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第 4 章 ORS の実装

4.2 ハードウェア実装

本節では,ハードウェア実装の詳細について述べる.回路は10cm x 20cmのブレッ ドボード上に実装され,家電への電力供給用コンセントを3口実装する.また,家電へ 待機電力を強制的に供給,または遮断するための手動スイッチを,1口につきONおよ びOFFの2スイッチ設け,S1からS6の合計6スイッチを実装する.R1からR6は,

スイッチのためのプルアップ抵抗である.電流のセンサとしてカレントトランスを1 つのコンセントにつきそれぞれCT1からCT3の3つを実装し,CTからの出力を,そ れぞれ演算装置のAnalogInputに接続する.この時演算デバイスでは,AnalogInput から入力された値(電圧)を家電の発生する電力量として変換し,ロギングを行う.Rct

はCT用の基準抵抗で,CTにて貫通電流Ioを測定する際に,CTから出力される電 圧を決定するための抵抗である.これらのハードウェアが,一つの演算デバイスに集 約され,監視制御ができるように実装を行った.実装結果を図4.1に示す.

4.2.1 演算デバイス

ORSでは,演算デバイスとして,Arduino[18]を使用している.Arduinoを使用し た理由は,省コスト,省スペースで,ADC (Analog Digital Convertor)を持ち,さら

図 4.1: ORSの回路図

に互換する機器が非常に多いことが挙げられる.特にORSの場合,実際に使用する ケースでは1つのコンセントに対して1つのデバイスを設ける必要があるため,安価 かつ省スペースであることを重要とする.さらに演算デバイス上で各種の学習制御を 行えることが必須条件となるため,センシング,ロギング,学習,制御を行えるデバ イスが好ましい.表4.1において,他の演算デバイスとの比較を行った.

表 4.1: Arduinoの詳細

Arduino Duemilanove Gumstix Overo[19]

Processor ATmega168 OMAP3503

FlashMemory 16KB 256MB

SRAM 1KB 256MB

EEPROM 512bytes 256MB

ADCIN 6port 6port

ClockSpeed 16MHz 600MHz

Size 70mm x 55mm x 10mm 17mm x 58mm x 4.2mm

Price $22.00 $149.00

Gumstix OveroはArduinoと比べ,機械的なスペックでは非常に優れている.し かも内部にLinux Kernelが搭載されているため,高度な動作を行うプログラムを実 装することが可能である.さらにサイズ的にもArduinoとほぼ同じだが,金額的には

Arduinoの7倍近い定価になってしまう.これは,省コストの観点から考えると大き

なマイナス要因である.また,ADCの入力は両方6ポートと同一であり,さらにORS ではOSを必要とするような高度な演算は行わないため,ORSではArduinoを採用 した.

4.2.2 電力センサ

電力センサを実装する上で重要となる条件は,家電の稼働電圧に比べ,非常に小さ い電圧で発生する待機電力を測定可能なことである.さらに,省スペースの観点から,

ブレッドボード上で実装できることが望ましい.以上の条件を満たすセンサとして,

UR-D社のカレントトランス,”CTL-6-V-Z”[21]を使用した(図4.2).カレントトラン ス(CT)はホール型の電流センサで,測定対象の電線に対して非接触で貫通する電流 を測定することが可能である.そのため回路の短絡などによる測定機器の損傷が発生 しない.特に微小な電力で機器が損傷する可能性のある電子回路に対しては,安全性 に特化したセンサであると言える.

また,ArduinoのADCにおける分解能は10bit(1024byte)で,かつ基準電圧Vard が5Vであるため,Arduinoで計測できる最小の電圧Vminは下記の式で算出すること ができる.

Vmin = Vard 1024byte

Vmin = 5

1024

= 0.0048V (4.1)

図 4.2: UR-D社製精密計測用電流センサ”CTL-6-V-Z”

VminをCTL-6-V-Zの特性表4.3に当てはめると,貫通電流Ioが分かり,通過してい る電流値を測定することが可能となる.この時,基準抵抗RLの値によってCTL-6-V-Z から出力される電圧Eoが変動するが,より小さい電流をセンシングするため,RLの 値を1kΩ とした.

図4.3: CTL-6-V-Z出力電圧特性表

図4.3より,RLが1kΩ かつVminが0.0048V の時,Ioは0.005Aとなり,家庭用 交流電源電圧Vpが100Vであるから,測定可能な最小の消費電力量Wminは,

Wmin = Vp・Io

= 100・0.005

= 0.5(W) (4.2)

となる.

Wminを2.2節にて参照した表2.2と比較すると,ORSおよびCTL-6-V-Zが汎用的 な家電の待機電力量を測定するために十分な分解能を備えていることが分かる.また,

CTの基準抵抗RLは1kΩ とした.

4.2.3 ネットワークデバイス

ORSでは,ユーザの位置情報確認に無線LANを用いる.ユーザの持つネットワーク デバイス(子機)はIEE802.11の規格に準拠している機器がほとんどであるが,Arduino

ではIEE802.11(Wifi)の技適認証を受けているモジュールが無く,国内で使用すること

はできない.そのため,ORSの通信用デバイスとして,Arduinoに接続可能なXBee[22]

を使用したXBeeを図4.4に示す.XBeeはZigbee[24]と呼ばれるIEEE802.15.4[23]

の通信規格に準拠しており,2.4GHz帯の無線帯域を使ってシリアル通信を行うこと が可能である.さらにZigbeeは省電力に特化した無線規格であるため,ORSにて使 用する電力消費を抑えることもできる.しかし当然,ORSと子機の間では無線の規格 が違うため通信を行うことはできない.そこで,ORSとユーザ子機の中間にサーバを 設け,ユーザへ無線LAN経由で位置情報確認を行う構成とした.サーバはORSから ユーザ位置情報の確認要求を受け取り,ユーザに対してWifiにて通信の生存確認を行 う.その結果をORSへZigbee経由で送信し,ORSでは受け取った結果をロギング データに書き込む.位置情報確認のための構成図を4.5に示す.また,サーバに使用 した環境の概要を表4.2にまとめた.

図4.4: XBee無線機

図4.5: 位置情報確認のための通信デバイス構成図 表4.2: サーバに使用するPCの概要

名称 値

モデル dynabook SS

CPU Intel Core Duo 1.8GHz メモリ 2GB

OS Ubuntu10.4

言語 Perl 5.10.0

また,ユーザが所持する無線子機は,本論文ではiPhone3GS[20]を利用した.iPhone3GS はスリープモードになると省バッテリーのために自動的に無線LANの接続を解除し てしまうため,スリープモードになっても無線LANの接続が解除されないよう設定 を施した.

4.2.4 その他

ORSのハードウェアを構成する上で必要となるその他のデバイスについて詳細を述 べる.

リレー

ORSでは,家電への電力供給制御用リレーとして,秋月電子製 SSR (Solid-StateRelay)を使用した.図4.6に示すように小型であり,かつAC100Vの電 圧を無接点制御が可能なため製品寿命が長く,さらに安価である.

スイッチ

手動で家電への待機電力を供給するためのスイッチとして,プッシュスイッチを 使用した(図4.7).

4.2.5 ハードウェア実装のまとめ

完成した状態のORSを図4.8に示す.

図 4.6: 秋月電子SSR 25Aタイプ

図4.7: プッシュスイッチ

図4.8: ORS (Outlet for Reducing Standby power)

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