同種間心臓移植モデルではT細胞による拒絶反応の寄与が高く (Panther et al., 2011)、
本研究で用いたラット同種間心臓移植モデルでもAMRによる移植臓器の拒絶反応を
直接評価することはできなかった。そこで、B細胞による拒絶反応の寄与が比較的高
いハムスターからラットへの異種間心臓移植モデルにおける効果を検討した。しかし
ながら、異種間移植でもT細胞とB細胞の両方が臓器拒絶に関与するため、過剰量
42
表3 ACI to Lewisラット同種間心臓移植モデルにおけるAS2541019の移植心臓生着率および体重への影響
表中のGraft survival timeは [生着日数 ×例数]で示した。
タクロリムス+ MMF投与群に対するAS2541019投与群の統計学的有意差をLog-rank testにより検定した (**P < 0.01)。
Control群に対するタクロリムス+ MMF投与群の統計学的有意差をStudent’s t-testにより検定した(##P < 0.01)。 Treatment (mg/kg)
n
Graft survival time (days × number of observations)
Median survival time (days)
Body weight (g) ± S.E.M.
(21 days post-transplantation) Tacrolimus MMF AS2541019
Control (no treatment) 12 5 ×10, 6 ×2 5 291.6 ± 4.2
0.02 15 0 11 7 ×2, 13 ×2, 19, ≥21 ×6 ** ≥21 270.5 ± 3.2 ##
0.02 15 0.5 13 13, 14 ×2, 15, 18, ≥21 ×8 NS ≥21 269.2 ± 3.0 NS
0.02 15 1 13 10 ×2, 12, 13, 14, ≥21 ×8 NS ≥21 271.1 ± 3.3 NS
0.02 15 2 13 10 ×2, 13, 14 ×2, 16, ≥21 ×7 NS ≥21 275.9 ± 2.8 NS
43 A
B
図9ラット同種間心臓移植モデルにおける抗ドナー抗体産生に対する AS2541019の 抑制効果
ACIラットの心臓を摘出し、Lewisラットの腹部に移植した。タクロリムス 0.02 mg/kg の 筋 肉 内 投 与 お よ び MMF 15 mg/kg の 経 口 投 与 を 併 用 し て 、 被 験 薬 物 で あ る
AS2541019 (0.5、1、2 mg/kg) を経口投与した。投与はすべての薬物について、1日1
回を21日間行った。末梢血を採取し、血漿中のドナー特異的IgGの変化をフローサ イトメトリーにより測定した。(A) ドナー脾臓細胞に結合したドナー特異的IgGの変 化を示した。(B) ドナー特異的IgG産生量のAUCを算出し、データーはmean ± S.E.M.
で示した (n=11-13)。タクロリムス+ MMF 群に対する統計学的有意差を、Dunnett’s multiple comparisons testにて検定した (**P < 0.01)。
44
の0.1 mg/kg タクロリムスの筋肉内投与と15 mg/kg MMFの経口投与による併用療法
によってT細胞を抑制した条件下において、B細胞依存性のDSA産生とAMRにつ
いて検討した。図10に示すように、抗異種IgMのピークは移植後7日目でMFI=83.4
であり、抗異種IgG1/2aのピークは移植後14日目でMFI=116であった。タクロリム
スおよびMMF投与群では、これらの時点のいずれにおいても異種反応性抗体産生は
抑制されず、異種間移植心臓の生存期間をわずかに延長しただけであった。これは、
タクロリムスおよびMMFの投与によりT細胞を抑制しても、B細胞による抗体産生
に依存した拒絶反応が起きていることを示している。タクロリムスおよびMMFに加
え、1、2および4 mg kgのAS2541019を併用した場合、抗異種IgM (図10A) および
IgG1/2a (図 10B) 産生は顕著に抑制され、さらに移植臓器の中央生存期間 (コント
ロール=3日) をそれぞれ9.5日、> 14日および> 14日に有意に延長した (図10C)。
これらの結果により、AS2541019による異種反応性抗体産生の阻害が移植心臓生着期
間の延長をもたらすことが示された。