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( 1 ) グリーンカード取得者の就労状況

グリーンカードは取得者に対して、デンマークにおいて就労可能性を与えるものである。

したがって制度自体は、当該の外国人労働者がデンマークに入国する以前に仕事を確保する ことを求めるものではない。このため、グリーンカード取得者がデンマークの労働市場で職 を得るかどうか、自分の資格に見合った職に就けるかどうか、実際にどのような職に就いて いるかどうかには、大きな差がみられる。

調査によると、就労しているのはグリーンカード取得者の

72.4

%である(図表

1-19

参照)。

ただし、グリーンカード取得者の労働時間にはある程度差がみられる。就労しているグリー ンカード取得者のうち、大半はフルタイム(週

30

時間以上)で働いているが、一部はパート タイム(週

10-29

時間)である。ごくわずかであるが週あたり

10

時間未満の労働時間の者も いる。一方、就労していないのはグリーンカード取得者の約

4

分の

1

に相当する。

図表 1-19 デンマークのグリーンカード取得者の労働市場におけるステータス(%)

質問の表現:労働市場におけるあなたのステータスは?

出所:難民・移民統合省

( 2 ) 就労実態

グリーンカード制度の目的は質の高い労働力を引き付けることにある。ただし、本制度で はグリーンカード取得者が未熟練労働者向けの仕事に就くことを禁じてはいない。では、グ リーンカード取得者が実際にはどのような種類の仕事に就いているかについてであるが、こ の調査結果は非常に興味深い。なぜなら、このような高度人材向けスキームが、ともすると 本来の目的以外の就労先、つまり、中・低熟練労働力の供給に使われているという実態が他 国の例にも見られるからだ。本調査では、就労しているグリーンカード取得者のうち、資格 を活用した仕事に就いているとした者は約

40%

に留まり、約

60%

が未熟練労働に従事してい

40.2

25.2 5.0 2.0

27.6 フルタイムの仕事(週に30時間以上)

パートタイムの仕事(週に10-29時間) パートタイム未満の仕事(週に10時間未満) 就職しているが、一時的な病欠中

失業中

るという結果がでた。資格を活用した仕事は、「学術的仕事」、「エンジニアおよび

IT

」、「経 済活動、販売

/

購入、マーケティング」に分類される(図表

1-20

)。

図表 1-20 デンマークでの業種(%)

「学術的仕事」=博士課程の学生/研究者、医師、歯科医師および教師など 質問の表現:デンマークでどんな仕事に就いていますか?

出所:難民・移民統合省

取得者の業種分布は図表

1-21

に示すとおりである。

図表 1-21 業種(%)

その他の業種=農業、林業・水産業、鉱業・公益事業、建築・建設、行政 質問:どの業種で働いていますか?

出所:難民・移民統合省

これによると、グリーンカード取得者は主として

4

つの業種-ホテルおよびレストラン、

清掃および他のオペレーショナル・サービス、工業、情報およびコミュニケーションに従事 している。その他、グリーンカード取得者のうち割合は少ないが、一部は保健および社会福

59.3 15.7

14.4

10.6

未熟練労働 学術的仕事

エンジニアおよびIT

経済活動、販売/購入、マーケティング

21.5

20.6

16.4 12.6

7.0 3.7

3.7 2.8

2.3 2.3 7.0

ホテルおよびレストラン

清掃および他のオペレーショナル・サービス 工業

情報およびコミュニケーション 保健および社会福祉

授業

金融および保険

文化、余暇およびその他 知識サービス

その他の業種

明らかにしなかった活動

祉関連、授業、金融および保険、文化・余暇および他のサービス、知識サービスの業種に従 事している。

もっとも多くのグリーンカード取得者が従事するこの

4

つの業種のうち、最初の

3

つは未 熟練労働力が多い業種である。このことからも、グリーンカード取得者の多くが未熟練労働 者向けの仕事に従事していることがわかる。

(

3

) 在留

グリーンカード取得者が就労しているか、求職中であるかについて、グリーンカード取得 者のデンマークでの在留経験が長ければそれだけ仕事を見つけるのが楽になるという仮説が なりたつ。しかし、本調査は明らかな関連性はないことを示している。図表

1-22

からもわ かるとおり、デンマークに

36

カ月を上回る在留経験をもつ求職中および就労中のグリーン カード取得者の割合に総じて大きな差はないものの、

36

カ月を上回る在留経験をもつグリー ンカード取得者のうち、求職中の人の割合がわずかに高くなっている。

図表 1-22 就労中および求職中の人のデンマーク在留経験の長さ

質問:デンマークにどれだけ長く住んでいますか?

出所:難民・移民統合省

(

4

) 求職

デンマークでは、ウェブサイト

www.workindenmark.dk

、ワークインデンマーク・セン ター、民間の職業斡旋機関などのサービスが、外国人労働者とデンマークの雇用主との接触 を仲介している。しかし、本調査の示すところでは、これらのチャンネルを活用したグリー ンカード取得者は少ない。民間の職業斡旋機関やジョブセンター/ワークインデンマーク・

センターを通じて仕事を得たグリーンカード取得者の数はごくわずかにとどまっている。こ れは、図表

1-23

に示すとおりである。

4.1

23.9 19.3 9.6

43.1

10.8

24.1 7.2

7.2

50.6

0 10 20 30 40 50

6カ月未満 6-12カ月 13-18カ月 19-36カ月 36カ月を上回る

求職中 就労中

図表 1-23 就職までの過程

質問:今の仕事をどうやって見つけましたか?

