第3章 加熱牛肉の香りと分岐鎖アルデヒドの特性に関する研究
3.1 和牛の香気寄与成分の同定および和牛香気における 12-methyltridecanal の役割
3.1.1 実験方法
牛肉は,和牛として三重県産松阪牛(31ヶ月齢の雌,リブロース,A5等級),輸入 牛肉としてグラスフェッドのオーストラリア産牛(ロース)およびアメリカ産牛(サ ーロイン)を株式会社マルヨシ商事より購入した.オーストラリア産牛とアメリカ産 牛は共に品種や月齢,雌雄は不明の肉専用種である.これらの牛肉は食べるのに適し
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た状態になるまで熟成されたものを,薄切りにした状態(2-3mmの厚さに加工)で購 入し,実験に使用するまで-25℃で保管し,使用する前日に一晩 5℃で保管して解凍し
た.厚さ2-3 mmの薄切り肉はなるべく重ならないようにボイル用パック(藤森工業株
式会社)に入れて真空包装し,80℃のウォーターバス中で 2 分間加熱した.松坂牛と 輸入牛(オーストラリア産)は AEDA による比較実験に用い,輸入牛(アメリカ産)
は未同定成分の同定に用いた.
3.1.1.2 試薬
2,3-butanedione,hexanal,acetoin,1-octen-3-one,2-isopropyl-3-methoxypyrazine, methional,butyric acid,isovaleric acid,(E,E)-2,4-nonadienal,(E,E)-2,4-decadienal ,4-hydroxy-2,5-dimethyl-3(2H)-furanone(HDMF),methyl nonanoateは東京化成株式会社よ り購入した.(E)-2-nonenalはシグマアルドリッチジャパンより購入した.
trans-4,5-epoxy-(E)-2-decenal70),(E,Z,Z)-2,4-7-tridecatrienal71)は文献記載の方法で合成 した.合成した標品はマススペクトルとRIより同定した.
trans-4,5-epoxy-(E)-2-decenal.MS/EI m/z(%): 168 (0.05, M+), 93 (26), 83 (6), 81 (28), 69 (12), 68 (100), 57 (7), 55 (15), 43 (11), 41 (16); RIDB-WAX=1995.
(E,Z,Z)-2,4-7-tridecatrienal.MS/EI m/z (%): 192 (5, M+), 92 (43), 91 (50), 81 (100), 80 (26), 79 (76), 77 (38), 67 (36), 41 (31), 39 (13); RIDB-WAX=2117.
12-methyltridecanalは2.1.1.2で合成したものを用いた.
3.1.1.3 香気濃縮物の調製
牛肉の香気抽出液は,加熱した牛肉15gを約1cm四方に切り, 同量の蒸留水を添加 してミキサーで1分間混合しペースト状にしたものを調製し, ジエチルエーテル(20 mL)を加え,激しく振とうして抽出した後,遠心分離(1811 G,15 min,20℃)にて
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固形分を除いて調製した.次いで,無水硫酸ナトリウムで脱水した香気抽出液は,内 部標準物質(methyl nonanoate,1500 ng)を添加後,SAFE(5×10-3 Pa,40℃)にて不揮 発性成分を除き,香気成分を含む留分を得た.香気成分を含む留分は,ロータリーエ バポレーター(550 mmHg,35℃),次いで窒素気流で濃縮した(約100 μL).
3.1.1.4 成分同定のための香気成分の濃縮
微量香気成分の同定のため,加熱した輸入牛(アメリカ産)から調製したペースト
(270 g,肉135 g分)から,3.1.1.3で示した方法を繰り返し,溶剤抽出とSAFEを組 み合わせた方法で香気を抽出し,150 μLまで濃縮した.この濃縮物(50 μL)について
2.1.1.4 に記載したシリカゲルカラムクロマトグラフィーによる分画を行い,画分 A~
Eを得た.
3.1.1.5 GC-O
GC-Oは2.1.1.6 に記載の方法で測定した.
3.1.1.6 GC-MS
GC-MSは2.1.1.7 に記載の方法で測定した.
3.1.1.7 主要香気成分の定性と定量
3.1.1.3 で調製した牛肉の香気濃縮物に含まれる主要香気成分は,マススペクトル,
GCにおける保持指標(RI)を標品のそれらと比較することにより同定した.定量値は,
methyl nonanoateを用いた内部標準法にて,各成分と内部標準物質のレスポンスファク
ターを1として算出し,Total Ion Chromatogram(TIC)のピーク面積値を用いた.
68 3.1.1.8 AEDA
3.1.1.3で調製した牛肉の香気濃縮物はジクロロメタンにより段階的に希釈した(4倍,
16倍,64倍).これらの希釈液(1μL)をGC-Oに注入し,香気寄与成分のFD-ファク ターをAEDAの手法で決定した.各香気成分のFD-ファクターは3名の評価者のうち 2名以上が検出した値を採用した.
3.1.1.9 香気寄与成分の同定
香気寄与成分の同定はマススペクトル,GCにおける保持指標(RI)および香調を,
標準物質のそれらと比較することにより行った.