 

;;

図6 第Ⅱ/Ⅲ相試験においてシルデナフィルまたは プラセボで治療された患者における,重篤心血 管(CV)有害事象の発生率

ドキュメント内 21 60 Vol. 21 No (ページ 43-53)

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