出所:難民・移民統合省

就労しているグリーンカード取得者のほぼ半数が、会社との接触を仲介した知人を通じて 現在の職を得ている。求人広告やインターネットを通じて会社を見つけた人は少数派である。

調査は、この質問に対して「その他」と回答したグリーンカード取得者には詳しい説明を 求めている。結果、3つの方法が明らかとなった。「個人的に会社を訪問し、自分の

CV

を提 示した」、「以前に臨時/見習い/学生として働いた経験があるか、同じ企業の海外オフィス で働いたことがある」、「個人的なネットワークの結果として仕事を見つけた」である。総合 すると、多くのグリーンカード取得者は自らのネットワークを通じて仕事を得ていることが 明らかとなった。

(5) 給与と労働条件

グリーンカード取得者の雇用にあたって明確な給与基準はないが、使用者は一般的な給 与・雇用条件を守らねばならない。図表

1-24

からもわかるとおり、グリーンカード取得者 の半数をわずかに下回る数の人が、年に

20

万クローネ(約

324.8

万円)未満となっている。

また、同程度の割合を占める人が

20

万-34万

9,999

クローネとなっており、これを下回る割

合の人が

35

万-44万

9,000

クローネである。年に

45

万クローネを上回る人は非常に少ない。

フルタイムの労働者およびパートの労働者の給与を見てみると、年俸が

20

万クローネを下 回る人のほとんどがパートタイムの労働者である。

42.6%

19.0%

15.3%

6.5%

1.4%

15.3% 企業に紹介してくれた知り合いがあった

求人広告で探した

インターネットで会社を見つけた

会社との接触を仲介する民間の職業斡旋機関にコンタクト した

会社との接触を仲介するジョブセンターまたはワークイン デンマーク・センターにコンタクトした

その他

図表 1-24 税引き前年収(年金を含む)(%)

質問:あなたの税引き前年収はいくらですか(年金を含む)?

出所:難 民・移民統合省

ここでペイリミット制度における雇用の最低給与水準

37

5,000

クローネと比較して考 察してみたい。グリーンカード取得者が主としてこの限界未満の給与水準である場合、グリ ーンカード制度はペイリミット制度を補完するものになっていると言える。このことは次の 事にも当てはまる。すなわち、回答したグリーンカード取得者の大半がペイリミット制度で の在留・労働許可の取得に関する収入制限に満たない給与水準である。これを勘案すると、

ペイリミット制度での最低収入制限未満の給与であっても、外国人労働者はデンマークで就 労することが可能であることから、グリーンカード制度は補完的な機能を果たしていると言 える。

図表 1-25 デンマークでの給与に満足しているか?(%)

質問:あなたは自分の給与に満足していますか?

出所:難民・移民統合省

グリーンカード取得者の自分の給与に対する満足度と、仕事での自分の最高学歴の活用の 程度とをまとめると、グリーンカード取得者が自分の最高学歴を活用する程度が高ければ高

40.5

40.0 15.1

1.6 2.2 0.5

200,000kr未満 200,000-349,000kr 350,000-449,999kr 450,000-599,999kr 600,000-800,000kr 800,000krを上回る

13.9

44.4

23.1

12.0

6.5 0.0

10.0 20.0 30.0 40.0 50.0

非常に満足 満足 どちらでもない 不満 非常に不満

いほど、デンマークでの給与に対する満足度が高いという傾向を観察することができる。デ ンマークで自分の学歴を充分に活用している人の多くは、自分の給与に満足または非常に満 足と回答している。ただし、この傾向は一貫しているものではなく、学歴をまったく活用し ていないかなりの割合の人、全体の

41.6

%が自分の給与に不満足と答えている。

調査はまた、給与に加えて、グリーンカード取得者にデンマークの労働市場をどのように 感じているか、デンマークの労働条件(労働時間、労働環境など)に満足しているか否かにつ いて尋ねている。図表

1-26

にみるとおり、半数以上がデンマークでの労働条件に満足また は非常に満足と答えている。労働条件に不満、非常に不満と回答したのはごくわずかにすぎ ない。

図表 1-26 デンマークでの労働条件に関する満足度(労働時間、労働環境など)(%)

質問:あなたはデンマークでの労働条件(労働時間、労働環境など)に満足していますか?

出所:難民・移民統合省

労働条件に関するグリーンカード取得者の満足度は、フォーカスインタビューによっても 確かめられた。インタビューを受けた者全員がデンマークの労働条件に非常に満足であると 表明した。特に労働時間等に関する高い程度のフレキシビリティ、そのほか従業員の参加、

自立性、創造性や能力開発の可能性などがデンマークの労働市場の強みであることが強調され た格好となった。

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