第三章 リサーチ・デザイン
第3節 データ源と分析方法
Eisenhardt(1989)は、データの過多または過少を避けるため、事例の数を 4
から10
という範囲の中に抑えるべきだと指摘した。従って、本研究で取り扱う事例の数は適切だと 考えられる。
本研究は主に起業家による講演とインタビューのビデオ資料(計
11
時間)、起業家に関 する著書(計10
冊)、及び新聞記事(中国学術雑誌全文データベースを利用)から二次デ ータを集めた。また、本研究は新興市場に注目する故、それぞれの起業家が起業してから黒字化達成までの
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年分程度(Santos and Eisenhardt, 2009)のデータを取り上げた。これ らのデータ源のうち、講演やインタビュー資料では起業家本人が自分の原体験を語ってい るため、それを主なデータ源として扱う。また、データの信憑性を上げる為、これらのデ ータ源の間にトライアンギュレーションを行った。データの分析について、本研究はまず分析の単位を文(Sentence)にした(Weber,
1990)
。そしてEisenhardt and Graebner(2007)に従い、定性的データを処理し、分析を行
った。具体的にはまず、4人の起業家が起業する前に持つ手段に関する予備知識の状態及 び事業機会の認識を示すデータを洗い出した。
次に、Welter and Alvarez(2015)に基づいてコードシート(表
6)作成し、それを基準
としてコーディング作業を行い、起業行動を表すデータに意味を付けた。本研究で用いた コードシートは、Welter and Alvarez(2015)をベースにして二つの変化を加えた。一つ目 は、プランニングと戦略の次元を「計画性」として合併したこと。その理由は、Welter andAlvarez(2015)ではプランニングと戦略とは似ている部分が多いと指摘したことに加え、
実際のコーディング作業において両方のカテゴリーに当て嵌まれるデータが多かったから である。二つ目は、「競争優位の源泉」の次元を除いたこと。その理由は、競争優位の源 泉は行動よりも結果として捉えた方が適切だと思われるからだ(Barney and Hesterly,
2018)。結果として、本研究は「リーダーシップ」「計画性」「人的資源」
「ファイナンス」といった
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つの次元から起業行動をカテゴリー化した。そして、事例ごとの起業行動を分析するために、あらゆるデータを起業家ごとに時系列 に整理し、量的データに転換した。具体的に言うと、まず起業行動注3を年ごとに並び、集 計する。そして、発見型起業行動の数に正の値を与え、創造型起業行動の数に負の値に与 える。それを図式化することで、発見型起業行動と創造型起業行動は如何に経時的に転換 しているかというダイナミックを見ることができるようになる。また、先行研究では発見 と創造の転換を観察するのに有効な手法がまだ確立されていなく、転換のダイナミックに 注目した研究も限られているため、本研究はこのような独自の方法を利用した。
その後、本研究はまず個別事例分析(Within-Case Analysis)を行い、そこから得られた 発見を更に事例間分析(Cross-Case Analysis)を行うことで、命題を導出した。